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その② しっぽの先のリボン亭は今日も大忙し、ですのにゃ! ~私、大好きなあの子のために美味しい竹輪を焼くって決めたから~

【愛猫を追いかけていた私が迷い込んだのは不思議な世界でした。モフモッカ王国へようこそ!】

○自宅・縁側
 縁側に腰かけている少女――まひろ。
 白いフリルブラウスに、膝下まで丈がある山吹色のプリーツスカートを合わせた格好。
 まひろ、膝の上で丸まる猫を撫でて微笑む。
 庭にある桜の木からは花びらが舞い、吹きこむ風がふわりとまひろの髪を揺らす。
ちくわ「(甘えるように)なぁー」
まひろ「どうしたの、ちーちゃん? お腹空いた?」
 まひろが顎を撫でると、ちくわは甘えるように喉を鳴らす。
まひろ「もう、ちーちゃんはほんとに甘えんぼさんだねー」
ちくわ「みゃおー」
 ちくわ、急かすようにまひろの指に頭を擦り付ける。
まひろ「はいはい。わかったから、ちょーっと待ってねー」
 と、笑いながら傍らに置いていた竹輪の包みを開けて、一本取り出す。
 食べやすい大きさにちぎって、まひろが口元に差し出すと、ちくわは一心不乱に食べ始める。
まひろ「ふふ、おいしい? 慌てなくていいからね」
ちくわ「にゃー」
 まひろは苦笑いしながら、竹輪をちぎって与えていく。
 突然、強い風が吹く。
まひろ「きゃっ!」
 目を閉じて、髪を手で抑えるまひろ。
 ちくわ、風が吹き込んできた方向をじっと見る。
まひろ「ちーちゃん?」
 と、いつもと違う猫の様子に首を傾げる。
 ちくわ、まひろの膝から飛び出し、庭の外へ向けて駆けていく。
まひろ「ちょっと、どうしたの!? ちーちゃん! ちーちゃーん!」
 竹輪の包みを手に握ったまま、慌ててちくわを追いかけるまひろ。

○王都ケモノスタット・新市街
 色とりどりの木組みの家々が立ち並ぶ街並み。
 路面は石造りになっている。
 地面に屈み込むまひろを迷惑そうにしながら、通行人たちが忙しそうに街路を歩く。
 通行人の頭には尖った獣耳、腰にはふさふさの尻尾。
まひろ「……ここ、どこ?」
 と、辺りを見回して首を傾げる。
 まひろ、通行人の耳と尻尾に気づく。
まひろ「……なにかのコスプレ?」
 立ち上がったまひろはスカートのほこりを手で払いながら、再びキョロキョロ。
 周囲を見渡しながら歩くまひろ。
 すると、路地の入り口に女の子が倒れているのに気づく。
 まひろ、駆け寄って座り込み、声をかける。
まひろ「ねぇ、どうしたの? 大丈夫?」
ラナ「お……」
まひろ「(心配しながら)お?」
ラナ「……お腹、空いた……にゃ」
 と言って、むくりと顔を上げる。
 褐色の肌にふわふわの白髪、やはり頭には獣耳。
まひろ・M「うわっ……! なにこの子、めっちゃ可愛い!」
ラナ「……お姉さん、なんかいい匂い、するにゃ」
 鼻を鳴らしながら、まひろの匂いを嗅ごうとする。
まひろ「ち、ちょっと! 近い……近いからー」
ラナ「何か食べ物持ってるにゃ?」
まひろ「え? ああー」
 と、スカートのポケットから竹輪の包みを取り出す。
まひろ「これのこと?」
ラナ「(瞳を輝かせて)それにゃー!」
まひろ「(呆れながら)こんなものでいいなら、どーぞ」
 まひろ、竹輪を一本手に取り、ラナの口元に向ける。
 勢いよく齧りつく、ラナ。
ラナ「(咀嚼しながら)美味しいにゃー、これは何かにゃ?」
まひろ「竹輪だよ? 知らない?」
ラナ「ちくわ? 聞いたことがない食べ物だにゃー」
 ラナは全ての竹輪をぺろりと平らげる。物欲しそうな目で尚も見てくる。
まひろ「ごめんね。今ので終わりなの」
ラナ「(首を振りながら)ううん、どうもありがとなのにゃ。とっても美味しかったです」
まひろ「そっか。よかった」
ラナ「お姉さん、知らない顔にゃ。名前は何て言うんだにゃ? あっ、あたしはラナっていいます」
 と、座ったまま頭を下げる。
まひろ「(頭を下げながら)これはご丁寧に。私はまひろだよ」
ラナ「それじゃ、まひろお姉さん。ついてきてほしいにゃ」
まひろ「えっ、どこに?」
ラナ「あたしの家にゃ! お礼をしたいにゃ!」
 先に立ち上がって、座ったままのまひろに手を差し出すラナ。

○同・旧市街
 まひろ、ラナに案内されて道を歩く。
まひろ「それじゃ、ここに住んでるのはみんな、〝ケモノビト〟っていう人たちなの?」
 まひろの視界で、ラナの耳が揺れる。
ラナ「そうにゃ。ここは王都ケモノスタット。お姉さんみたいな〝普通の〟人は珍しいにゃ」
 まひろ、立ち止まる。
まひろ「ちょっと待って! それじゃあ、日本は? 八潮町は?」
ラナ「ん? そんなの聞いたことないにゃ」
まひろ「そんな! 聞いたことないって……」
ラナ「ここは、モフモッカ王国。あたしたち、ケモノビトの国にゃ!」
まひろ・M「(愕然と)ほんとにここ、どこなのよおー!」

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