街を全力で楽しむ、プロのアーティスト!|せんがわ劇場のアウトリーチチーム「DEL」に出逢いました【PR】
東京都調布市にある、せんがわ劇場から、愉快な音楽が聴こえてきますーー
DEL
DEL
DEL
DEL
DEL
DEL
??????
DEL(デル)とは、ドラマ・エデュケーション・ラボ(Drama Education Lab)の略。せんがわ劇場演劇アウトリーチを担う講師陣の総称です。
「アウトリーチ」は、英語で「手を伸ばす」という意味。舞台芸術分野においては、劇場や劇団が、地域へ向けて演劇をひろめていく活動を、アウトリーチと呼んでいます。
冒頭の音楽も、DELのアウトリーチ活動の一つ。
仙川地域の魅力を、歌やダンスで、楽しく紹介しています。
メンバーは、せんがわ劇場演劇コンクールのファイナリストが中心となっており、在籍しているのは、40名以上のプロのアーティスト!
自身の創作活動に励みながら、小中学校や福祉施設への演劇ワークショップのファシリテートなど、DELでの活動も全力でたのしんでいる姿が、とても印象的です!
アーティストを惹きつける、せんがわ劇場のアウトリーチ活動の魅力について、DELメンバーの皆さんにお話を伺いました。
◆ 5名のDELメンバーに参加いただきました!
(※大原渉平さんは今夏より参加予定)
佐川 大輔(さがわ だいすけ)
THEATRE MOMENTS(シアターモーメンツ)主宰・演出家・俳優。第4回(2013)せんがわ劇場演劇コンクールにおいて、グランプリ・オーディエンス賞・演出賞と、トリプル受賞を果たす。せんがわ劇場演劇事業ディレクターチームのチーフディレクターとして、劇場運営にも関わっている。
櫻井 拓見(さくらい たくみ)
chon-muop(チョンモップ)主宰・演出家・劇作家・俳優。第1回(2010)と第6回(2015)のせんがわ劇場演劇コンクールに参加し、第6回では俳優賞を受賞している。佐川と同じく、せんがわ劇場演劇事業ディレクターチームのメンバーとして、劇場運営にも関わっている。
松田 文(まつだ あや)
イマカラメガネ主宰・演出家・劇作家。第5回(2014)せんがわ劇場演劇コンクールでオーディエンス賞を受賞。大学でも演劇教育の授業を担当している。
星 善之(ほし よしゆき)
ほしぷろ主宰・演出家・俳優。第12回(2022)せんがわ劇場演劇コンクールで、演出家賞と俳優賞を受賞。福島の出身で、現在は福島と東京の2拠点で活動中。
大原 渉平(おおはら しょうへい)
劇団しようよ主宰・演出家・劇作家。第6回(2015)せんがわ劇場演劇コンクールでオーディエンス賞を受賞。今年の夏よりDELに参加予定。
DELのはじまり「ぺしゃんこになります(笑)。」
ーー本日はよろしくお願いします!さっそくですが、皆さんは、せんがわ劇場演劇コンクールへの出場をきっかけに、DELに参加されているんですね。
櫻井:実は私は、せんがわ劇場のこけら落とし公演「せんがわ劇場アンサンブル0番目企画『時の物置』」に俳優として出演していたので、劇場とは、演劇コンクールの始まるもっと前から関わりがありました。
佐川:私はコンクールの出場がきっかけです。参加当時、このコンクールで結果を残せなかったら、演劇を辞めようと思っていたんです。それまであまり社会的に評価されていなかったので……。しかし、3つの賞をいただくことができました。それだけの想いがのっていたからこそ、いい作品ができたのかもしれません。ご縁に恵まれた劇場なので、これからも関わり続けようと思いました。私が参加した第4回のコンクールの後から、出場したアーティストにアウトリーチ活動に関わってもらおう、という流れが動き始めたんですよね。
櫻井:DELの前身は「アウトリーチラボ」という名前でした。組織というより、ゆるやかなチーム活動ですね。
