marrish(マリッシュ)にインクルーシブデザインフォント(IDフォント)を導入しました
自己紹介
こんにちは、デザイン戦略部のemuです。
恋活・婚活マッチングサービスや、フリーランス管理システムのUIデザインを担当しています。
他には社内へのアクセシビリティの啓蒙活動や、フロントエンドの勉強の真っ只中です。
今回はインクルーシブデザインフォントをマッチングアプリ「marrish(マリッシュ)」に導入したお話を紹介します。
インクルーシブデザインフォント(IDフォント)とは?
インクルーシブデザインとは、高齢者、障がい者、外国人など、多様な声をデザインプロセスに取り入れる手法です。
そして、インクルーシブデザインフォント(IDフォント) は、実際に高齢者や視覚障がい者の意見を取り入れ「可読性」「判読性」を高めたフォントです。
ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)をベースに、より実践的な改良が行われています。
引用:高齢者・視覚障がい者(弱視)向けフォント 『インクルーシブデザインフォント(IDフォント)』開発・提供開始のご案内
導入のきっかけ
NewbeesではSlackにアクセシビリティの情報チャンネルが存在します。
そこでインクルーシブデザインフォントの情報を共有したところ、CEOのkazuさんから「marrish(マリッシュ)のWeb版に導入してもらえるか、ビジネスパートナー(以降BP)に提案してみようか?」と反応をいただきました。
kazuさんのフットワークの軽さに驚きつつ、marrish(マリッシュ)において、BPやエンドユーザーにとって、インクルーシブデザインフォントの恩恵は大きいのではないか?とトントン拍子に話が進んでいきました。
導入の流れ
資料請求
インクルーシブデザインフォントは、他のフォントとは少し購入方法が異なります。
UXディレクターであるsugiさんに、フォントワークス社とのやりとりを担当してもらい、資料請求や契約周りを対応をいただきました。
フォントワークス社からは資料請求の際に、インクルーシブデザインフォントが生まれた経緯を説明していただきました。「高齢者や視覚障がい者(弱視)に最適なフォントデザインにすることは、すべての方に最適なフォントを届けられるのではないか」という考えに共感し、年齢層が高めなユーザーが多いmarrish(マリッシュ)にフィットすると思いました。
Webやアプリの導入事例が少ないとのことで不安もありましたが、逆にマッチングアプリ第1号になれるという点で、ブランディングのメリットを感じました。
社内への共有・認知
marrish(マリッシュ)は、Newbeesのなかでも特に関わる人数が多いプロジェクトです。
社内でインクルーシブデザインフォントの説明を行い、認知を広げました。この1年、Slackにてアクセシビリティの啓蒙活動を行なっていたので、比較的スムーズに受け入れてもらえたのではないかと思います。
sugiさんには、社内への認知からロードマップ作成、部署間のスケジュール調整などもおこなっていただけたので、非常に助かりました。
ステージングへ仮実装
フォントサンプルをいただいた後は、実装の可否や、見た目の印象などを確かめるため、いくつかの画面を選定してステージング環境で実装を試みました。
インクルーシブデザインフォントはウェイトが1種類のみなので、太字すべてに適用すると違和感がありました。そこで複数のウェイトがあるユニバーサルデザインフォントをベースに、見出しやボタンなどの重要な太字にインクルーシブデザインフォントを組み合わせて使うことにしました。
フォントの比較
通常のフォントとユニバーサルデザインフォント+インクルーシブデザインフォントの比較です。
同じフォントサイズでも、ユニバーサルデザインフォント+インクルーシブデザインフォントはひとまわり大きく見え、小さな文字の可読性も向上します。
視覚障害ゴーグルでの比較
以前、花王のデザインウェビナーで「高齢者体験ワークショップ」の存在を知りました。
視覚障害ゴーグルやイヤーマフ、重りなどを半日間身につけて、高齢者に近しい体験をすることで、製品改善をおこなうといった内容です。
そのなかの視覚障害ゴーグルは比較的簡単に試すことができます。インクルーシブデザインフォントの検証にも使えるため、こちらもkazuさんの即決で1セット購入しました。
白いシートをつければ白内障の再現ができます。シートは複数枚あり、重ねるとより重度な白内障を再現できます。
僕は普段はリモートワークなのですが、東京出張時にデザイナーでゴーグルをつけてフォントの可読性を確かめました。
視覚障害ゴーグルでの見え方
視覚障害ゴーグルでフォントを比較した印象をまとめておきます。
インクルーシブデザインフォントはウェイトの太さもあってか、かなり見やすい。
特にひらがな・カタカナ・数字は文字がつぶれにくいようにゆったり作られている。
濁点があることがわかりやすい。
ヒラギノ角ゴW7と比較したとき、ひらがな・カタカナはW7のほうが明らかに太いが、インクルーシブデザインフォントも同等くらいはっきりと見える。
検証
アプリは画面ごとに実装する方針のため、検証において問題はなかったのですが、Web版はCSSで一気に全体に導入できるため、「検証をどうするのか?」という問題が起こりました。
marrish(マリッシュ)の画面数は300近く存在しており、リリース優先で進めるとQAチームの検証にかなり時間がかかってしまいます。逆に、スケジュール優先で進めると、検証期間の確保はおこなえますが、リリースがどんどん先送りになってしまい、この活動自体が頓挫してしまうのではという空気が漂いました。
しかし、話し合いの結果、フォント変更は機能や操作に大きく影響しないため、デザイナーがステージングでチェックを行い、問題があれば対応することにしました。臨機応変に対応できる形となり、リリースの目処も立ったので安心しました。
感想
近年、他社サービスでもアクセシビリティの取り組みは増えてきており、数年前に比べると、アクセシビリティ対応はあたりまえになりつつあります。
そんななかで、Newbeesでもアクセシビリティ改善の1つとしてインクルーシブデザインフォントを導入できたことは、背中を押してもらえたような感じで嬉しく思います。
Newbeesの社内だけでなくBPの協力・理解もとても大きく感じました。
これからの取り組みについて
現在、marrish(マリッシュ)のWeb版はインクルーシブデザインフォントが全体に反映されましたが、アプリ版は画面単位で実装するため、随時対応していく予定です。
しかし、インクルーシブデザインフォント、ユニバーサルデザインフォントがすべてを解決するわけではありません。文字サイズ、行間、余白などデザインの基本を忘れてはいけないことはもちろん、コントラスト比やマークアップなどアクセシビリティの課題は他にもたくさんあります。
Newbeesでは現在進行形でアクセシビリティのチェックリストを作成し、WCAG(Web Contets Accessibility Guideline)のシングルAの達成を目指せるように取り組みを行っています。
その他にもUX施策でユーザーインタビューやデータ分析、プロトタイプによるユーザーテストも行っています。ますますアップデートされていくmarrish(マリッシュ)にぜひご期待ください!
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