15年に及ぶ新本館ビッグプロジェクト 革新を標榜し続ける帝国ホテル

渋沢栄一が初代会長
安定した評判を堅持

 コロナパンデミックを物ともせず、2022年3月期第2四半期決算で営業収益15兆4812億円、営業利益1兆7474億円、税引前利益2兆1440億円と、いずれにおいても過去最高を叩き出したトヨタ自動車。この国内「最強」企業を率いる豊田章男社長の長男で、将来の「跡継ぎ」と目される大輔氏の結婚が明らかになったのは今年3月のことだった。

 トヨタが現在、特に注力する自動運転技術とスマートシティの開発を手掛ける戦略子会社ウーブン・プラネット・ホールディングスで、上席副社長の要職にある御曹司のお相手となったのは、その美貌から「宝塚のオードリー・ヘップバーン」とも言われた元タカラジェンヌの星蘭ひとみ氏だった。

 都内は折からの緊急事態宣言下とあって派手な結婚披露宴などは行われず、5月上旬に親族や親しい友人、関係者ら200名程を招いての「結婚を祝う会」が代わりに開かれた。栄えある会場に選ばれたのは下馬評通り、東京・内幸町の帝国ホテル東京だった。

 戦後長らく、国内のホテル業界をリードしてきた帝国ホテル、ニュー・オータニ、ホテルオークラの「御三家」のうち、ニュー・オータニ東京は東京の豊田家自宅から最も近くに位置していたにも拘らず、安倍晋三元首相の政治団体が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡る不透明な会計対応で信頼を棄損。かつて、「財界の賓館」と呼ばれたホテルオークラ東京もインバウンド需要を意識し過ぎた建て替え・改装が、目下のところ、空振り気味に終わっている。

ここから先は

4,911字
この記事のみ ¥ 200