佐川:アーティストたちが自主的に始めたチームです。コンクールを重ねるごとにメンバーが増えていくので、互いに交流をしたり、スキルを共有する場が必要だという理由から始まりました。それが後々、DELという名前で、組織として機能するようになっていきます。
松田:私がアウトリーチ活動に関わり始めたのも「アウトリーチラボ」の頃です。アウトリーチは全く知らない分野でしたが「誘われたし、やってみるかぁ」という、ふとした想いから参加を決めました。演劇アウトリーチは、芸術的な高みを目指す創作ではなく、演劇を使ってコミュニケーション力を高めたり、想像力を養ったりする学術分野です。演劇をやっていない人へ、どのように楽しんでもらうかをもっと追及したいと思うようになり、今はアウトリーチ活動が、私の生活の中心となっています。
星:私はDELメンバーではありますが、実際の活動にはまだ参加できていません。アウトリーチ活動としては、取手アートプロジェクトにも参加しています。
大原:私は、今年の夏からDELメンバーになります。主宰を務める「劇団しようよ」は、京都の劇団なのですが、先日調布に引っ越してきました!今は2拠点で活動しています。
20代の頃からアウトリーチ活動には興味があり、学校で演劇のワークショップをしたこともありましたが、どこかもやもや感がありました。自分の創作すら上手くできていないのに、演劇を教える立場になっていいのだろうか……という矛盾を感じていたんです。しかし、歳を重ねて30代をむかえ、肩の力が抜けてきました。様々な経験を経て、人と喋るのも好きになってきたんですよね!自分をさらけ出してコミュニケーションを取っていったら良いような気がして、改めてアウトリーチ活動に参加したいと思うようになりました。
ーー櫻井さんと佐川さんは、初期のアウトリーチから関わっていらっしゃるんですね。最初はどんな活動をされていましたか?
佐川:本格的な最初のアウトリーチは、中学校でのワークショップでした。1クラス30から40人の学校で、計5クラスを担当します。アーティストは1クラスに3人ずつ入るので、合計で15人。2時間×3日間のコミュニケーションワークショップを開催しました。創作で培った技術だけでは歯が立たなかったね……。
櫻井:ぺしゃんこになります(笑)。
ーーぺしゃんこですか……!?
佐川:予定通りにワークショップを進行するのがとても難しかったです。振り返ってみれば中学生は多感な時期で、小学生だったら面白がってもらえるワークショップも、中学生だと恥ずかしさなどでやりたくない気持ちが優先されてしまったのかもしれません。ワークショップの進め方をグループでもっと勉強するようになりました。
ーーこちらは最近の活動ですね。
松田:これは佐川さんを中心に、私はアシスタントとして他2名の方と一緒に行きました。
佐川:会場は、世代を問わず地域の人たちが自由に集まることのできるスペースでした。30人定員のところ40人も集まってくれて!世代も、未就学児~中学生と幅が広く……とっても大変でした(笑)!
”静止画で止まるワーク”では、お題に合わせて各々にポーズをとってもらったんです。”先生と生徒”というお題のときは、怒っている先生もいれば、優しい表情の先生もいました。さらに、生徒側には不良もいたりして。それぞれの表現が豊かで面白かったです。会場中がワーッと賑やかな雰囲気でした。
松田:小さい子たちだけでなく、中学生も、歳下の子供たちの面倒をみているうちに場の雰囲気にのってきてくれて……皆でいい時間を過ごすことができました。
ーーチラシもDELの皆さんが作成を?
佐川:これは劇場職員の方が作成してくれました。依頼を受けるまでや、それまでの調整は職員さんに担っていただき、僕らDELのメンバーは、ワークショップの内容を丁寧に準備します。職員の皆さんとは、うまく役割分担ができています。
認定プログラムで、共通イメージを
ーーDELのメンバーになるには、認定プログラムの受講が必要なんですよね……?
