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宮古んちゅ

宮古島の人をみやこんちゅと言う。

宮古んちゅは、分かち合い精神が旺盛だ。

あるとき、スーツケースをゴロゴロ引きずって港で船を待っていると、
「ほら、これ持ってけ。」と、見知らぬ大型トラックの運転手のおじさんに袋菓子を3袋も手渡され、戸惑いつつ「どうもありがとうございます。」と受け取ると、何事もなかったかのようにどこかへ行ってしまった。
未開封のその菓子袋の賞味期限はぜんぶ切れていたが、おじさんは気にしていなかったのだろう。きっと善意でくれたのだ。

またある日、バス停で一時間に1本のバスを待っていると、停留場所近くの家の玄関がガチャガチャっと開き、おじいさんがいくつかのお茶菓子を手に出てきて、「これ、持ってけ。」とニコっと言って見ず知らずのわたしに手渡した。
問答無用で受け取るしかなかったわたしは精いっぱいの笑顔でお礼を言った。
どこから見ていたのかおじいさんは、納得したのかそのあとすぐに何も聞かずに家に入っていった。

また別の日、昔お世話になったバイト先の店長の家に当時のお礼に伺ったとき、突然わたしが訪問したものだから戸惑ったのだろう。
台所の奥から「よかったらこれ持って行って。」と言って、
奥様がパック詰めの食べかけのカステラをおみあげに渡してくれた。

噂には聞いていたが、宮古んちゅは食べかけのものでも独り占めせずに分け合う。思いやり溢れる分かち合い精神があるのだ。

そういえば、というべきか「おとーり文化」というのがあるのも納得がいく。
オトーリ(御通り)とは?宮古島の風習として知られる乾杯方法を紹介! | HANDS (hands-media.jp)

おとーり文化

そして今日、わたしはスーパーの薄い買い物袋にみかんの袋詰めを入れ、自転車を押してヨタヨタと歩いていると、
「みかんおいしそうですね!」と、小学生の男の子に声をかけられた。
みかんがまるみえであった。
袋の中身がみかんであることを見抜いた目ざといその子に、わたしは迷うことなく
「もらうか?」と尋ねた。

すると、その場にいた4人の子どもらは口々に、「いいんですか?」と小躍りしながら手を差し出し深々と「ありがとうございます!」と礼を言った。
しっかりとあいさつをすることこそが、この島の学校の教育方針なのかなと感心しつつも、
「知らない人に物をもらっちゃいけないって、教わらなかった?」だの、
「手を洗ってから食べるんだよ」だのと説教をつぶやき場を後にした。

あー。わたしも、ついに宮古んちゅになっちゃったなぁと、感慨深かったという話である。

訂正)ほんものの宮古んちゅは物を上げるからと言って説教はしない。

Emeru

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