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公務員が中小企業診断士を目指してよかった理由
中小企業診断士2次試験の合格発表が1月15日にありました。Xでは悲喜こもごもの声があふれていましたよね。私が試験に合格した2年前もドキドキしながら発表の日を迎え、PC上で自分の番号を見つけると、急いで妻に報告しました。妻も涙を流して喜んでくれたとか。
あの時の私はまだ公務員。中小企業診断士資格など取っても取らなくてもキャリアに全く影響がない仕事です。でも、公務員だからこそとってよかったという理由もあります。というわけで、きょうは、公務員×中小企業診断士について考えてみたいと思います。
組織や自身の置かれている状況を知る
組織論の観点から職場の現状を知れたことは、私にとってとても価値あることでした。「上司の思い付きに下が振り回される」とか「残業しない奴はサボってるような雰囲気」など、職場に何となく嫌な雰囲気が蔓延しているけど、それが言語化・明確化されることなく毎日が過ぎていく…。一般企業でもあるあるかもしれませんね。
こうした中で、診断士試験では様々な組織論を学びます。以下、当時の私の気づきを思い出しながら書いてみたいと思います。
組織の成立要件
①共通目的 ②貢献意欲 ③コミュニケーション
組織が成立するための「キホンのキ」ですよね。でも、働いている人たちに「共通目的」はあるのか?組織への貢献意欲はあるのか?十分なコミュニケーションが保たれているのか??組織によって程度の差はあるのでしょうが、私がいた部署はかなり「浅い」段階だったのではないかと資料します。
ハーズバーグの二要因論:動機づけ要因と衛生要因
様々なモチベーション理論の中で、一番納得感があったのは、ハーズバーグの「二要因論」。組織構成員の積極的な態度を引き出すためには、達成感や承認、仕事への責任などの「動機付け要因」が求められ、給与や労働条件などの不満を防止するだけ(=衛生要因)では意味がないという理論です。
公務員は「安定している」と言われますが、「安定」は「辞めさせられない」の裏返し。衛生要因は充足していますが、公務員の仕事で動機付け要因を充足していくのはなかなか難しいと感じます。
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訓練された無能
以前、どこかでも書いた気がしますが、「訓練された無能」は当時一番腹に落ちた言葉でした。「官僚制の逆機能」で出てくる言葉で、「行動の標準化や規則の遵守により個人の意思決定パターンが硬直化する」(自分で考えなくなる)というものです。「前例主義」「横並び主義」などとよく言われますが、この言葉によって、自分で考えなくてもよい状況に置かれていることに気づくことができました。
公務員にもマーケティング志向を
診断士試験受験時、私は外国人旅行客誘致を担当しており、地元を海外に知ってもらうという意味でマーケティングの知識はすごく有用でした(SWOT分析やSTP分析、4P分析などはとても有効な分析ツールだと思います)。まして、インバウンドに限らず、県産品振興、移住者獲得など地域間競争が激しくなる中で、こうした業務に携わる職員にはマーケティングの知識は必須なのではないかと考えます。
一方で、公務員の仕事は多岐にわたっています。南海トラフ地震への備えが叫ばれる中での「防災意識の向上とイベントへの集客」、「カーボンニュートラルに向けた助成金の周知」など、住民の方に知ってもらう、協力してもらう必要がある事柄については、マーケティングの知識があったほうが望ましいのは言うまでもない気がします。
他組織の診断士との交流は財産
有償、無償を問わず、診断士として活動していると、診断士の仲間ができるものです。こうした人たちが、組織の中で(あるいは独立後の事業主として)何を考え、どう行動しているかを知ることは自身の視野を広げるのに大いに役立ちます。
私の場合、地元だけではなく、全国広範囲にわたって診断士の知り合いがたくさんできました。年代も性別も多様です。こうしたメンバーと飲んだり旅に出たりして得られる新鮮な刺激はなにものにも代えがたいものがあります。弁護士や税理士、社労士など他の士業でも交流を楽しむ文化はあるのかな?
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私はたまたま公務員の立場で診断士試験を受けましたが、どの業種の人でも(あるいは、学生や定年後の人もふくめて)診断士試験を通じて得た知識は生きる上で役立つのではないかと思います。
1月26日は診断士二次試験の口述試験日。不安なこともあるかと思いますが、受験される皆様、頑張ってください!応援しています。