見出し画像

旅とお酒と自由と私

自由になったのに、
自由になってはいけないと、自分で自分をがんじがらめにしていることに気づく。

旅が好きだ。
趣味は少ないけれど、最も好きなものが旅。
空港が好きで、飛行機が好きで、知らない街を歩くのが好き。
思い立ったら即、旅に出よう!と思う程、旅が好き。

夫が亡くなった今、家にいる必要はない、時間も自由に使える、
けれど、行きたいところも旅したいところもない。

飛行機に空席があるのを確認して、ホテルを取っては見るものの
心が全く動かない。

家を離れることに抵抗があるのか、自由に動けるのが怖いのか
予約することができない。
旅することに心が踊らない。
なんなんだこれは。

青い鳥の話と一緒で、今を満足できていないのに、外に探しに行ってもいいのだろうかとか考えてしまう。
青い鳥は結局、外にはいないのだから。

南では台風が発生しているとか、各地で地震が頻繁に起きているとか
気になることもある。
そもそもそんなに旅に出たいのか?
そこも疑問。
これまで、現実逃避で旅をしていた感もなくはない。

これはお酒を飲むことと似ている気がする。
飲んでいる時はいい気分だけれども、酔いがさめたその後、現実はなんら変わっていないのだ。

これまでの旅は、目の前の現実から逃げたくて、違う空間に行きスッキリしていただけなような気がする。

旅をするとスッキリしていたのはなぜだろう?
頭の中が空っぽになるからだろう。
知らない街にいるだけで、もう違う現実にいるわけだから
ワープしているから、当たり前か。
旅はタイムトラベルと言うか、時間を変えずに横滑りするトラベルということなのだろう。

近場でいいから、どこかへ行きたいなと思う。
けれど、1時間移動すると考えるだけで、疲れてしまう。
旅のホテルや、エアーチケットを予約するのもこれに似ている。
あれこれ見ているだけで、疲れてしまう。

あんなに旅好きだったのに、どういうことなんだろう。
お酒も飲まなきゃやってられなかったのに、それも全くなくなった。
お酒に関しては、飲んでも問題は何にも解決しない、って事実に気がついたから。
これは人生を変える収穫だった。

そもそも旅とお酒は全く異なるものだとは思っている。
けれど、とても似ている。

夫が亡くなったことの喪失感がまだまだ大きいのだ。
それを埋めることはそんなに簡単にできるものではないから、今もぽっかり大きな穴が空いている。
その穴にスースー風が通っている感じがする。

一体いつまでこの感じは続くのだろう。
大切な人が亡くなる経験をしたことがなかったから、終わりが想像できない。
けれど、いつかは乗り越えられる時が来るだろう。

寂しい、本当に寂しい。
夫がいることがそもそもの大前提だった
夫がいたからこその私だったんだ。
生きてる時に気がついていればよかった。
もっと2人でいたらよかった。
夫のしたいことをさせてあげればよかったな。

死んだ人より、自分のこと。
これまで頑張ってきて自分のために、自分にいいことをしてあげたい。
その一つが旅なんだけれどなぁ。
堂々巡りの旅問題。

そうだ!旅に出よう!今すぐに!
と、思える日が来たら、私はかなり元気になっているんだろう。
完全復活はいつだろう。
           (2.5ヶ月目)

新堂きりこ

いいなと思ったら応援しよう!

しんきり
よろしければサポートをお願いします。 いただいたサポートは社会復帰への新しいチャレンジの活動費とさせていただきます。