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ビットコインはどこまで上昇するのか?国家準備金への採用を巡る世界各国の動向
近年、ビットコインは単なるデジタル資産を超え、国家の準備金として注目を集めています。特にアメリカでは、ビットコインを戦略的準備金とする動きが活発化しており、他の国々もこの潮流に続く可能性があります。本記事では、アメリカを中心とした各国の動向などについて、徹底解説いたします。
アメリカの動向|ビットコインを国家準備資産に?
■アメリカ連邦政府の動き
アメリカでは、ビットコインを国家準備資産とする議論が本格化している。2025年1月にドナルド・トランプ大統領が就任すると、暗号資産に関する大統領令を発令し、「国家デジタル資産備蓄」の検討を指示した。これは、連邦政府が押収したビットコインなどの暗号資産を戦略的に活用するための計画である。
また、シンシア・ルミス上院議員が提出した「ビットコイン法案」にも注目が集まっている。この法案では、財務省が今後5年間にわたり毎年20万BTCを購入し、最終的に100万BTCを準備金として保有する計画が示されている。これが実現すれば、ビットコインは米国の国家準備資産として正式に位置づけられることになる。
■州レベルの動き
州政府も独自の取り組みを進めている。テキサス州では「テキサス州ビットコイン準備金の設立」を2025年の立法会期の最優先事項に掲げた。さらに、ユタ州やアリゾナ州などでも同様の法案が議会で審議されており、各州ごとに独自のビットコイン戦略を模索している。
懐疑的な意見と課題
一方で、こうした動きに対しては慎重な意見も多い。元ビットメックスCEOのアーサー・ヘイズ氏は、「トランプ政権がビットコイン準備金を導入する可能性は低い」と指摘する。主な理由として、他の政策課題が優先されることや、国家レベルでのビットコイン購入の資金調達が困難である点が挙げられている。
ヨーロッパの状況|ビットコインの国家準備金採用は進むのか?
■各国の基本的な姿勢
ヨーロッパ各国では、ビットコインを国家準備金として正式に採用する動きは見られない。多くの国は、ビットコインを投資資産や決済手段の一つとして認識しているものの、国家の財政基盤に組み込むことには慎重な立場を取っている。
ドイツやフランスなどの主要国は、ビットコインに関する税制や規制の整備を進めているものの、中央銀行の外貨準備にビットコインを含める計画はない。これらの国では、ビットコインの価格変動の大きさや、法整備の不透明さが導入を妨げる主な要因となっている。
■EU全体での規制と動向
欧州連合(EU)では、ビットコインを含む暗号資産の規制を強化する方針が打ち出されている。2024年に導入された「MiCA(暗号資産市場規制)」により、ビットコイン取引や関連ビジネスへの監視が強化され、金融機関の暗号資産の取り扱いにも厳格なルールが適用された。
欧州中央銀行(ECB)は、デジタルユーロの開発を進める一方で、ビットコインを国家準備資産として扱うことには否定的な見解を示している。ECB総裁のクリスティーヌ・ラガルド氏は、ビットコインを「投機的資産」と見なし、国家の財政安定性に悪影響を及ぼす可能性があると警告している。
■一部の国では異なる動きも
一方で、東欧やバルト三国では、ビットコインやその他の暗号資産に対する関心が高まっている。エストニアやリトアニアでは、政府がブロックチェーン技術を活用した金融政策の研究を進めており、一部の政治家からは「ビットコインを準備金として活用する可能性」についての議論も出ている。
また、スイスは以前から暗号資産に寛容な姿勢を取っており、チューリッヒ州やツーク州(いわゆる「クリプトバレー」)では、地方自治体レベルでのビットコイン保有が議論されている。
日本の対応|ビットコインを国家準備金とする議論の現状
■政府の公式見解
2024年12月、日本政府はビットコインを国家の準備金として保有する可能性について公式見解を示しました。石破茂首相名義で発表された答弁書では、暗号資産は「外国為替等には該当しない」と明記され、現行の外貨準備金の運用方針においてビットコインを組み込む予定はないとされています。
■議会での提案と議論
同月、参議院議員の浜田聡氏は、米国などが進めているビットコイン準備金導入の動きを踏まえ、日本も外貨準備金の一部をビットコインなどの暗号資産に組み入れるべきだと提案しました。しかし、政府は他国の動向を詳細に把握しておらず、具体的な状況について見解を示すことは困難であると回答しています。
■専門家の見解と今後の展望
