お城のおそうじやさん #13
キャビネットにもクローゼットにも、
絵画の裏にも、魔法の杖はありませんでした。
「どこにあるのよ!」
目ぼしい隠し場所を全て調べ終えたカラの焦りは頂点に達していました。
「冷静になって」
カラは自分に言い聞かせます。
「大臣の気持ちになるのよ。
命の次に大事な魔法の杖。
自分が大臣だったらどこに隠す?
キャビネットやクローゼットじゃ捻りがない。
すぐに見つかってしまうじゃない。
ずる賢い大臣はそんなとこに隠さないわ。
それとレオノール女王が教えてくれたことを思い出して」
昨日カラは7-13の部屋の前に行き、
魔法の杖の特徴を女王から聞き出していました。
聞き出すといっても、
扉の下から部屋の中に紙を一枚すり込ませ、
そこに魔法の杖の特徴を書いてもらい、
再び扉の下から紙を戻してもらうという手法を使いました。
女王のからの情報は、
魔法の杖は細長く長さは30cmほど、
杖の根元には、大きな光り輝く宝石が飾り付けられている。
といったもので、簡単なイラストも描かれていました。
大きな宝石が付いていたらかなり目立つはず。
ならばどこに隠す?
カラは瞼を閉じ考えます。
どこに隠す?
誰にも見つからない隠し場所ってどこ?
探しやすい場所ではないはず、気づきにくい場所
何かを隠すような場所ではない場所
そして大きな宝石
光り輝く宝石
目立つその宝石を目立たなくさせる方法
カラは部屋の中を歩き回りながら考えをまとめます。
トントントン
扉を叩く音がしました。
「帰ってきた!」
カラの体が硬直します。
「カラ!聞こえる?魔法の杖はまだ?」
アビーの声です。
カラは扉の方に向かい答えます。
「まだ見つかってないの!」
「そう。でも、もう時間切れみたい!ヤヌー大臣が、、、」
「大臣がどうしたの?」
「今こっちに向かって来てる。もうこの階の廊下を歩いてきてるの!」
「どうして!まだ1時間経ってないのに。
でも、、もう少しで見つけられる気がするの。
アビー、なんとか足止めして!」
「そんなの無理よ!」
「お願いアビー。あと5分。5分あれば」
アビーのため息が扉越しにカラの耳に届きます
「5分よ。必ず5分したら部屋から出て!」
つづく