佐川:はい、メンバーになる予定の皆さん全員に、事前の認定プログラムを受講していただいています。星さんは最近受けたよね。
星:はい、大変な講座でした……!たのしい意味で「きつかったぁ!」と感じています(笑)。
講師陣から、これまで行ってきたアウトリーチ活動について説明を受けた後、課題として、ワークショップのプログラムをつくりました。初日に発表した内容をその日のうちにブラッシュアップして、次の日に再発表し、フィードバックをもらいます。2日間で合計9時間の講座ですが、帰宅後にブラッシュアップをする時間を含めると、丸1日の合宿状態。たくさん頭を使いました。
佐川:講師陣は、DELのメンバーのなかでも、せんがわのアウトリーチをある程度経験している人に担当してもらいます。時代に沿った配慮であったり、アウトリーチを進行するうえでの細かなところを一緒に気にしていきます。「こうしなきゃいけない」といったルールを教えるのではなく「どうやったらできるか」を皆で考えていく場を目指しています。
松田:受講したときのことを思い出しました!私が課題で作成したワークショップのプログラムには「各自が椅子を持って輪をつくり、座る」という進行を組んでいたんです。課題の発表中に「参加者は名札を持っています」と発言したところ、講師陣から「その椅子はいつ並べる?誰が並べる?名札は用意する?学校にお願いする?劇場にお願いする?決めてください。」と聞かれて、ドキッとしました。ああ、アウトリーチでは、アーティストはただワークショップをやればいいのではなく、運営面も同時に考える必要があるのかぁ……と勉強になりました。
星:現場でのトライ&エラーを繰り返している講師陣は、細かいところによく気がつきます。アウトリーチに正解はないということを、前もって知ることのできる、いい講座だと思いました。
創作とアウトリーチの距離感
ーー大原さんは、これからDELに参加されますが、メンバーのエピソードを聞いていて、いかがですか。
大原:皆さんにひとつ聞きたいことがあります!同じ演劇という括りのなかで、自身の創作活動に対する想いと、アウトリーチを楽しむ想いには、どういった距離感をもっていますか。
櫻井:私は、ワークショップで子どもたちと一緒に何かをつくっているときに、自分の創作で稽古をしているときと、似た楽しみを感じています。何かが生まれているぞ!という”過程の楽しみ”です。
佐川:私は、創作もアウトリーチも、「どう感じてもらいたいか」という点で、距離感の近いものだと考えています。創作は「お客さんにどんな影響を与えたいか」を考えながら取り組んでいます。一方、アウトリーチも「参加者の人にどう体験的に気づきをもってもらえるか?」をイメージしながら進行しています。アウトリーチのほうが、演劇に馴染みのない参加者の皆さんを巻き込んでいく難しさがありますが、創作よりもその場の即応性が重要なので、面白いなと感じるところです。
松田:自分は創作とアウトリーチは切り離して考えていました。創作ではコメディ作品をつくっていたので、笑いの質を揃えるためには、アウトリーチのワークショップのように他の意見を取り入れることが難しかったんです。ワークショップでは、私の意志は関係なく、自由につくってもらっています。どちらにも楽しさがあります。
星:自分の創作でも、アウトリーチでも、どうしたら観客や参加者の皆さんが楽しんでもらえるかを考えているので、ここはふたつの距離が近いなと思っています。
DELがつなぎつづける”輪”
ーーさいごに、これからのDELの展望について、お聞かせください。
佐川:日本では「演劇創作」と「応用演劇」の分野の垣根は高い気がしていて、この双方ができる人材はまだ少ないと思うんです。この双方に対応できるハイブリッド演劇人を輩出するモデルケースにDELがなったらいいですね。将来的には、DELで出会った演劇人同士が創作面でも刺激し合い、調布市も超え、日本中で活躍する。こうして、せんがわ劇場から日本中に「アウトリーチ」をして、舞台芸術とか表現がもっと身近になる社会ができればいいなと。
