戦時報道の教訓映す「反復帰」記事
🔻社論に反旗掲げた編集委員
朝日新聞が5月26日、東京五輪パラリンピックを中止すべきという社説を掲載した。世論はどの調査も一時7割以上が「中止・延期」だっただけに、英断というより「ようやく」という印象だ。だが、他の大手紙は一向に態度を明らかにしない。社説だけではない。 記者個人の署名記事や外部識者の寄稿でも、明確に「中止」を訴える記事はほとんどない。五輪スポンサーに名を連ねているのだから「中止」を唱えることは社論と矛盾するということなのだろう。
それにしても新聞にとって社論や社説とはそれほど絶対的なものなのか。この種の議論があるたびに思い出すのは、沖縄返還前の地元メディア「沖縄タイムス」の紙面である。
1960年代後半に沖縄返還交渉が本格化して以降、沖縄タイムスは「早期復帰」を社論として掲げ、1日でも早く米統治から抜け出すことを社説で繰り返し訴えた。だが、これに敢然と反旗を翻して「反復帰」を唱える編集委員が社内にいた。今年90歳で現在も詩人として活躍する新川明さんである。