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NETFLIXの快進撃を支える「ヒト」「技術」「哲学」
こんにちは。NewsPicksソーシャル編集部の松嶋こよみです。
毎日暑い日が続きますね。エアコンをほどよく効かせた部屋で、仕事をしながらNETFLIXの海外ドラマを流し聞きする生活がすっかり定着しました。
そんな中、7月に第2四半期の決算を迎えたNETFLIXは全てのコンテンツの責任者であるテッド・サランドスを共同最高責任者CEOに起用すると発表。
コロナ禍の巣ごもり消費で会員数が伸びたであろうことは予想できますが、
👉一体どれほどの伸び率だったのか?
👉この決算の直後に株価が急落した理由は?
👉テッド・サランドスってどんな人?
👉最近のストリーミングサービスはどうなっている?
などなど、Q2決算を機に気になることがたくさん出てきました。
猛暑が続く上、遠出が難しい今年の夏。
ますますお世話になりそうなNETFLIXについて、このあたりで一旦おさらいしてみませんか?
ということで、様々な角度から図解してみました。
❶半年で驚きの会員数増。数字で見るNETFLIX
新型コロナの影響で家にいる時間が増え、これを機にNETFLIXの有料会員になった方も多いのではないでしょうか?
2020年上半期で増えた新規有料会員数は約2500万人。この数字は、2019年全体での新規増約2700万人に迫る勢いでした。
一方で、7–9月の新規会員数予想を250万人と発表したことで株価が急落。
市場では500万人余りと予想されていたため、成長の鈍化が指摘されたことが理由と言われています。
❷ストリーミング戦争の現在。顧客満足度は◯位
Disney+がサービスを開始してから早9ヶ月。NETFLIXは他のストリーミングサービスと比較して、どのような位置にいるのでしょうか?
NETFLIXの顧客満足度はDisney+に越され2位ですが、Disney+はそもそもユーザーの趣味嗜好が読みやすいので納得ではあります。
逆に言えば、多様な趣向のユーザーを集めるNETFLIXが選ばれる理由とは?
特に他サービスとの差別化に成功しているのはつぎの2点ではないでしょうか。
💡オリジナル作品の質の高さ
💡「おすすめ」(リコメンデーション)機能のうまさ
NETFLIXのオリジナリティを高める両施策はどんな仕組みでできているのか?それぞれ見ていきましょう。
❸全ては「ハウス・オブ・カード」から始まった
テッド・サランドスと言っても「誰?」という方が多いかもしれませんが、彼こそがNETFLIXのオリジナル作品を成功させた立役者。オリジナル作品へ舵を切った理由と、成功の秘訣をまとめました。
地元のレンタルビデオ店に勤務していた頃、店にある全ての映画を観たという彼は、NETFLIXのCEOリード・ヘイスティングスから絶大な信頼を寄せられている一人です。
リードはテッドについて次のように語っています。
(オリジナルドラマや映画の製作に進出した際)、勝算はありませんでした。でも、パートナーのテッド・サランドスのおかげで、「これはいける」と、すぐにわかりました。このことに関しては、テッドはとてつもない才能の持ち主です。私の手柄ではまったくありません。私は『ハウス・オブ・カード/野望の階段』の脚本を読んでも、それがすごい作品になるかどうかわかりません。でも、テッドにはわかる。これは驚嘆すべきスキルです。
── NewsPicks記事『人間はみんなユニーク、市場の人口は1人だけ』より
❹リコメンデーションの裏側はこうなっていた!
NETFLIX躍進のもう一つの鍵「リコメンデーション」の仕組みは、意外にもシンプル。ポイントは3つです。
アジア地域のユーザー向けに「パーソナライゼーション(個々人に合わせた体験の最適化)」に取り組むユージーニー・ヨウ氏。インタビュー記事で彼女は、まだAIには備わっていない「感性」を生かした人間の力でタグをつけ、一つ一つの作品をカテゴライズしていると明らかにしています。
少なくともしばらくの間は、人間の力が絶対に必要になると思います。映像を見て「この作品って、こんな感じ」という微妙なニュアンスをつかんだタグ付けをするのは、まだまだ人間にしかできない。
我々は、人間らしい判断や創造性と、テクノロジーの合わせ技で成り立っている会社です。ネットフリックスはデータの会社と思われがちですが、ことコンテンツに関する決定は、クリエイティブな人間の判断に大いに頼っているのです。
── NewsPicks記事『Netflixが明かす、コンテンツを「個別化」する舞台裏』より
「今、どんな映画が観たい?」と聞かれて即座に答えるのが難しくても、いくつかのバリエーションの中から気分で選ぶことはできます。そのバリエーションが的外れでは、選ばれるサービスにはなりません。リコメンデーションの精度を高め、「こんな映画が見たかった!」と思わせるためには、まだまだ人間の力が必要なのですね。
❺どんなメンバーがいるの?
上記で紹介した2点や、ドラマのイッキ見などは今となっては当たり前に思われますが、どれもNETFLIXが先陣を切って生み出したアイデア。そんな革新を続けるために欠かせないのはやはり、優秀な人材。経営陣のプロフィールを見ていきましょう。
「優秀な人を集め、自由にさせる」ことがNETFLIXの企業としての成長の秘訣。経営陣の経歴は目を見張るものばかり。
中でもPRの責任者を務めるレイチェル・ウェットストーンは、NETFLIXに参加する前はGoogle、Uber、Facebookと錚々たるテック企業の副PR責任者を務めてきました。
そんな人材を惹きつけるのは、会社としてのカルチャーを明確に定義しているからかもしれません。
❻響きがいいだけでは×。実行可能なバリュー9
迅速なイノベーションと素晴らしいアウトプットを促すためのカルチャーをまとめた「カルチャーデッキ」は、贅沢にも公式webサイトで無料公開されています。その中から私たちの普段の仕事にも生かせるエッセンスをお届けします。
これらを全て兼ね備えている人ならば、どんな企業にも求められるのではないかと思うほどの真実ばかり。
カルチャーデッキの中には厳しいと思うこともありますが、それゆえにNETFLIXに合う優秀な人を集められるという合理性があるとも言えます。
❼何はともあれ自律できてこそ。CEOが定めるルールはひとつ
ルールで縛らず、自分で考え行動し、失敗してもすぐにリカバーすることで知見を貯める。カルチャーを共有する優秀な人材が集まっているからこそなせる技かもしれませんが、目指すことは誰にでもできるはず。個人的には、理想とするキャリア像が明確になるほど心に響きました。
❽もっと知りたい人へ。おすすめの本5選
最後に、カルチャーはもちろん、ストリーミングビジネス、サブスクリプションサービスに関する本など、様々な角度からNETFLIXを理解できる読書リストを用意しました。
宅配DVDレンタルから事業をスタートしたNetflixは、事業を変化しながら、時代に適応してきました。書籍を読むと、そんなNetflixもすべてがうまくいってきたわけではなく、失敗を乗り越えて進んできたのだとわかります。
おわりに
以上、多様な視点からNETFLIXをおさらいしてみました。サービスとしての魅力と企業としての魅力、どちらも調べれば調べるほど、自分の仕事に生かすヒントがたくさん転がっているように感じました。
なお、引用元のインタビューは有料記事となりますが、以下ページよりトライアル申し込みすることで、10日間無料でお楽しみいただけます。トライアル期間は、NewsPicksの有料記事・動画がすべて見放題となりますので、興味を持った方はこの機会にお試しいただけたらと思います。
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文・松嶋こよみ(Instagram)