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FDM/FFFによる微細造形への適合性を考える

Snapmaker Originalが印刷エリアサイズ、ノズル位置精度、バックラッシュ等を勘案すると非常に微細印刷に向いているのではないか?と考えてテクダイヤの0.1mmや0.15mmノズルをいただいて造形テストを行っています。
しかし実際にはどの程度までの微細造形へ適合するのか、あるいはどのようなマシンなら微細造形仕様が微細造形への適性を持つのか確認したいと考えました。
そこで思考実験をしてみることにします。

この問いについて理論的に迫ることができれば、3Dプリンタを自作する際にもその指標に基づいてスペックを定めることができるようになるでしょう。

手持ちプリンターから情報を収集する

M501コマンドを使用するとマシンの設定値を読み取ることができます。
そこで参考にSnapmaker OriginalとPrusa MK3から引き出したファームウェアの設定が以下のとおり。

Snapmaker Originalのファームウェア設定

echo:V67 stored settings retrieved (409 bytes)
echo:Steps per unit:
echo:  M92 X400.00 Y400.00 Z400.00 E92.60
echo:Maximum feedrates (mm/s):
echo:  M203 X300.00 Y300.00 Z5.00 E25.00
echo:Maximum Acceleration (mm/s2):
echo:  M201 X1000 Y1000 Z100 E10000 X_CNC100 Y_CNC100 Z_CNC100 E_CNC100 
X_LASER3600 Y_LASER3600 Z_LASER3600
echo:Accelerations: P=printing, R=retract and T=travel
echo:  M204 P4000.00 R1000.00 T4000.00
echo:Advanced variables: S=Min feedrate (mm/s), 
T=Min travel feedrate (mm/s), B=minimum segment time (ms), 
X=maximum XY jerk (mm/s),  Z=maximum Z jerk (mm/s),  
E=maximum E jerk (mm/s)
echo:  M205 S0.00 T0.00 B20000 X20.00 Z0.40 E5.00
echo:Home offset (mm):
echo:  M206 X-7.00 Y-6.00 Z-6.00
Mesh bed leveling:
echo:  M420 S1 X2 Y2
echo:  M421 X10.00 Y10.00 Z0.20
echo:  M421 X121.00 Y10.00 Z0.45
echo:  M421 X10.00 Y121.00 Z0.00
echo:  M421 X121.00 Y121.00 Z0.25
echo:Z2 Endstop adjustment (mm):
echo:  M666 Z0.00
echo:PID settings:
echo:  M301 P22.20 I1.08 D114.00 C100.00 L20
echo:Filament settings: Disabled
echo:  M200 D3.00
echo:  M200 D0
ok

M92が1mmの移動に必要なステッピングモーターのステップ数を示しています。
XYZ軸すべてが送りネジ方式なので、400ステップ/mmと非常に細かいステップを持っています。
なるほど、モータードライバーがA4988だし、そりゃあハイスピードで動かすとキューキューと高い音が出るわけですね。
通常のベルトタイプだと80~100ステップ/mmのマシンが多いので、XYの分解能はかなりものです。
E軸は92.6ステップ/mmと、減速・倍力機構の入っていないエクストルーダーなので、これぐらいのやつが多いですね。

(参考)Original Prusa MK3のファームウェア設定

なお、Original Prusa MK3だとこんな感じ。

echo:Steps per unit:
echo:  M92 X100.00 Y100.00 Z400.00 E280.00
echo:UStep resolution: 
echo: M350 X16 Y16 Z16 E32
echo:Maximum feedrates - normal (mm/s):
echo:  M203 X200.00 Y200.00 Z12.00 E120.00
echo:Maximum feedrates - stealth (mm/s):
echo:  M203 X100.00 Y100.00 Z12.00 E120.00
echo:Maximum acceleration - normal (mm/s2):
echo:  M201 X1000 Y1000 Z200 E5000
echo:Maximum acceleration - stealth (mm/s2):
echo:  M201 X960 Y960 Z200 E5000
echo:Acceleration: S=acceleration, T=retract acceleration
echo:  M204 S1250.00 T1250.00
echo:Advanced variables: S=Min feedrate (mm/s), 
T=Min travel feedrate (mm/s), B=minimum segment time (ms), 
X=maximum XY jerk (mm/s),  Z=maximum Z jerk (mm/s),  
E=maximum E jerk (mm/s)
echo:  M205 S0.00 T0.00 B0.00 X10.00 Y10.00 Z0.40 E2.50
echo:Home offset (mm):
echo:  M206 X0.00 Y0.00 Z0.00
echo:PID settings:
echo:   M301 P19.80 I1.93 D50.59
echo:PID heatbed settings:
echo:   M304 P126.13 I4.30 D924.76
echo:Retract: S=Length (mm) F:Speed (mm/m) Z: ZLift (mm)
echo:   M207 S3.00 F2700.00 Z0.00
echo:Recover: S=Extra length (mm) F:Speed (mm/m)
echo:   M208 S0.00 F480.00
echo:Auto-Retract: S=0 to disable, 
1 to interpret extrude-only moves as retracts or recoveries
echo:   M209 S0
echo:Filament settings: Disabled
ok

XY軸は100ステップ/mm、Z軸は400ステップ/mmです。
E軸は280ステップ/mmと倍力機構が入っていないエクストルーダーとしてはかなり細かいステップです。これは一回転400ステップ(0.9°)のステッピングモーターを使っている為と、送り出し部分の半径が小さいエクストルーダーギアを使っていることで実現しているものだと思われます。

モデルに必要な解像度から、XY軸の分解能はどれぐらいあるべきか?

人間の目視で見る場合、白黒2階調(モノクロ)写真だと1200dpi以上あれば十分と言われます。
これはつまり、
1200dot/26.4mm(1インチ)≒46dot/mmとなります。
つまり解像度の視点からすれば、46ステップ/mm以上あればノズル直径の如何にかかわらず、外観的には十分に造形ができそうです。
一般的にXYの解像度は60ステップ/mm以上ありますので、十分かもしれません。
もちろん、細かい部分(最小フィーチャーサイズ)の描画性はノズル直径による影響を受けます。

オーバーラップ量から必要なXY分解能を考える

ではなぜPrusaは100ステップ/mmの分解能を持っているのでしょう?

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