櫻井:アウトリーチ先の子どもが演劇のたのしさを知ったり、劇場でのワークショップにはじめて参加した子どもがその後オーディションを受けに来たり、DELにいるとそういう豊かな循環を目の当たりにできます。子どもや地域と、私たちアーティストがつながる場所として、DELというチームはとても貴重です。これからも様々な人々を受け入れる場所としての劇場、それを支えるDELであり続けられたら、と願います。
松田:アーティストが公共劇場の運営の一端を、劇場職員の方々と一緒にやっていく機会なんて、そうそう得られないと感じています。公が動けばより多くの人たちに演劇アウトリーチ活動に参加してもらえるのではないかと期待しています。そのためにDELとしてできることを探していきたいです。
星:コロナ禍も少しずつ明けていく中で、今度は関わった学生たちに劇場へ足を運んでいただけるような機会をDELメンバーとして主体的に企画していきたいと考えています。
教室に足を運んだ私たちに会いに劇場という非日常の空間に足を運んでもらう。行ったり来たりをし合う企画を立ち上げていきたいです。
人と場所をつなぐ。それができるのは、同じ志を持つ人たちが集まったDELなのではないか、と感じています。
大原:演劇を好きになって、嫌いになって、愛し続けて、愛想尽かされて、疲れ果てて、尽くし続けて。それでもずっと演劇に焦がれて。
なんて、演劇との距離の取り方が下手な僕は、ずっとずっと、彷徨うように、表現活動に執着しています。
もう一度。僕にだって、演劇で何かできるんじゃないか。そんなことをDELに期待したいです。
自分だけで完結しない、楽しくて、愉快で、朗らかで、深く、切実で、広い、演劇の輪を、DELでは探究したいです。
DELのアーティストたちは、自身の創作活動のなかに、ゆるやかにアウトリーチの活動が、つながっています。
座談会の最後に、佐川さんが、せんがわの魅力についてひと言ーー
仙川駅を降りると、春には綺麗な桜の花を咲かせる木が、私たちを迎えてくれます。
美味しいご飯屋さんの並ぶ通りを歩きながら、
あっという間に、劇場へ到着。
せんがわを訪れたアーティストが、
せんがわの街に惹かれ、
せんがわに演劇を、豊かにひろげていく。
DELの皆さん、せんがわでのアウトリーチについて話すときの笑顔がキラキラしていて、とってもかっこいいんです。
ぜひ、せんがわで、せんがわ劇場で。DELに出逢ってください!!
取材・構成・文 臼田菜南、成島秀和
★ せんがわ劇場でまもなく開幕する演劇公演
第12回せんがわ劇場演劇コンクール オーディエンス賞受賞公演
安住の地「いきてるみ」
2023年5月26日(金) 〜 2023年5月28日(日)
第12回せんがわ劇場演劇コンクール グランプリ受賞公演
缶々の階「だから君はここにいるのか【舞台編】【客席編】」
2023年5月31日(水) 〜 2023年6月4日(日)
◎Twitter「せんがわ劇場【受賞記念公演】応援アカウント」
第12回せんがわ劇場演劇コンクールオーディエンス賞「安住の地」、グランプリ賞「缶々の階」の情報をお届けするアカウントです。ときどき、せんがわ劇場周辺のオススメの飲食店もご紹介。このアカウントをフォローすると、受賞記念公演を1000倍楽しめます!!
★せんがわ劇場演劇コンクール受賞記念公演を観劇する前にーー
おちらしさんWEBでは、演劇界のコンテスト事業について取材した記事を公開中!財団や県の担当者による座談会を実施しました。DELのメンバーが出場経験のある「せんがわ劇場演劇コンクール」についても特集しています。
16,300名の舞台・美術ファンにお届け中!「おちらしさん」への会員登録もお待ちしています! おちらしさんとは⇒https://note.com/nevula_prise/n/n4ed071575525