後編)小川キャスターがみた香港の“今”
民主派の圧勝で終わった香港の区議会選挙。
その選挙戦で浮き彫りとなったのが
親中派と民主派の対立、香港の分断です。
家族が引き裂かれてしまったという
ある学生を取材しました。
(11月26日(火)OAより)
11月26日、
姿を見せた林鄭月娥行政長官。
政府に批判的な「民主派」が
区議会議員選挙に圧勝してから
初めての会見です。
選挙結果は政府の政策への反発が
表れたものだと認める一方で、
普通選挙の実現など
デモ参加者が求める
「五大要求」については
応じない構えを崩しませんでした。
今回の区議会議員選挙。
獲得した議席の数でみると、
民主派が8割を超え
圧倒しているように見えますが・・・
一方で集まった票の数でみると、
民主派57%に対して親中派41%と
香港市民の間でも
意見が分かれているのです。
香港市民の間に生まれた分断。
私たちが選挙当日、取材していた際にも―
突然、親中派と民主派とが
激しく言い争う場面がみられました。
医療関係の大学院で学ぶ
張さん(25・仮名)。
今、香港社会の分断に苦しんでいます。
民主派のデモで
応急救護のボランティアとして活動。
民主派の学生たちが立てこもっている
香港理工大学でも、4日間を過ごしました。
警察が大学の病院に突入してきた際には、
扉をはさんで隣の建物にいたといいます。
「ある女の子は頭をゴム弾で撃たれてしまい、流血が止まりませんでした。すぐ横に男の子の患者もいたのですが、僕は震えが止まらず手当することができませんでした。崩れ落ちて泣くしかありませんでした」
こうした張さんの活動は、
家族との絆を、引き裂いていきました。
一人っ子の張さんを大事に育ててきた両親は、
政府寄りの親中派。
特に母親は、
民主派のデモに厳しい態度をとっています。
「母親に『警察が一般市民を殴りつけるのを黙って見ていられるのか』と聞いたら、『ええ、むしろ警察の武力行使は足りていない。警察はデモ隊をもっと激しく殴るべきだ』と言うんです。ー
10月、デモで救護ボランティアをした際には、
自宅で待っていた母親に、
生まれてはじめて頬を平手打ち
されたといいます。
これをきっかけに、
自宅を出てアパート暮らしを始めた張さん。
両親とは今、連絡すら取っていません。
「家族はバラバラになりました。林鄭月娥のせいで僕たちの家族はバラバラになってしまったんです」
小川)
「ご両親との関係を犠牲にしながら、何を得ようと思われているんですか」
「家族の仲は修復できると信じています。
でも、失明した人は元には戻りません。
一旦失われた命を、
再び取り戻すことはできません。
警察の残虐な行為や
市民の声を聞かない政府に反対するという立場を
今は貫きたいんです。」
家族の絆まで引き裂く香港の分断。
民主派団体のメンバー・周庭さんは、
こう話します。
「この問題は政府が解決すべき問題だと思う。親中派・政府が指示して(逃亡犯条例)の改正案の話を提出したからこういうデモも起きたし、単純に分断解決ではなく、香港の根本的な政治問題を解決すべきだと思います」