能登半島地震から1年「ともに」

明けましておめでとうございます!NEW-S Wind Ensembleです。


 1月11日開催の「つながる祈りの演奏会」まで、あと10日となりました。演奏面もそれ以外の面も、準備が着々と進んでおります。


 本年の出だしを飾る演奏会、ぜひ多くの方にお越しいただければと思います。


1年前の元日


 さて、本日から2025年です。新年を祝うさまざまなイベントが各地で開催されていますが、全国的に今年の元日は、昨年までとやや違う雰囲気の中で迎えることになりました。


 まだ記憶に新しい1年前の元日、2024年1月1日午後4時10分。能登半島沖でM7.6の地震が発生し、最大震度7の激震が元日の北陸地方を襲いました。「令和6年能登半島地震」、未曾有の災害から今日でちょうど1年となります。


 地震の揺れによる被害は甚大で、木造家屋の倒壊や大規模火災など、被災地の様子は日本各地で幾度となく繰り返されてきた"震災"そのものを表すものでした。犠牲者は462名。8年前の熊本地震を大きく超える人的被害をもたらしました。


浮き彫りになった課題


 石川県の北端、能登半島の地で起きたこの地震で課題となったのは、ライフラインの復旧や復興支援の難航と、情報共有のあり方です。


 地震で被害を受けたガス、水道、電気などのライフラインの復旧や、その他の被災地の復興支援には、全国各地からたくさんの人びとがやってきて、作業にあたります。過去の国内での災害発生時も、その復旧や復興の作業の早さは、被災地の方々を安心させ、世界中の人を驚かせてきました。


 しかし、今回地震が発生したのは能登半島の北端。細長い半島の先へのアクセスは、交通手段が限られる「一本道」の状態です。

 そのため、数少ない交通手段が軒並み被害を受けた今回の災害では、復興に携わる人たちが被災地に入ることができず、復旧・復興の作業には、想定よりも長い時間がかかることとなりました。


 また、同じような理由で、テレビなどの報道関係者が被災地を取材することもままならず、テレビや新聞の報道では、なかなかその実態を知ることが難しかったのも、今回の能登半島地震で浮き彫りとなった課題でした。


地続きの孤島


 この"課題"は、きっと多くの被災者の方を不安にさせたことと思います。


 過去の災害において、災害派遣の自衛官やボランティアなど、外部から被災地に復旧・復興支援のためにやってくる人たちの存在は、その仕事内容に関わらず、市民の人びとの大きな支えとなってきました。


 そんな全国からの支援の手が阻まれ、しかも自分たちの置かれている状況が外部になかなか伝わらない。


 地続きの日本列島の中で、まるで孤島のように外部から断絶してしまったような状態は、地震によっていくつもの喪失に直面した被災地の人々にとって、追い打ちをかけるように辛い環境だったのではないでしょうか。


報道を目の当たりにして


 能登半島地震発生直後、翌年の演奏会開催に向けて動き始めていた私たちも、この地震には大きな衝撃を受けました。


 私たちが開催する「つながる祈りの演奏会」は、阪神淡路大震災から30年の節目に、震災の記憶を新しい社会につなぐことを目的とするものです。

 能登半島の甚大な被害や、復興の進まない状況を報道で目の当たりにして、来年1月にこの演奏会を開催することが正しいのか。不安と悩みを抱えながら、結局演奏会のコンセプトとメイン曲「おほなゐ」の発表は、2月以降に延期することに決めました。


神戸から「ともに」


 元日からおよそ2週間が経った1月17日。阪神淡路大震災の発生から29年が経ったこの日の早朝、NEW-S代表は、神戸・東遊園地の「阪神淡路大震災1.17のつどい」を訪れていました。


 まだ陽の昇らない午前5時半、会場に着いて真っ先に目に飛び込んできたのは、数え切れないほどの灯りのついた竹の灯籠です。


 例年、この灯籠は「1.17」の文字と一緒に、公募によって決まった一つの単語をかたどって並べられています。

 すべての灯籠を見渡せる場所に移動し、今年の灯りが映し出した文字を眺めました。



 「ともに」の三文字。

 見た瞬間、はるか北東、能登半島の光景が思い浮かんできました。

 地震発生からわずか17日、今も被災地で苦しむ人たちの孤独を打ち消すような、温かくも力強い「ともに」の文字がそこにはありました。


 29年前、神戸をはじめとする阪神地区の人びとが直面した辛く苦しい経験は、その後の自然災害の被災地に確実に活かされてきました。6000人以上の犠牲を無駄にしない、明るい未来を目指して、その土地その土地の一早い復興を後押ししてきました。


 そして今回も、またその時がやってきました。同じ日本列島の上に暮らす人たちのために、神戸の人びとは「ともに」の3文字を送りました。

 静かに光るたくさんの灯籠を前に、思わず目頭が熱くなりました。そして、自分がやろうとしていることも、「ともに」でなくてはならないと、このとき強く感じました。


つながる祈りへ


 演奏会開催まであと11ヶ月となった2024年2月11日。NEW-S Wind Ensembleの各SNSアカウントで、メインの演奏曲目「おほなゐ」と、選曲についてのコメントを発表しました。


 コメントの終盤、1月17日のつどいで抱いた印象を、こう記しました。


 発災から29年となる現在も、阪神淡路大震災は終わっていません。災害の爪痕に苦しむ方がいる限り、震災は続いていきます。そして、今年1月の能登半島地震をはじめとして、全国各地には今この瞬間も被災者として生活している方がいます。そうした方々の存在を忘れることなく、これからの社会をともに歩んでいくため、私たちは吹奏楽という手段を通じて「1.17」にアクセスしたいと思います。


 1年前の衝撃、葛藤、そしてつどいで目にした「ともに」の三文字。これらの記憶を忘れることなく、残り10日間、「つながる祈りの演奏会」に向けて準備を進めていきます。

 そして、今もなお災害の爪痕が残る被災地の復興と明るい未来を祈ります。


演奏会情報

いいなと思ったら応援しよう!