供給ショックに転換した経済構造 それでもインフレファイターFRBの利上げは続く
景気後退まで悪化するリスクを高める
インフレ撃退に「無条件に傾注する」
消費者物価(CPI)が前年同月比8 %台の上昇という40年ぶりの高インフレが依然続く米国。ただ8月以降、伸びの頭打ち傾向も見え始め、市場には米連邦準備制度理事会(FRB)の政策会合での大幅利上げも小休止になるのでは、といった希望的観測も出ていた。だが、それを完全に打ち砕いたのが、同月下旬のジェローム・パウエルFRB議長の講演だった。世界の中央銀行政策担当者が毎夏集うワイオミング州での「ジャクソンホール会合」で今後の金融政策方針について、インフレ撃退を「やり抜く=keep at it」というフレーズを2度使ったのだ。
実はこの「keep at it」には由来がある。1979年にFRB議長に就任したポール・ボルカーは、翌年3月に第二次世界大戦後最高の前年同月比14.8%まで達したCPIに対し、政策金利を10%強からほぼ20%まで引き上げる強烈な金融引き締めを実施した。その後3年間で上昇率を2.5%まで低下させ「インフレファイター」として内外の名声を得た。そして当時の金融政策などの回顧録を2018年に出版したが、そのタイトルにこのフレーズを用いて「Keeping At It: The Quest for Sound Money and Good Government(やり抜く―健全なマネーと良き統治を求めて(仮訳))」としたのだ。