気持ちのバトン
すみません合鍵作りたいのですがと
店主に切り出した
どこのお店だい?と尋ねる店主に説明した私
『創業は昭和23年オヤジの代からやってるんだよ。俺は25年生まれで去年女房無くしてずっと1人さ』と
自分の事を少し話してくれた
店主のオヤジさんは私の話を聞いてしきりに笑いながら頑張れよ頑張れよと連呼した
気の良いオヤジさんだなとお会計をお願いしたら
『今日はお代はいらないよ。お兄さん新橋に来てくれた仲間じゃねーか。これは少ないけどお祝いだからまたなんかある時はいつでもおいでよ。お兄さん人が良さそうだけど頑張るんだよ!』と言われて
困る私は何度もお金を払おうとしたが
受け取ってはくれない
小さな合鍵屋のオヤジさんは
こうやって何十年もガード下から山手線を見つめて新橋と生きて来たんだなと
染み染み思った
時代の移り変わりで色々な物が無機質になって来たけど
『義理』『人情』って
やっぱり感じるとあたたかいきもちになる
今日は何してたか覚えてないくらいだけど
心にそっと灯された明かりは
マッチ売りの少女がマッチで暖を取るように儚いけどどこかとても懐かしくて心地よかった
オヤジさん
ありがとうございました