有機米=無農薬じゃないの?大きな勘違いをしていた僕の話
秋田県わんぱく相撲出身、有機米デザインの新米、くにです!米農家の皆様におかれましては、お忙しい時期に記事を開いてくださり、ありがとうございます!
今回は、あらためて「有機米とは何ぞや?」ということについて、書いてみたいと思います。
前回の記事でも触れた通り、私は有機米デザインに入る前まで有機米の存在を知りませんでした(お恥ずかしい)。
当時は、「有機=無農薬」というイメージがあったので、「有機米って農薬を使ってなくて体にいいんだろうな」ぐらいに考えていました。
有機米デザインの先輩方に学ぶうちに、それが大きな勘違いだったことに気がついたのです。
有機米の定義
結論からいうと、有機米とは
有機JAS認証を取得して有機米として格付けされたお米
です。
僕はこれを初めて聞いた時、「一体、なんのこっちゃ?」となりました。「体によくて美味しいお米」とか言われると思っていたのに。なんだかややこしい言葉が出てきてしまいました。
一つ一つ、整理していきたいと思います。
まず、有機米の「有機」は、有機農業あるいは有機栽培のことを指しています。
とすると、「有機米」は「有機農業で育てられたお米」と、言葉の意味としては解釈することができると思います。
では、この「有機農業」とは何か。実は法律でばっちり定義づけられています。
とてもややこしいです。とてもややこしいので、早合点の僕は
「肥料も農薬も使わないで、(遺伝子組換えなんかできないけど)環境に配慮する優しい気持ちを持って育てれば有機米なのですね!」
と言いたくなります。
しかし、「有機米」を名乗るには、ある一定の基準をクリアする必要があります。
それが「有機JAS認証」です。
実は、日本では肥料や農薬を使っていないからといって「これは有機米である!」と勝手に名乗ってはいけないことになっています。名乗るというのは、商品に「有機米」と表示することです。
有機米を名乗るには、「有機農産物の日本農林規格=有機JAS」の基準に基づいて栽培されていることを、国に登録した第三者機関から認証される必要があります。そうして栽培されたお米は最終的に、認証の証である「有機JASマーク」を貼付(=格付け)され、出荷されます。
ゆえに、有機米は
有機JAS認証を取得して有機米として格付けされたお米
と定義づけられるのです。
当社の営業マンが「有機米、買い取らせてください!」とご相談をさせていただく「有機米」も、上記の定義に基づいたお米のことを指しています。
▼当社の有機米にかける思いについては下記の記事をご覧ください。
有機JASの具体的内容
では、お米の有機JASは具体的にどのような内容なのでしょうか。
農林水産省は主なポイントとして、
などを挙げています。
ここで僕が特に驚いたのは、圃場における化学肥料・農薬を使用していない期間についての基準です。「播種前2年以上」となっています。
つまり、化学肥料・農薬を使わずに、最低でも2年間お米づくりを行った圃場が、3年目を迎えてようやく有機JAS認証の申請ができる圃場として認められるということです。
例えば僕が、「今年から有機米やるぞ!」と一念発起して、化学肥料・農薬を使わず、その他の基準を全てクリアしたとしても、その年のお米は有機JAS認証を受けることができないのです。
有機栽培に転換して1年目のお米は有機JAS認証を取得できませんが、しっかりと1年間、有機栽培をしたことを証明できれば、2年目のお米は「転換期間中有機農作物」として認証を受けることができます。この認証を取得できれば、「転換期間中」という文言を記載することを条件に、「有機米」を商品に表示することが可能になります。
有機米は無農薬なのか?
では、「有機米は無農薬なのか」という、かつての僕の問いに対する答えはどうなるのでしょうか。
有機米は先の定義の通り、「有機JAS認証を取得したお米」ですので、有機JASでは農薬をどのように扱っているのか、がその答えとなります。
結論としては、
有機米でも使用できる農薬はある
です。つまり、「有機米=無農薬」は必ずしも成立しないということになります。
先の「有機農業の定義」を今一度振り返ってみると、
となっています。
こうした有機農業の考え方に基づき、現在の有機JASでは「化学的に合成されていない肥料・農薬」であることを基本として、有機JASに定められた条件を満たす肥料・農薬は使用できることになっています。
使用可能な肥料・農薬を判断する方法は、2つあります。一つは、国に登録した認証機関が、「この資材は有機JASに適合している」と評価して作成した適合資材リスト(農水省のHPにリンクが掲載されています)から選ぶ方法。もう一つは、農家さん自身が有機JASに適合していると評価する方法です。
農家さんがご自身で適合性評価を行う場合、以下のフローに従ってこれを行い、認証機関に報告する必要があります。
僕のような大雑把な人間は、こんな複雑なフローを見るとすぐに挫けてしまうのですが…有機農業への参入をサポートするための取り組みも各地に広がりつつあります。その中でも、技術指導や説明会の開催、ビジネスマッチングなどを通じて、地域ぐるみで有機農業を推進する「オーガニックビレッジ」の創出が本格化しており、有機米デザインもこの取り組みを後押ししています。
そもそも、「無農薬」という言葉は、その確証を得るのが非常に難しいと思います。たとえ栽培期間中に農薬等を使用していないとしても、圃場に農薬は残留していないか、近辺の圃場から農薬が飛散・流入していないか、農業用水は汚染されていないか…などなど、「無農薬(農薬の使用・混入が一切ない)」という事実を確定させるための要素は非常に多いのではないでしょうか。
したがって現在、「無農薬」を認証する制度はありません。また、消費者の誤解を避けるため、「無農薬」や「無化学肥料」という文言を商品に表示することは禁止されています。
まとめ
というわけで、今回は有機米の定義について勉強させていただきました。
勉強すればするほど、農家さんはこんなに複雑な行程を経て安心・安全な有機米を我々の食卓に届けてくださっているのか、と感謝の念に堪えません。農家さん、いつも本当にありがとうございます。
有機米デザインのnoteでは、今後も農家さんの役に立つような情報発信に努めてまいりますので、何卒、応援のほどよろしくお願い申し上げます!
この記事を書いた人
くに:秋田県、わんぱく相撲出身。美味しいご飯と納豆、豆腐とわかめの味噌汁があれば幸せ。体は大きいが胃腸は弱い。