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marrish(マリッシュ)にインクルーシブデザインフォント(IDフォント)を導入しました

自己紹介

こんにちは、デザイン戦略部のemuです。
恋活・婚活マッチングサービスや、フリーランス管理システムのUIデザインを担当しています。
他には社内へのアクセシビリティの啓蒙活動や、フロントエンドの勉強の真っ只中です。
今回はインクルーシブデザインフォントをマッチングアプリ「marrish(マリッシュ)」に導入したお話を紹介します。


インクルーシブデザインフォント(IDフォント)とは?

インクルーシブデザインとは、高齢者、障がい者、外国人など、多様な声をデザインプロセスに取り入れる手法です。

そして、インクルーシブデザインフォント(IDフォント) は、実際に高齢者や視覚障がい者の意見を取り入れ「可読性」「判読性」を高めたフォントです。
ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)をベースに、より実践的な改良が行われています。

判別性向上のために、文字の変更内容を比較して説明した画像。どの文字がどのように変更されたかを示している。
内容は、カタカナ「ソ」「ン」「シ」「ツ」、ひらがな「ぼ」「ぽ」。
「ソン」ソの終筆を短くし、ンの一画目を横にしました。
高齢者向け「シツ」元の形状を残しつつ、シの最初の二点を横線に近くし、逆にツの二点を縦線に近くすることで判別しやすくしました。
視覚障がい者(弱視)向け「シツ」シの最初の二点を横線に近くし、逆にツの二点を縦線に近くすることで判別しやすくしました。
高齢者向け「ぼぽ」濁点、半濁点を大きくしました。半濁点は視覚障がい者用よりも大きくしています。
視覚障がい者(弱視)向け「ぼぽ」濁点、半濁点を大きくしました。
判別性向上のためのデザイン変更

引用:高齢者・視覚障がい者(弱視)向けフォント 『インクルーシブデザインフォント(IDフォント)』開発・提供開始のご案内

導入のきっかけ

NewbeesではSlackにアクセシビリティの情報チャンネルが存在します。
そこでインクルーシブデザインフォントの情報を共有したところ、CEOのkazuさんから「marrish(マリッシュ)のWeb版に導入してもらえるか、ビジネスパートナー(以降BP)に提案してみようか?」と反応をいただきました。

Slackでkazuさんが投稿したコメントのキャプチャー画像。
内容は、「BPとの打ち合わせを行い、見やすい書体への変更を提案したところ、とても好感触でした!試してみないとわからない部分もあるので、無料サンプルを取り寄せて、marrishのWeb版に適用してみるのはどうですか?」
kazuさんからのメッセージ

kazuさんのフットワークの軽さに驚きつつ、marrish(マリッシュ)において、BPやエンドユーザーにとって、インクルーシブデザインフォントの恩恵は大きいのではないか?とトントン拍子に話が進んでいきました。

導入の流れ

資料請求

インクルーシブデザインフォントは、他のフォントとは少し購入方法が異なります。
UXディレクターであるsugiさんに、フォントワークス社とのやりとりを担当してもらい、資料請求や契約周りを対応をいただきました。

フォントワークス社からは資料請求の際に、インクルーシブデザインフォントが生まれた経緯を説明していただきました。「高齢者や視覚障がい者(弱視)に最適なフォントデザインにすることは、すべての方に最適なフォントを届けられるのではないか」という考えに共感し、年齢層が高めなユーザーが多いmarrish(マリッシュ)にフィットすると思いました。

Webやアプリの導入事例が少ないとのことで不安もありましたが、逆にマッチングアプリ第1号になれるという点で、ブランディングのメリットを感じました。

社内への共有・認知

marrish(マリッシュ)は、Newbeesのなかでも特に関わる人数が多いプロジェクトです。
社内でインクルーシブデザインフォントの説明を行い、認知を広げました。この1年、Slackにてアクセシビリティの啓蒙活動を行なっていたので、比較的スムーズに受け入れてもらえたのではないかと思います。
sugiさんには、社内への認知からロードマップ作成、部署間のスケジュール調整などもおこなっていただけたので、非常に助かりました。

ステージングへ仮実装

フォントサンプルをいただいた後は、実装の可否や、見た目の印象などを確かめるため、いくつかの画面を選定してステージング環境で実装を試みました。

インクルーシブデザインフォントはウェイトが1種類のみなので、太字すべてに適用すると違和感がありました。そこで複数のウェイトがあるユニバーサルデザインフォントをベースに、見出しやボタンなどの重要な太字にインクルーシブデザインフォントを組み合わせて使うことにしました。

