「ファイブスター物語」第18巻刊行決定! 永野護カバーイラスト解説(第1~6巻)
デザイナー・永野護さんが「月刊ニュータイプ」で連載中の漫画「ファイブスター物語」の単行本最新第18巻の発売が、2025年3月10日に決定しました。
また、現在、大阪にある「グランフロント大阪」では、永野護さん初の大型展覧会「DESIGNS 永野護デザイン展」が開催中(2025年2月11日まで)。同展覧会には、「ファイブスター物語」の単行本の顔であるカバーイラストの原画17点が展示されています。
これらを記念して「月刊ニュータイプ」2024年4月号に永野護さん自身が寄稿したカバーイラスト解説を、全3回に分けて特別公開! 最新刊への期待を高めてもらうとともに、これからデザイン展に参加される方は、その予習を兼ねてお楽しみください。
前編(第1~6巻)をお届けします。
第1巻 DANCE
タイトルのダンスはラキシスの動きから。これを描いた後、何作かこのダンスをモチーフに描かれているが、最終的な絵にはならず、このころはシリーズ化しようと思っていたようだ。画材はアクリル絵の具で、主線がインクで描かれているが、第2巻からは黒インクによる主線も入れなくなった。また、エアブラシを使った最後の絵でもある。これ以降はすべて筆による彩色である。
第2巻 Mirage Girl
タイトルはそのまま。ジュノーンの白の塗り重ねにとてつもない時間がかかり、完全乾燥させてからでないと上に重ね塗りができず(半乾きで上塗りすると塗った白が剥がれて下地が出てその修正に膨大な時間がかかる)、2か月半くらいかかって完成させた記憶がある。自己満足かもしれないが、膨大な時間をかけて重ね塗りされた絵はそれだけの説得力があると思う。
第3巻 THE BABY SITTER
ミイラ化したコーラスを見守るラキシスとクローソー。コクピットをゆりかごに見立て、子守りをモチーフとした絵。コクピットの下にいるサイボーグはレディ・スペクターの原型デザイン。会場で原画をご覧になった方に「よくこのピンクが40年過ぎても発色してるね」と言われたが……。
第4巻 JUNE STEPS
タイトルは絵の通り梅雨の季節にステップする静。背景の破烈の人形は従来通りのアクリル絵の具の重ね塗り。静は日本画のような塗りと発色が欲しかったので、カラフルな色で塗り込まれている。が、ずっと使っていたホルベイン社のアクリル絵の具の限界もきていて、何度塗り重ねても思うようなきれいな発色ができず、自分のイメージ通りの色を出すために試行錯誤していたころであるが、静の振り袖の発色は気に入っている。
第5巻 TEARS to REDS
タイトルは赤い涙。この巻に登場したタイカ宇宙のスーパーメカ、デモンと対をなすカレンのバイナスをイメージしたもの。ついにこの絵からアクリル絵の具ではなく、「アクリルガッシュ」という不透明アクリル絵の具を使用することになった。とはいえ、背景などには従来のアクリル絵の具が使われつづけている。まだアクリルガッシュに慣れていないため、背景などが中途半端で、いつか描き足しをするつもりが、いまだに手つかずである。まあ、その時の勢いで完成させた絵に加筆するというのは考えものなので、加筆はしないだろう。
第6巻 BRIDGE
タイトルは浮遊城の橋にいるパルテノで、上部には吊り橋のようなヤクト・ミラージュの脊髄が描かれている。後ろにいるのはスペクターとその上に座るサラマンダーとウンディーネというイメージだ。パルテノの褐色の肌とアルミホイルのようなスーツがモチーフである。この第6巻の絵は、自分的にも「快作」「傑作」だと思う……。
※デザイン展の開催にあたり、単行本掲載時と絵のタイトルが一部変更されているものがあります。
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