「香港が香港じゃなくなる」 "民主の女神"に聞く緊迫の香港 いま何が?
香港で返還以降最大規模の
デモが熱を帯びています。
香港で拘束した刑事事件の容疑者を
中国本土へ引き渡せるという
「逃亡犯条例」改正案をめぐるものです。
こうした中、実際にデモに参加し、
香港から来日した女性がいます。
現役大学生の
周庭(しゅう・てい)さん(22)
香港の民主化運動
「雨傘運動」の中心メンバーで
”民主の女神”と呼ばれていました。
アニメ好きが高じて
日本語を独学で覚えた周さんが
news23のスタジオで
香港の今を語ってくれました。
(news23 2019年6月12日放送)
小川
雨傘運動の仲間たちも
デモに加わっているんですよね?
周
警察は(催涙弾やゴム弾を撃つ)銃を向けました。人の足ではなく、頭に直接向けていたので、デモの参加者は殺されるかもという恐怖感がありました。血だらけのひとも出ています。
香港人が見ると第二の天安門事件が起こるのではと、不安というより恐怖感がすごくありました。
一方、香港の現場にいる
news23村瀬健介フィールドキャスターが
取材して感じたことを伝えてくれました
私も(取材中に)もろに催涙ガスを浴びましたけれども、香港当局の強い意志のようなものを感じました。
▼催涙ガスを浴びたときの村瀬キャスター
もうひとつ、取材して気づいたことがあります。
デモに参加している皆さんが、顔をさらすことへのリスクに敏感になっているということなんです。カメラインタビューを断られることもたくさんありました。デモの参加者のほとんどがマスクを身につけていました。
催涙ガス対策もあるが、顔を見せないという意味もあるようです。
私たちがカメラを向けると、それまでマスクを付けていなかったひとたちがあわててマスクをつけるということが何度もありました。
中国共産党のグリップが日に日に強まってる香港で政治的なデモに参加するリスクを現実のものとして捉えているということだと思いました。
小川
気をつけて取材を続けて下さい。村瀬キャスターから「顔をマスクで隠してデモに参加している」という報告がありましたが?
周
逃亡犯条例の改正案がもし可決されたら、デモの参加者は、顔を認識されると、国家安全法などの中国政府が作り上げた罪で、中国に引き渡されるかも知れないという危機感があると思います。
小川
その恐怖の中で、6月9日のデモは主催者発表で100万人以上が参加したと。香港の7人に1人が参加したことになるが、はじめて参加した人も多かったんですね?
周
3~4割は人生で初めてデモに参加した人です。なぜこういうひとがいっぱい出てきたかというと、改正案が可決されると、もともと裁判が公平で自由な社会である香港の良さが全部なくなります。中国の一都市になるかもしれないと感じてしまいます。
今回の改正案が影響するのは香港人だけではありません。香港に来る外国人(観光客、記者、ビジネスマンなど)も中国に引き渡されてしまうかもしれません。中国は自分の好きじゃないひとを色々弾圧します。
だから今回はもう、人権や自由だけの問題ではなく、身の安全に関わる問題です。みんな今回のデモを最後の参加のチャンスだという「覚悟」を持ってデモに参加しています。
小川
ここを逃したら戻ることができない?
周
戻ることができないというか、
香港はもう香港じゃなくなる可能性が非常に高いです。
小川
香港議会の審議は延期されましたが、星さん、いつ議会が開くか全く見通しが立たない状況ですよね?
星アンカー
力で押さえ込む動きがどんどん広まるでしょうけど、国際世論が香港の市民を応援していく必要があると思いますね。
周
国際社会の注目が私たちにとって非常に重要だと思います。イギリス・カナダ・アメリカ・EUも声明や懸念や反対の声をあげました。私が今回東京に来たのも、日本は香港と強い経済的パートナーですから、日本政府も自分の意見をハッキリ言っていただきたいという強い気持ちをもっています。
小川
今を逃したらあとがないという周さんの強い危機感が伝わりました。香港にいる皆さんも同じだと思います。周さんありがとうございました。