『日本語の敬称”san”が世界基準になる日はそう遠くないだろう』は大分吹かし入ってる感(2022年6月時点)
■はじめに
―—という発言が1万RT超えてまして、自分の立場としてはタイトルの通りであり、以下はその理由説明ですので興味が満足された方はヘッダー画像の美味しい焼肉の写真をお土産にして回れ右してください。ソウルの肉典食堂 1号店のサムギョプサル(モクサル?)です。
■敬称"san"の使用状況
ということで"san"ですが、海外の友人などに尋ねた感じでは一切使われていない訳ではありません。どのタイミングで使うか、という質問に対して多かったお返事は「尊敬する日本人のクリエイターに対して」というもの。また海外の多くの友人と自分との会話において、何名かの方が「Hi New!」ではなくて「Hi New-san!」と自分を呼んで下さっているのですが、理由を尋ねると上記のような「日本語において、尊敬する相手にはsanという敬称を使うと学んだので」というお返事。よせやい、照れるじゃねぇか……(赤面)。
こういった日本語知識については、決して「日本が好きな日本オタク」の間だけの話では無いようで、例えば「子供の頃はイタリアから見て日本はエキゾチックな国で、知られている日本語は『サヨナラ』ぐらいだったけど、今では若者がアニメを見るのは普通のことだし、Netflixでアニメを見たらいくつかの日本語は頭に残るし」というお返事が印象に残りました。こういったインターネットの発達や動画配信パワーに加えて――
オオタニサンのようなSugoiスポーツ選手の活躍が日本語や日本文化の普及に一役買ってるのかな、と。アメリカでのハイチュウ人気のきっかけもそうですし。
結果、「自分が海外の人からメールを貰う時は、ほとんどが"(姓)+san"付だよ」という日本の方も居られてSugo-iと思いつついやいやそういう貴方は誰から見ても尊敬される日本人のクリエイター枠だから! とハイソな界隈における日本人相手の"san"人気はかなり高そうな気配です。
―—ということで"san"自体の知名度はかなり高いのですが(日本人の自分と交流する友人中心に質問しているというバイアスがあると思いますが)、浮かび上がってくるのは「オッ日本人やん、"san"使ったろ!」という限定状況下でのみ使用されているということ。日本人以外を対象に"san"を使う時があるという返事は無いに等しく、「厨な人だったら使うんじゃない?」「サムライごっこする時は使うかも」「日本人相手でもイヤな人だったら普通に "san"抜いて呼ぶ」と散々な感じ。そもそもメールでのやりとりにおいても「畏まりが必要な時はMr/Ms抜きの"Dear+名前"を使うし」とのアメリカ拠点の外資系企業勤務の友人談があり、英語ネイティブの表現縛りでも上手く性別判定を回避できる策があるようです。先程の、ほとんどが"(姓)+san"付メールSenseiも返事は"Dear+(名前)"を使っているとのことで汎用性がある手段なのでしょう。いやSan付けて返してあげんのかーい。そしてそこまで畏まらない場合でも"Hello+(名前)""Hi+(名前)"を使えばいいからというtipsもありつつ、そもそもMrやMsを普通に使ってるよ~、というお返事もアメリカから届きました。まぁ、考えたら野球選手相手に"san"を使うの、オオタニサン以外だとノウミサンしか該当ないですからね(言い過ぎ)。
それでは、これから"san"が日本関連のコミュニティ外に拡がっていく可能性はというと、「理屈自体は破綻はしてないけど、現実的には既存の慣習を上書きするほどの革新的なものは無い」と一刀両断。他にも「アメリカは保守的で変化を嫌う人が多いから広まらないんじゃない?」「Sanはイタリア語で「聖人」という意味になるので、真面目な時に使うとオモシロ度が高くなる」「自分のルーツはアメリカ国外にあるのですが、無関係な人が自分のルーツの文化を面白おかしく使うのは少し腹が立つので、同じことをしないようにしている」「東南アジアの母国を日中韓の人たちが見下しているのを見たりしてる身として、こういう日本語優位論はビミョーな気持ちになりますね」「それって…自国語の優位性のアピールのためにLGBTQがダシに使われてる、ってコト!?」と心温まるコメントを頂きました。なんかすみません……。
■まとめ
冒頭で引用させて頂いた投稿にて引用RTされていたこちらの事例ですが、2022年現在の英語インターネット圏の日本語知識において、"san"をお返事に使う状況は全く不自然ではありません。ただしそれは送信相手が日本人であった時の場合。それ以外の、日本や日本人と関りの薄いコミュンケーションにおいて、"san"を使う状況は、上述したオフザケや「会話中で日本の人を話題に出した時は、もしかしたらその日本の方に"san"を使うかもしれない」程度のもの。英文メールでの敬称は「Dear+(名前)」でオッケー。将来sanが日本語の重力圏を離れて飛び立つかというと、うーん……! 少なくとも私はそう状況把握と判断をしています。
■余談:高村武義さんについて
ここから先は余談で、記事冒頭で投稿を引用させて頂いた高村武義さんですが、過去に自説の論拠として捏造コラ画像を使い、今も投稿を削除していないという表現がフリーダムな方だったりします。また、Twitter上では半年に一度アメコミに対して雑な語りが行われ、アメコミに関わりある方やファンの方が総ツッコミをするインシデントが定期的に発生したりするのですが、高村さんが雑語り側に度々立たれては、Togetterまとめに華を添えて下さっています(例1 例2 例3)。とはいえ自分も海外の友人などに尋ねたと言っても、10名程度の方からの聞き取りでしかないので、これが絶対に正しい! と決して断言できません。ですが高村武義さんの発言に12000RTはさすがにビビり散らしてしまうので、思わずこの記事を書いてしまったという次第です。まぁ、日本語圏で日本人同士で交流する分には海外でどうこうといった話題はアニメやマンガの中の話をするみたいな感じで多少吹かしても害が少ないのかもしれませんが……個人的にはチョットハズカシイ。
■おまけ:韓国文化好き界隈の事例
K-POPや『イカゲーム』などの映像作品のヒットで全世界的に躍進目覚ましい韓国文化ですが、日本文化に伴って伝播していった日本語と同じように、韓国語を自国語の文章に取り入れてみている方も居られるようです。アイゴー!
また、日本語の「さん」に似た敬称として韓国語には「ssi(シ/씨)」が存在するので、韓国映画好きな方のTwitter投稿を拝見すると、上記引用の通り時折俳優さんの名前の後に「ssi」を付けられているのを目撃したりします。どんな人種・性別を問わずに”ssi”ですむので(多分)、重宝されてそうということで、これは日本語の"san"もうかうかしてられませんよ! がんばれがんばれ!
―—じゃなくて、別に日本語の"san"は特異な敬称じゃないということがこの事例で分かりますので、そう遠い日ではない内に世界基準になるかもしれないならもうちょっと理論武装してほしいなぁ、と思う次第でした。あなかしこあなかしこ。