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就活の軸ってなんですか

「就職活動の早期化」という言葉をよく耳にします。

私は26卒の大学三年生ですのであくまで26卒の就活しか経験しておらず、他の世代と正しく比較することはできませんが、就活が早いなとは感じます。

就活エージェントからは「学部3年の7月現在に内定を承諾して就活を終えた人もいる」と急かされます。大学3年生の夏に、2年後入社する企業を決定し、経団連お墨付きの就活解禁である3月で一切就活を気にしないのは、歪でもあるように思います。

少子化の中で意識高い学生を世間知らずなまま獲得したい企業、卒業研究に専念するために就活は3年の早めに済ませてしまいたい学生。3年で内定を出せば、4年では内定者インターンと称して、正社員よりはるかに安い時給(場合によっては無償)で研修を済ませることもできます。様々な思惑が絡まっての早期化だと思います。

そんな環境で就活を進める身としては、事あるごとに「まだ社会のことなんて分からないよ、決めきれないよ」と思う事が多々あります。特に思うのが「就活の軸は?」という質問に対してです。

この質問は就活の文脈では鉄板で、就活エージェントはもちろん、カジュアル面談や本選考でも必ずと言っていいほど聞かれます。私は、事業会社、専門商社、コンサルファーム、メガベンチャーと幅広く志望しているため、毎度返答に窮します。選考であればポジショントークも必要ですのである程度一貫性のある企業を列挙するのですが、その必要のない就活エージェントには腹を割って話そうと、幅がある旨を伝えました。すると、「そのままだと膨大な数を受けることになるから、2日後までに絞ってこい」と要求されました。

この要求にかなり疑問が、もっと言ってしまえば不満が生じました。あちらの言い分としては「就活の軸を定めなければ、選択肢ごとに将来像が大きく異なるから」という理由です。それは事実だと思います。ですが、将来像を現段階で固定するのは本当にメリットなのでしょうか。

私が現在考える、「就活の軸」を定めるメリットは

①志望動機、業界理解、資格を使いまわせるので志望する企業を増やしても負荷が小さい。
②予め将来像が定まっている場合は、それを実現しやすい。
③就活の軸を定める過程で将来設計ができる。

といったところでしょうか。

①に関しては直接的なメリットだと思います。ですが、結局私が現在就活を進めている感覚だと、結局は企業個別の情報収集が、選考を通過する上でも自分との相性を考える上でも重要だと感じているので、あまり大差ない気もします。

②に関しては、これこそが本来の就活の軸が定まっているべき理由でしょう。ですがこれはあくまで将来像が定まっている人がそれにフィットした就活の軸を定めるべき理由であり、将来像が定まっていない私が就活の軸ありきで将来像を定めることにこのメリットはありません。

③が、一般的に就活の軸を定めるべき理由でしょう。ですが、これに関して疑問があります。「就活の軸を定める」と聞くと高尚な響きですが、実態的にはインターネットサーフィンしながら想像し、場合によっては適性診断という名の診断チャートに興じて、何となく相性の良い職種を探すだけです。定めてから就職しようが、定めながら就職しようが、定めきれずに就職しようが、いずれにせよ世間知らずの大学生が決めたことですし、大なり小なり想像とのギャップはあるはずです。結局信じられるのは血生臭いものだけで、この場合それは実務です。であるならば、猶予が最もある「興味のある多ジャンルの企業の選考を進めながら決定する」に魅力があります。業種は違えど入社した先で頑張りたいですし、頑張りたいと思える企業を志望しています。学生の私に専門性などありませんし、あったとしてもそこにこだわるのは可能性に蓋をしてしまうような気がします。

また、そのように就活の軸を定める事を勧められるからこそ、部署の違いや他の些末な違和感から退職するZ世代がいるのかもしれません。

私は、自身の将来像はあやふやかもしれませんが、テクノロジーで社会をハッピーにしたいという夢は一貫しています。第3次AIブームとシンギュラリティ、少子高齢化と円安による日本市場のシュリンク、激動の文脈で語られるこの時代に転職を伴う数十年スパンのライフプランを策定する事に疑問があります。転職でキャリアップと言いながら最初の就職先を決める事にも疑問です(これに関しては、転職をするほど就活エージェントが仲介で得をするというポジショントークもあるのでしょうが)。

とはいえこのように御託を並べたところで、客観的には私が有名企業を手当たり次第に受けるミーハー就活生であるという事実も、明後日に就活エージェントに就活の軸を説明しなければならないというタスクも変わりません。


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