フォントの比較

マリッシュの2つの画面を比較した画像。
左側は通常フォントを使用した画面、右側はユニバーサルデザインフォントとインクルーシブデザインフォントを使用した画面。

通常のフォントとユニバーサルデザインフォント+インクルーシブデザインフォントの比較です。
同じフォントサイズでも、ユニバーサルデザインフォント+インクルーシブデザインフォントはひとまわり大きく見え、小さな文字の可読性も向上します。

視覚障害ゴーグルでの比較

以前、花王のデザインウェビナーで「高齢者体験ワークショップ」の存在を知りました。
視覚障害ゴーグルやイヤーマフ、重りなどを半日間身につけて、高齢者に近しい体験をすることで、製品改善をおこなうといった内容です。
そのなかの視覚障害ゴーグルは比較的簡単に試すことができます。インクルーシブデザインフォントの検証にも使えるため、こちらもkazuさんの即決で1セット購入しました。

視覚障害ゴーグルと複数枚のシートの写真。
視覚障害ゴーグル

白いシートをつければ白内障の再現ができます。シートは複数枚あり、重ねるとより重度な白内障を再現できます。
僕は普段はリモートワークなのですが、東京出張時にデザイナーでゴーグルをつけてフォントの可読性を確かめました。

2枚の写真。
左側はデザイナーメンバー3名が視覚障害ゴーグルについて話し合っている様子。
右側は1名が視覚障害ゴーグルを装着し、スマートフォンの画面を確認している様子。

視覚障害ゴーグルでの見え方

マリッシュの2つの画面を比較した画像。
視覚障害ゴーグルを通して見えるように再現されており、左側は通常フォントを使用した画面、右側はユニバーサルデザインフォントとインクルーシブデザインフォントを使用した画面。
視覚障害ゴーグルを通して見た白内障の見え方を再現したイメージ

視覚障害ゴーグルでフォントを比較した印象をまとめておきます。

  • インクルーシブデザインフォントはウェイトの太さもあってか、かなり見やすい。

  • 特にひらがな・カタカナ・数字は文字がつぶれにくいようにゆったり作られている。

  • 濁点があることがわかりやすい。

  • ヒラギノ角ゴW7と比較したとき、ひらがな・カタカナはW7のほうが明らかに太いが、インクルーシブデザインフォントも同等くらいはっきりと見える。

Slackでkazuさんが投稿したコメントのキャプチャー画像。
内容は、「視覚障害ゴーグルを着けてID/UDフォント実装マリッシュとノーマルマリッシュを見比べてみました。結果は……ID/UDフォント、めっちゃ見える!」
kazuさんからのメッセージ

検証

アプリは画面ごとに実装する方針のため、検証において問題はなかったのですが、Web版はCSSで一気に全体に導入できるため、「検証をどうするのか?」という問題が起こりました。

marrish(マリッシュ)の画面数は300近く存在しており、リリース優先で進めるとQAチームの検証にかなり時間がかかってしまいます。逆に、スケジュール優先で進めると、検証期間の確保はおこなえますが、リリースがどんどん先送りになってしまい、この活動自体が頓挫してしまうのではという空気が漂いました。

しかし、話し合いの結果、フォント変更は機能や操作に大きく影響しないため、デザイナーがステージングでチェックを行い、問題があれば対応することにしました。臨機応変に対応できる形となり、リリースの目処も立ったので安心しました。

感想

近年、他社サービスでもアクセシビリティの取り組みは増えてきており、数年前に比べると、アクセシビリティ対応はあたりまえになりつつあります。

そんななかで、Newbeesでもアクセシビリティ改善の1つとしてインクルーシブデザインフォントを導入できたことは、背中を押してもらえたような感じで嬉しく思います。
Newbeesの社内だけでなくBPの協力・理解もとても大きく感じました。

これからの取り組みについて

現在、marrish(マリッシュ)のWeb版はインクルーシブデザインフォントが全体に反映されましたが、アプリ版は画面単位で実装するため、随時対応していく予定です。

しかし、インクルーシブデザインフォント、ユニバーサルデザインフォントがすべてを解決するわけではありません。文字サイズ、行間、余白などデザインの基本を忘れてはいけないことはもちろん、コントラスト比やマークアップなどアクセシビリティの課題は他にもたくさんあります。

Newbeesでは現在進行形でアクセシビリティのチェックリストを作成し、WCAG(Web Contets Accessibility Guideline)のシングルAの達成を目指せるように取り組みを行っています。

その他にもUX施策でユーザーインタビューやデータ分析、プロトタイプによるユーザーテストも行っています。ますますアップデートされていくmarrish(マリッシュ)にぜひご期待ください!

Newbeesのオフィス入口前で撮影された写真。
笑顔で立っている3名のデザイナーメンバー。

フォントワークスの社名、フォントワークス、Fontworks、フォントの名称は、フォントワークス株式会社の商標または登録商標です。

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