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なぜ障害者ばかりを?相模原殺傷 被告との対話【前編】

神奈川県相模原市にある
障害者施設で3年前
19人が殺害され、
27人が重軽傷を負う
事件がありました。

逮捕されたのは
この施設の職員だった
植松聖被告。

今も事件を正当化しているという
植松被告ですが、
その植松被告と
面会を重ねている人物がいます。

2人の対話から何が見えるのか。

戦後最悪とされる事件の
その奥を探りました。
(NEWS23 2019年5月6日放送)

神戸金史(かんべ・かねぶみ)さん
福岡のテレビ局の記者です。

息子は
重い障害があります。

その神戸記者のもとに、
一通の手紙が届きました。

「殺すべきものがいれば殺す」
「いつまで生かしておくつもりなのでしょうか」

この手紙の送り主は・・・。

植松聖被告。

2016年
神奈川県相模原市の障害者施設
「津久井やまゆり園」で起きた
連続殺傷事件で逮捕されました。

施設の元職員だった植松被告は
未明に窓ガラスを割って侵入。
入所者19人を殺害
27人に重軽傷を
負わせたのです。

なぜ障害者ばかりを狙ったのか。
事件の翌年、
神戸記者は植松被告に宛てて
手紙を書きました。

その10日後、返事が届きます。

「お手紙をいただきまして
誠にありがとうございます」

「やまゆり園はいい職場でしたし、
すっとんきょうな子どもの
心失者(しんしつしゃ)を
見ると笑わせてもくれます」

「ですが、人間として
70年養う為にはどれだけの
金と人手、物資が奪われているか考え、
ドロ水をススり飲み
死んで逝く子どもを想えば
心失者のめんどうをみている
場合ではありません」

「心失者」
これは植松被告がつくった言葉です。

障害者や認知症の人など、
意思疎通がとれない人のことを
指しているのだといいます。

「重い障害を持っている子の親に
こんな話は誰もしたくありません」

「もちろん自分の子どもが
可愛いのは当然かもしれませんが、
いつまで生かしておくつもりなのでしょうか」

自らに突き付けられた、刃。

神戸記者の長男、
金佑(かねすけ)さん(20)。

重度の自閉症と知的障害があります。

自分の息子も、植松被告にとっては
殺害する対象だったのか・・・。

おととし12月。
神戸記者は、植松被告と
横浜拘置支所で
初めて面会しました。

「ご足労ありがとうございます」

手紙から想像していたよりも
声は か細く、
丁寧な言葉遣い。

まず最初に
神戸記者はこう尋ねました。

「あなたは
『意思疎通ができない人』のことを
 心失者と呼んでいますが、
 具体的にどういう人を指して
 言っているのですか」

「名前と年齢と住所を言えない人です」

「事件の当日は
 真夜中でみんな寝ていたでしょう。
 どうやって心失者かどうかを
 見分けたのですか」

「起こしました。
 おはようございますと
 答えられた人は刺していません」

「ではうちの子がもし
 やまゆり園に入所していたとしたら
 殺す対象だったということですか」

「その時になってみないと
 わからないですね」

「生と死を司るのは
 神のやることなんじゃないですか」
「あなたは神なのですか」

「そんなことは言っていません!」
「みんながもっとしっかり考えるべきなんです。

 考えないからやったんです」

「あなたは一線を引いたのですか」
「そうです」

「どうしてあなたが線を引く権利があるのですか」

「じゃあ誰が決めればいいんですか!」

「気付いてしまったんだから。」
「落とし物を拾ったら届ける。
 当たり前ですよね」
「それと同じような感覚ですよ」

30分の面会が終わりました。

そのころ、長男の金佑さんは
二十歳の誕生日を前に、
ある計画を実現させようとしていました。

<<後編へつづく>>