東日本大震災から９年　”あの日”を伝え続ける”語り部”の思い

東日本大震災の発生から
きょう３月１１日で９年。
被災地は鎮魂の祈りに包まれました。
多くの人が犠牲となった
あの日の記憶を風化させないよう
自らの体験を伝え続ける女性を取材しました。
（２０２０年３月１１日放送）

残された遺族は、
最愛の人に思いをよせました。

東日本大震災の発生から９年

「３・２・１　届け…」

各地でささげられた犠牲者への祈り…。
しかし、その景色は、
例年と少し違っていました。

岩手県釜石市のこの式典会場では
消毒液の設置や訪れた人の体温を測定。
新型コロナウイルス感染の
予防策がとられたのです。

式典では、参加者を３分の１の
２００人程度に絞り込み
規模を大幅に縮小しました。

宮古市田老では
例年、手をつないで黙祷するのですが…

福島県主催の式典には
知事など５人のみが出席

先週、原発事故による避難指示が
一部で解除された双葉町では…

津波の被害を受けた沿岸部では
行方不明者の一斉捜索が行われました

そして今夜…

鎮魂の願いをこめ
「白菊」と名付けれた花火が
打ち上げられました。

当たり前だった日常が
津波によって、突然奪われてから９年。

記憶の風化を防ぐために、
自分の辛い体験を語り続ける人たちがいます。

●松崎江里子さん
「窓の外から見える景色は電柱が倒れていたり、信号も止まっていたり、
みんながどうしていいのかわからないような、
あたふたした状態、雰囲気で外が見えました。」

松崎江里子さんは、津波で父親を亡くしました。
遺体が見つかったのは、一月後のことでした。

●松崎江里子さん
「遺体安置所に向かうと
ちゃんとは見られなかったんですが、
そこにはパパがいました。
我が家の隣の隣の家の下でみつかったと。
その自分の家の隣の隣を何気なく歩いていた。
そのときにそこにはパパがいた。
そう思うとごめんねとしか言えないんですが。」

４年前まで、自分の体験を語ることが
出来なかった松崎さん。
水に対する恐怖心から、
今も湯船に浸かることが出来ません。

●小川キャスター
「あまり思い出したくないことも含めて、
　語るのは、相当勇気が必要だったのでは
　ないかと思いますが。」

●松崎江里子さん
「２０１１年３月１１日のあの日に
自分が体験したからこそ、今後、いつどこで、
地震が起こるかわからないし、
海が近ければ津波が来るかもしれない
というなかで
これからは震災を知らない
子供たちが増えていくので
少しでも１人でも多くの方に
語り続けていきたいというのは思います。」

●小川キャスター
「慰霊碑ですね。花が手向けられていますね。
新しいお花。
今日いらっしゃた方が多いんですね。」

あの日、宮城県名取市閖上地区に
津波が到達したのは、
地震発生から１時間６分後のこと。

当時、３０００人ほどの住民が
残っていたそうですが、
８メートルを超える津波によって、
７５４人が犠牲になりました。
別の語り部は、こう指摘します。

●渡辺成一さん
「もともとここに住んでいた方は
ここに津波がくるという
正しい認識がなかったんですよね。
本質的なものを理解していれば、
歩いて避難しても十分間に合う時間は
あったわけです。
伝承とかいっぱいありますけど、
やはり物事は正しく理解してですね、
正しく伝えないと
多くの犠牲者を生むということに
繋がっていくんですね。」

展示されている遺品だけは、
あの日から時が止まったまま･･･。

一方で、閖上の街は、９年の時を経て、
大きく生まれ変わろうとしています。

５メートルの高さにかさ上げされた土地には、
戸建て住居や復興団地、
学校、商業施設などを整備。
他県から不動産を求めて訪れた人の中には、
ここを津波が襲ったことを
知らない人もいたといいます。

語り部・松崎さんの自宅があった場所は、
かさ上げされ、道路になっていました。

●松崎江里子さん
「あの日と変わらぬ生活ができていたら、
それを復興とは言わないと思うけど、
戻ってほしいな。
戻ってくれたら復興なのかな
という思いはありますけどね。」

＊動画版はこちらから＊
https://twitter.com/tbs_news/status/1237784554233946112?s=20