日本政府は、外貨準備金の安全性と流動性を最優先事項としており、ビットコインの高い価格変動性がこれらの基準と整合しないとの認識を示しています。そのため、現時点でビットコインを国家準備金として採用する可能性は低いと考えられます。しかし、世界的な暗号資産の普及や他国の政策変化に伴い、今後日本でも議論が活発化する可能性があります。
その他の国々の動向|ビットコインを国家準備金とする新興国の取り組み
■ブータンの戦略的ビットコイン保有
ブータン王国は、ビットコインを国家戦略の一環として積極的に活用しています。2025年1月、南部の特別行政区「ゲレフ・マインドフルネス・シティ(GMC)」は、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などのデジタル資産を戦略的準備金の一部として保有する計画を発表しました。
この取り組みは、地域の経済的回復力を強化し、ビットコインマイニングのさらなる推進を目指しています。
さらに、ブータン政府は2019年からビットコインのマイニングを開始しており、現在では約11,688BTC(約1,730億円相当)を保有しています。
このような積極的な姿勢により、ブータンはデジタル資産エコシステムの拡大を図っています。
■エルサルバドルのビットコイン政策とその変遷
中米のエルサルバドルは、2021年9月に世界で初めてビットコインを法定通貨として採用し、国家準備金としてのビットコイン保有を進めてきました。2025年2月時点で、同国のビットコイン保有量は6,067BTC(約900億円相当)に達しています。
しかし、2024年12月、エルサルバドル政府は国際通貨基金(IMF)から14億ドルの融資を受ける条件として、ビットコインの利用拡大策の見直しに合意しました。
これにより、ビットコインの法定通貨としての地位は維持しつつも、民間部門での受け入れは任意となり、政府の公式ウォレット「チーボ」への関与も段階的に縮小されています。
ビットコインの価格について|2025年の展望
■2024年の価格動向
2024年、ビットコインは大きな価格上昇を遂げ、3月には1,000万円台を突破し、ドル建てでも過去最高値を更新しました。
その後も上昇を続け、11月には10万ドルを超える水準に達しています。
■2025年の価格予測
2025年2月16日現在、ビットコインの価格は約97,311ドル(約1,400万円)で推移しています。複数の専門家や機関は、2025年末までにビットコインがさらに上昇すると予測しています。例えば、Bitwiseは20万ドル(約2,800万円)以上、Standard Charteredも同様の価格帯を予測しています。
また、VanEckは18万ドル(約2,520万円)を予想しています。
■価格上昇の要因
これらの強気な予測の背景には、以下の要因が挙げられます。
・スポットビットコインETFの導入:2024年1月にスポットビットコインETFが初めて承認され、市場への資金流入が増加しました。
・ ビットコインの半減期:2024年に実施された半減期により、新規供給量が減少し、需給バランスが価格上昇を後押ししています。
・トランプ政権の暗号資産に対する友好的な政策:2024年の大統領選で再選されたトランプ大統領は、暗号資産に対する規制緩和や「国家戦略ビットコイン備蓄」の創設を提案しており、市場の楽観的な見方を強めています。
■リスク要因と注意点
一方で、ビットコイン市場には以下のリスク要因も存在します。
米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策:金利引き下げのペースが鈍化する場合、リスク資産であるビットコインへの投資意欲が減退する可能性があります。
また、新政権下での規制変更や、他国での規制強化が市場に影響を与える可能性があります。
ビットコインを国家準備金とする動きは、国によって大きく異なるものの、世界的に無視できない潮流となりつつあります。特にアメリカの政策変更は市場に大きな影響を与える可能性があり、今後の展開によってはビットコインが各国の財政政策に組み込まれる日も遠くないかもしれません。
一方で、日本やヨーロッパの多くの国々は慎重な姿勢を崩しておらず、ビットコインの高いボラティリティや規制の課題が、国家準備金としての採用を難しくしています。しかし、新興国ではビットコインを積極的に活用する動きが加速しており、今後の市場の成長を支える要因となる可能性があります。
ビットコイン市場は、政治、経済、技術革新など、さまざまな要素が絡み合いながら発展しています。国家レベルでの動向が今後どのように影響を及ぼすのか、そしてビットコインが世界の金融システムにどのような役割を果たしていくのか、その変化を注視しながら、賢明な判断をしていくことが重要です。