石屋川公園の桜「生きた証」【つながる1.17】
こんにちは!NEW-S Wind Ensembleです。
今回の「つながる1.17」は、前回までお送りしてきた公園やモニュメントからは少し離れて、ある記念樹をご紹介します。
生きた証
神戸市灘区の石屋川沿いに広がる「石屋川公園」に、今回ご紹介する記念樹はあります。
交通量の多い山手幹線から右岸の川沿いに入り、少し北に上がると、やや樹齢の若めなソメイヨシノが5本、静かに立ち並んでいます。そしてその横には「生きた証」と書かれた金属製の標識があります。
この記念樹は、阪神淡路大震災で亡くなった夫婦を悼み、遺族の方が震災から5年後の2000年に植樹されたものです。
公園近くの石屋地区は震災による被害が最も激しかった地区の一つ。多くの木造住宅が地震の揺れにより倒壊し、多くの住民の方が亡くなりました。記念樹が贈られた夫婦も、この公園近くのアパートの1階で建物の倒壊により亡くなったそうです。
この地を訪れた私(代表)がこの記念樹の存在を知ったのは、2023年12月。
演奏会で「おほなゐ」に取り組むにあたって、図書館で震災関連の本を探していたとき、内田洋一氏の『あの日、突然遺族になった』を手にしました。
この本は、阪神淡路大震災によって家族を亡くした複数の遺族を取材し、震災発生時とその後の10年間について書いた本です。
突然、あまりにも大きな喪失を経験した遺族の方々が、それぞれどのような10年間を送ってきたのか。綿密な取材と丁寧な記述で、リアルな一人称の"その後"を知ることができました。
その本の中に登場したのが、この記念樹と遺族の方々のお話でした。
年が明けた2024年1月17日、三宮・東遊園地で早朝に行われた「1.17のつどい」に参加した帰り、運営メンバーとともにこの場所に立ち寄りました。
まだ夜が明けて間もない朝7時前。川沿いでウォーキングや犬の散歩をする人たちを見守るように、5本のソメイヨシノが並んで立っていました。
植樹から24年が経った記念樹は、まだまだ大きくなる余地を残しながらも、立派に公園の樹木として天に向かって伸び、朝日を受けていました。
遺族の方々は、碑ではなく、モニュメントではなく、桜の樹を息子夫婦のために残されました。年を重ねるごとに大きくなりながら、毎年春には美しい花を咲かせる"生きた証"は、この地に文字通り根を張って、移りゆく街の風景に確実に存在しながら、永く生き続けていくことでしょう。
また桜の咲く季節に、この場所を訪れてみようと思います。
次回の「つながる1.17」もぜひご覧ください!