~千鳥橋に用がある〜

此花区に住んで30年になる。
それなのに、千鳥橋に足を踏み入れたのがほんの4年前。家 からチャリで飛ばせば3分かからず千鳥橋に着く。けれどその途中に本物の「千鳥橋」あ り、長らくその橋の傾斜が自分を拒み続けていたことが理由の一つ。あとやっぱり 

「千鳥橋に用がなかった」

 家の近所に数軒の銭湯があったけど、歯が抜け落ちるようにポロポロと、本当にポロポロ と廃業してしまいある日を境にとうゼロなってしまった。困った。意を決して「千鳥橋」 を渡って千鳥橋にある銭湯通いが始まった。

 「千鳥橋に用ができてしまった」

 通っていれば当然銭湯の番台の人との会話も、一言二言日を追うごとに増えていく。その うち、仕事もせずにぶらぶらしていることがバレ、ついにはスカウトされてしまう。

 けど、本当は迷った。生きていくには誰だってお金が必要。努力や頑張りは大切だけど、 うまくゆかないことは山ほど起きる。望み通り行かない日が襲いかかってくるんじゃない か、誰かのせいにしたくなる時が来るんじゃないか、けど今よりさらに歳を重ねると親身 に構ってもらえなくなるかも知れない。

 迷った時のために勉強する、本を読む、コミュニティに足を運ぶ。形はどうあれ人は人と 関わらずに生きてはいけない。ネットやゲームは気晴らしにはなるけどそこに答えはない。

経験を積む権利は人間だけのもの。それを行使してこそ人生は豊かになる。自己肯定への 次の一歩が、銭湯を手伝うことになるとは。 

「千鳥橋に用ができてしまった」 

高橋ロラお

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