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失敗を極めた先に見えるもの
私のレッスンでは、メソッドがうまく出来ない生徒さんに「悪い例」をよくやってもらいます。
面白いことに、「悪い方をやってみて」と言って、「どうやるんですか?」と聞き返されたことはこれまで1度たりともありませんし、皆さん不思議なくらい簡単に上手に「悪い方」をやってくださいます。
これこそ、「できる」ようになるために必要な「間違い」なのです。
「間違い」が理解できれば、「正解」にたどり着くことができます。
まさに「失敗は成功のもと」ですね。
1. 間違いの完成を目指す
ただ、闇雲に「間違い」を繰り返しているだけでは「正解」を導き出すことができません。
大切なのは「間違いを完成させる」ということです。
うまく出来ない人は、その時点では「なんとなくの間違い」の状態です。
何が間違っていて、どうして間違いになったのか、明確な理由がわからずやったけどとりあえず「間違い」ができた、という感じ。
そんな方に対して、間違いの部分を明確にし、その部分を相当大げさにした「間違いの完成形」となる見本を私が示しながら真似してもらうと、生徒さんはすぐに「間違いの完成形」を再現することができます。
この時点での「間違い」は、どうして「間違い」なのか、どうやったら「間違い」になったのかが明確になっている状態です。
「なんとなくの間違い」だったそれまでの「悪い例」を、「間違いの完成形」に仕上げるプロセスこそが、「正解」を導き出すヒントになります。
その時にイメージしたこと、やろうとしたことの「逆」が「正解」だからです。
2. GPSにもなる「悪い例」
実際、今まで指導した数多くの生徒さんが、この「悪い方をやってみる」で悩みから救われてきました。
また、練習をしすぎると「自分は出来ているのか、出来ていないのか」が、わからなくなってしまうことがあります。
そんなときにも「悪い例」は効果絶大です。
今自分は、正解に近いところにいるのか、失敗に近いところにいるのか、を把握することができます。
「正解」は、まだ到達したことのない所なので、そこに行くのは難しいです。
そもそも行ったことがないところなのだから。
でも「間違い」は、いつも近くにあるはずです。
なので、そこに行くのはたやすいこと。
ならば、そこから突破口を見出しましょう。
これが「悪い方をやってみる」の極意です。
きっと、ボイトレ以外でも役に立ってくれるはずです。
小泉 誠司