美味しく味わう、観劇体験。| 吉祥寺シアター併設カフェ「吉祥なおきち」【#ゲキメシ】
これは、幽霊のとじこめられている珈琲です。
珈琲のなかに、幽霊。
幽霊珈琲。
幽霊の正体は一体……!?
こんにちは!おちらしさんスタッフの臼田です。おちらしさんラジオのパーソナリティ、ななみんでもあります!そして、「#ゲキメシ」Instagramの更新担当でもありますっ!
「#ゲキメシ」Instagramでは、観劇前後に食べたい、おすすめのごはん屋さんをご紹介しています。
さて…冒頭で登場しました、幽霊珈琲。このユニークなメニューを出されているのは、以前「#ゲキメシ」Instagramでもご紹介しました、こちらのお店。皆さまはご存じでしょうか……?
★シアターカフェ「吉祥なおきち」
吉祥寺駅から徒歩5分ほど歩いたところにある、吉祥寺シアター内に併設されたカフェ「吉祥なおきち」。木の温もりを基調とした内装は、とても落ち着く空間です。角が可愛いソフトクリームや特製チャイなど、身体に優しい、ほっとする美味しいメニューが揃っています。
こちらのカフェの大きな魅力の1つが、劇団との「コラボメニュー」。吉祥寺シアターで上演する公演で、上演内容にあったメニューを企画・提供されています。幽霊珈琲も、そのひとつ。
私がこのコラボメニュー企画を知ったきっかけは、おちらしさんラジオでご紹介した、円盤に乗る派『仮想的な失調』を観劇したときのことです。
狂言「名取川」と、能「船弁慶」を現代に語り直し上演された観劇体験は、幽霊が客席の周りをさまよっているような、空間に惹きこまれる強い引力を感じ、心が熱くなりました。
その心の熱さを、幽霊珈琲がさらに盛り上げてくれたのです!
珈琲のなかにとじこめられた幽霊は、まるで客席の周りをさまよっているように感じた、あの幽霊のよう。優しい甘さに癒されながら、一緒に観劇した友人と、観劇後の考察会で盛り上がり、楽しい時間を過ごしました。
「幽霊珈琲」の美味しさと、観劇体験に寄り添う優しさ溢れる企画への感動を、吉祥なおきちの皆さまにお伝えしたところ、「ありがとうございます!コラボメニューは始めて15回になります!」とお返事が……!「15回」という回数の多さに驚いた私は、これまでのコラボメニューについてお話を伺いたく、インタビューへ行ってまいりました!
■そっと、「レモンやきそば」から。
お話をお聞きしたのは、「吉祥なおきち」店長の矢野朱美さん。お店がオープンした2019年4月から、店長として働かれています。
矢野さん「西東京市の田無で喫茶店を始めたのが、私たちの始まりです。吉祥寺シアター内でのお店のオープンにあたり募集があり、立候補をして、13社ほどのなかから選ばれました。劇場に併設したカフェであること、そして、オーナー(佐藤うららさん)も演劇が好きなので、『演劇に特化したもの』というテーマでコラボができたら面白いのではと思い、企画を始めました。」
「吉祥なおきち」は株式会社にわと蔵の店舗のひとつ。吉祥寺の他に、多摩六都科学館内や田無に店舗があり、同じく田無にある田無神社では、珈琲屋台(キッチンカー)を出されています。
最初にコラボメニューを企画したのは、プレオープンの期間。MONO 第46回公演『はなにら』上演にあわせ、「レモンやきそば」をつくられたそうです。
矢野さん「プレオープン期間だったこともあり最初は右も左も分からず……。劇中でレモンやきそばが出てくることを知り、勝手にコラボをしていました。MONOさんも、『なんか隣のカフェがレモンやきそば、やっているらしいよ』と、情報をふんわりと知っていた程度だったと思います。」
しかしその後、MONOの皆さんが吉祥なおきちでお弁当をオーダーされるようになり、なおきちのスタッフさんはいつも、そのお弁当の中に、思い出のレモンやきそばをそっと、おかずにいれているそうです!
食べ物を通して、深い優しさで「公演団体」と「飲食店」が繋がり続けている……。非常に素敵なお話ですよね。レモンやきそばをそっと添え続けていた優しい心遣いに、MONO代表の土田英生さんは、気づいていらしたとか……!
