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大仏や 昭和長者が 夢のあと
日本三大仏と聞いて、どこを思い浮かべますか?奈良と鎌倉はすぐに思い浮かぶ人がいると思います。そして、もう一つ…。江戸時代は京の大仏、戦前は兵庫大仏(←太平洋戦争の中、金属回収令によって供出されたのだとか)。そして、戦後は富山の高岡大仏や岐阜の岐阜大仏が挙げられるそう。高岡大仏にも行ったことがあるけど、商店街を抜けると、いきなり大仏が鎮座。東大寺とか鎌倉と比べ、「前置き」なくいきなり現れるのが個人的にツボであります。
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観音像の巨大化と老朽化
1980年代に入り、日本各地で巨大な観音像が次々と誕生しました。茨城の牛久大仏は高さ120メートルと恐るべき高さですよね。
しかし、建築物は当然、老朽化します。適切な修繕と補修がなければ朽ちるのは当然の話。石川県加賀市の加賀大観音は廃墟と化し、所有者不明の状態。淡路島の世界平和大観音像は放置され、危険な状態になったとして国が公費で解体することにもなってしまいました。
越前大仏に行ってみたい!
先日の福井旅行の際、どうしても行ってみたかったのが勝山市の越前大仏。
(福井についてはこちらの記事もどうぞ)
大人気スポット、福井県立恐竜博物館からも近い越前大仏。TikTokでも、渋めのトーンの音楽にのせて、無数の仏像がある映像が流れてくるため、福井に行く以上は行ってみたいと思っていました。それに輪をかけて、インバウンドがたくさん訪れているらしいというニュースも。「これは行かんわけにはいかんじゃろ」ということで、訪問を決意しました。
でも、よくよく調べてみると、この越前大仏は相当に数奇な運命を辿っています。
数奇①:1987年のバブル真っただ中、相互タクシー創業者の多田清氏が「観光および地域活性化」のために建立(当初、市税を納めるため、宗教法人にはしなかったらしい。その後、宗教法人格を取得し、清大寺となる)
数奇②:税金が納められなくなり、勝山市が土地建物を差し押さえた。
数奇③:しかし、公売が成立せず、不納欠損処理された。
数奇④:今ではインバウンドも来る観光施設に(私が訪れた時も、和服を着た若い女性(おそらく台湾か中国)が楽しそうに動画撮ってました)。
探検!越前大仏
駐車場に車を止め、人工的な門前町(営業中のお店はわずか)を抜けると、目の前に現れるのは巨大な大仏殿。中国・洛陽の寺院をモデルにしているだけあって、王朝の宮殿みたいな巨大な空間と大仏殿が目に飛び込んできます(写真じゃ伝わりにくいか…)。
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そして、大仏殿の中に入ると…鎮座するのは奈良の大仏よりも大きいという巨大大仏。高さはなんと17メートル。そして、その脇には高さ10メートルを超える羅漢像と菩薩像が2体ずつ安置されています。
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さらにさらに、大仏殿の三方の壁には無数の小仏像が細かく仕切られた空間の中に安置されています(1,281体あるらしい…)。
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正直なところ、神々しさや敬慕の念みたなものはあまり感じず。。。逆に、「どれだけ金かけたんや」とか「ようこんな絢爛豪華な施設を作ったもんや」などという感想しか出てきませんでした。その後、臨済宗の寺になったというのも、妙な説得感があり…。
登れる五重塔
この施設のもう一つの見どころは五重塔。なんと、五重塔にも関わらず、エレベーターで上まで登れます。最上階は展望台となっており、勝山の田園風景を一望できます。
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五重塔って、仏舎利を収める建物という名目があるはず、なのに、上までエレベーターですいすい昇れるとは、世の中も進化したものです。
そして、五重塔に向かう道中にもたくさん仏像を見かけるのですが、白い仏様が地面に直接置かれ、緑色の何か(カビ?)がうっすらと積もっている…。未だに何かの修行中なのでしょうか。
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あ、あと、日本庭園に行こうとしたのだけど、熊が出るらしいのであきらめました。。。
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諸行無常を体現する寺
一代でなした財を投げ打って建立された立派な大仏。突っ込みどころは多いですが、それでも(それゆえに)行ってよかったと感じました。何より、差し押さえを食らって、でも不納で解除され、今はきちんと観光客を集める施設になっているのが興味深いです。
万物流転、諸行無常。ついでに、仏像のカビからはわび・さびの要素も感じられます(←やっぱり、臨済宗と相性がよさそう)。
福井にお越しの際には、こちらの施設にも行ってみてはいかがでしょうか。拝観料500円でこの体験価値はお得だと思いますよ。