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「新春浅草歌舞伎」中村莟玉インタビュー!―初心者大歓迎! 新春の浅草へ足を運んでほしい


歌舞伎の世界から新たな世界へ飛び出した、新進気鋭の歌舞伎俳優・中村莟玉さん。
新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』では刀剣男士の髭切役とともに義輝の妹・紅梅姫として愛らしい女方を披露、舞台『応天の門』では一転、菅原道真の友でどこか憎めない紀長谷雄役を好演しました。そんな莟玉さんも出演する、2025年1月2日(木)から上演の「新春浅草歌舞伎」への意気込みを伺いました。

——2025年1月2日(木)より、中村橋之助さん、中村鷹之資さん、中村莟玉さん、中村玉太郎さん、市川染五郎さん、尾上左近さん、中村鶴松さんという7人の若手歌舞伎俳優による「新春浅草歌舞伎」が上演されます。
莟玉 これは年に一度だけの、歌舞伎界の若手花形が一致団結して挑む、歌舞伎俳優の登竜門ともいえる公演です。僕は今回で10回目となりますが、毎回、お役の年齢と同じかそれよりも年下の若手が、かっこいい立役やきれいな女方に挑戦し、観ているだけで楽しんでいただけるものになっています。今回は、7人中4人が初出演なので、とくにきらきらしています! よく、歌舞伎は難しい、観劇のお作法がわからない、といった印象があると皆さんおっしゃいますが、堅苦しく考える必要はまったくないんですよ。とくにこの「新春浅草歌舞伎」は気軽に楽しんでいただける公演ですし、思い切って言うなら、演目のあらすじを知らなくてもいいんです。

——そうなんですか?
莟玉 はい。言葉が理解できなくとも、視覚的にも十分に楽しんでいただけますし、劇場では物語の結末まですべて教えてくれるパンフレットもあります。同時解説のイヤホンガイドといった助けもあります。今回はさらに、僕と橋之助さんの2人で協力して、本公演に向けて解説動画も撮ったんです。これは松竹さんのYouTubeで公開されているので、ぜひご覧ください。和装では堅苦しいかな?と思って、このためにおそろいのオリジナルTシャツも作ったんです。

——本公演にむけた、莟玉さんの意気込みをお聞かせください。
莟玉 第1部、第2部ともに『絵本太功記 尼ヶ崎閑居の場』という演目が上演され、僕たちは第1部と第2部で配役を変えて演じます。さらに僕は、第1部の『道行旅路の花聟 落人』にて、いわゆる「書き出し」と呼ばれる、いちばん最初に名前を載せていただくお役を演じるので、責任も感じていますが、今からとても楽しみです。いずれも、歌舞伎ではよく知られている演目でとてもおもしろいですし、「古典歌舞伎を観た!」と胸を張ってもらえる演目でもあります(笑)。劇場も、浅草公会堂というなじみやすい場所で、開演時間も11時からの第1部と15時からの第2部なので、観劇後はお正月の浅草の空気を楽しみながら、感想をお話ししてもらえたらな、と思います。

——ちなみに劇場ではお弁当もいただけるとのことです。
莟玉 はい、今回も出演者全員が好みのおかずを選ぶ「特製お好み弁当」を用意しています。毎年メニューがちがうので、楽しみにしてくださる方も多いんです。ただ、例年は「あの人はきっとこんな感じのメニューを選ぶから、僕はこれにしておこう」みたいに、互いにおかずのバランスを探りあえるのですが、今年は初出演が4人いて、各自本気で好きなものを選んでいるので……その結果、唐揚にチキンソテー、ハンバーグなどがどっしり入っています(笑)。僕は焼売と、きっと誰も選ばないだろうな、と思ってサラダを入れました。こんな攻めたお弁当も、きっと今年ならではだと思うので、ぜひお召し上がりください。さらに2025年のカレンダーにもなる、全員のサイン入りお品書き付きで、お土産にもなりますよ。

——いろいろな楽しみがつまっていますね。
莟玉 この機会に、ぜひ歌舞伎の世界の中でも「推し」を見つけていただけたらと思うんです。好きな役者の絵が描かれた団扇を手に、客席から応援するという文化は歌舞伎から生まれたとも言われていますし、この「新春浅草歌舞伎」をきっかけに、気になる俳優と出会ってもらえたらと思います。まずは一度、劇場に来ていただいて、歌舞伎そのものと出会っていただけたらと願っています。

——さて、今回莟玉さんはWebNewtypeに初登場ということで、好きなアニメ作品などはありますか?
莟玉 ずっと観ているのは「名探偵コナン」です。どの回でも、コナンくんの活躍にわくわくしています。「SHIROBAKO」には「つくり手」という共通点を個人的に感じて、その視線から楽しんでいました。スタジオでくくると、京都アニメーションの作品が好きでよく観ます。その中でも、僕は基本的にアニメをストーリー重視で好きになる傾向にあるみたいで、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」や「響け!ユーフォニアム」がお気に入りです。

——今年は1月に歌舞伎俳優の名前「中村莟玉」として、芸能プロダクションANDSTIRにも所属され、幅広く活躍されました。1年を振り返ってみて、いかがでしょうか?
莟玉 歌舞伎以外のお仕事をいただける機会も増えて、もっといろいろな世界を見たくなりました。今の事務所にお世話になろうと決めたのは、本分である歌舞伎のことをとても大切に考えた上でそれ以外のお仕事の場も見つけてくださるからです。今、歌舞伎以外の場で活躍されている先輩も多く、松也兄さん(尾上松也)からも、御縁があるからには何でもやってみたらいいんじゃないか、そこから歌舞伎に興味をもってくれる人もいるかもしれないから、と背中を押してもらったんです。事務所への所属について、これまで応援してくれていた皆さんもあたたかく受け止めてくれて、本当に感謝するばかりです。

——最後に2025年の抱負をお願いします。
莟玉 新たな活動の場もいただいたので、より一層精進していきたいです。昨年は27歳で『二月御園座大歌舞伎』の「三人吉三巴白浪」という演目で、初めて書き出しとして、最初に名前を載せていただきました。この年齢でそんな機会をいただけるとは夢にも思っておらず、本当にうれしくて。大きく一歩を踏み出せた1年だったように思います。2025年も歌舞伎はもちろんのこと、先輩方のように幅広くいろいろなことに挑戦する1年にしたいです。

プロフィール

●なかむら・かんぎょく/人間国宝・中村梅玉の養子で立役、女方も勤める歌舞伎俳優。舞台のほか、NHK-FM「カブキ・チューン」パーソナリティなど幅広く活躍中

【取材・文:おーちようこ】


■松竹創業百三十周年「新春浅草歌舞伎」
日時:2025年1月2日(木)~26日(日)
   第1部 11時~/第2部 15時~
会場:浅草公会堂
出演:中村橋之助/中村鷹之資/中村莟玉/中村玉太郎/市川染五郎/尾上左近/中村鶴松

リンク:「新春浅草歌舞伎」公式サイト