■ひとつ、ひとつが、オリジナル。
このあとも、ひとつずつ、全15回のコラボメニューについてお話を伺います!特に印象的だった3つのメニューについて。
①阿佐ヶ谷スパイダーズ『桜姫』
コラボメニュー : 桜姫遥時超又蒼逢瀬 / 志甫梅干圦梅醤番茶冥土梅直吉 健康ごはん
矢野さん「このときは公演期間も長く、結構力を入れました。稽古場の屋上で女優の志甫さん自ら作っていらした梅干しをおにぎりにして提供したり、内容に沿ったアルコールのカクテルなども企画しました。劇場ロビーは上演に合わせ、ライトに赤いフィルムを巻いたり、吹き抜けも装飾されています。そこからカフェ内でも、写真展をしたり、音楽を変えてみたり……。カフェ含む、劇場全てが桜姫一色でした!」
カフェからの提案だけでなく、公演団体も一緒になって、メニューについての熱い話し合いがなされたことで生まれた、劇場空間もたっぷり楽しめるコラボ企画ですね!当時の様子は、動画でも紹介されています。
②劇壇ガルバ『THE PRICE』
コラボメニュー : ソロモン氏のウィンターコーヒー / GALBA特別セット
矢野さん「このガルバさんのコラボメニューで、初めて制作さんからコラボやりたいです!と連絡がありました!これまでのコラボは、吉祥寺シアターさんを通してやり取りをしていたので、今回は吉祥寺シアターさんの了承をいただいてから、ガルバ制作の皆さんとメニュー開発がはじまりました。最初はドリンクのみの予定でしたが、アイデアが次々と生まれ、旗やランチョンマットもつくりました!公演初日の1週間はきっていましたね……!ぎりぎりまで、こだわりました。」
コラボメニューを始めてまもない頃は、公演初日までにメニューの存在がなかなか周知されず、オーダーが無い状況が続いていたのだそう。
しかし継続的にコラボ企画を続けられたことで知られるようになり、最近ではコラボメニューを食べたい!という目的から、公演初日にいらっしゃるお客さまも増えたそうです!
③円盤に乗る派『仮想的な失調』
コラボメニュー : 幽霊珈琲
そして!冒頭でもお話ししました、幽霊珈琲。
とじこめられた幽霊の正体は、白いブラマンジェでした!
「円盤に乗る派」とのコラボメニューは、この回で2度目。「2回目3回目と、いらしたときに、また交流が生まれるのは嬉しいです!」と、矢野さんは笑顔でお話しされていました。
■「あるもので、つくる。」
毎回、公演に細やかに寄り添ったコラボメニューを企画されています。準備にはじっくり時間をかけているのではないか……と、思いませんか?
なんと、準備期間、1週間もないそうです!
コラボメニューは、上演台本を読んだり、ゲネプロを観てから検討を始められるようで、特にゲネプロを観てからメニューを企画するとなると、その期間は1週間をきっています。ゲネプロとは、衣裳や音楽も全て含めた最終リハーサルのことで、公演初日の直前に行われるからです。
短い期間で公演にあったメニューをつくるためには、素材を多くのお店から調達しているのではないか、と思うかもしれませんが、
「吉祥なおきち」では、コラボ企画に関して、あるひとつの決め事を設けていらっしゃいます。
矢野さん「『あるもので、つくる』をルールにしています。コラボメニューのためだけに特別な費用はかけません。必要な素材を用意するのは簡単だけれど、素材が無いなかでどう工夫するか。それを大切にしています。難しいけれど、楽しい時間です。」
「素材が無いなかで、どう工夫するか」
実はこの「工夫」は、舞台に関わる照明さんや音響さんなども、同じことをしています。
例えば照明さんは、実際の照明をつくっていくのに動き出すのは、公演1週間程前の通し稽古の頃から。実際に役者さんがどういうスピードで、どう動くのかが分かってくることで、準備が進みます。時間も限られているので、限られた機材で、最大限の準備をされているのです。
吉祥なおきちの皆さまも、ゲネプロを観た後、限られた素材で、舞台に心から寄り沿ったメニューをつくられています。照明さんや音響さんと、同じ。その舞台を無事に上演するための大切なメンバーであり、ご飯部門のプロフェッショナルなのです!
■「吉祥なおきち」に溢れる笑顔
お話を聞いていて特に印象的だったのが、矢野さんを始め、スタッフの皆さんの明るい笑顔!
日常生活で立ち寄られるお客さまには「またどうぞ。」
これから吉祥寺シアターへ観劇に行くお客さまには「いってらっしゃい。」
カフェに集う全員に対して、優しい笑顔で接してくださる。このあたたかさが、コラボメニュー企画を15回も実現できている理由なのだと、思います。コラボメニューはこれからも続けられるそうです。ぜひ、吉祥寺で観劇の際は、足を運んでみてくださいね。
写真:おちらしさんスタッフ・望月
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■差し入れサービス「さしーれ」
ちなみに……!吉祥なおきちでは、コラボメニューに留まらず、差し入れサービス「さしーれ」を実施されているのも大きな特徴!!
贈りたい側が「さしーれ」メニューを選び、購入します。贈られる側は、チケットとして「さしーれ」を受け取るので、いつでも好きなときにお店に行くことができます。オンラインでも購入できるので、遠く離れていても、大丈夫。珈琲1杯から贈れますよ。
「さしーれ」チケットは、観劇チケットを思わせる、素敵なデザイン!
全席自由/テイクアウト可・・・
営業時間は開演時間・・・
メニュータイトルは公演名・・・
使用後の半券を、観劇チケットのようにとっておかれる方もいらっしゃるそうです。
コラボメニューとあわせて、「さしーれ」もぜひ、利用してみてはいかがでしょうか。