くによし組・國吉咲貴×シアタートラム・ネクストジェネレーション インタビュー
数々の演劇人を輩出してきた、演劇界の若手登竜門のひとつ『シアタートラム・ネクストジェネレーション』。2024年度に選出されたのは、ユニークなモチーフを卓越した執筆力で描く団体『くによし組』です。
今回は、くによし組の作・演出の國吉咲貴さんにご自身のことをお話しいただくとともに、『シアタートラム・ネクストジェネレーション』プロデューサーの大下玲美さんにお話をお伺いしました。
國吉さんについて
――國吉さんがはじめて演劇にふれたのはいつですか?
國吉 小学校のときの、年に一度来てくれていた旅回り一座の演目です。それがすごく面白くて。一人の役者さんの役が次々と変わっていくお芝居で、登場人物がいっぱい出ていたなあと思ったのに、カーテンコールで役者さんが出てきて挨拶したときに、たった3人しか出ていなかったという驚きがあって。そういう、演劇でしか味わえないような衝撃を小学校のときに味わって、そこから演劇が気になっていました。
――演劇活動に関わりはじめたのは?
國吉 20歳になった時に、このままやらないと後悔しそうだなと思って。小劇場って出演者を募集していたりするので、ワークショップや出演者募集に応募してという経緯です。そこから書いたり演出したり、作品をつくる方にも興味を持つようになりました。
――はじめて書いた作品のことを教えていただきたいです。
國吉 何をやっているのか伝わりづらいジャンルを選択して「分からない」と言われるのは悲しいなと思ったので、多くのお客さんに分かるようなコメディを作ろうと決めて、書き始めました。ちゃんと笑って帰ってもらえるようなものを作りたいなって思っていたのですが、自分の書きたいことを入れていったらどんどん暗くなってしまって・・・。
――どんなお話だったのでしょうか?
國吉 ゾンビが出てくるコメディです。なんかいきなり「ゾンビにしよう!」と思い立って。主人公の男の子は不登校なのですが、その理由が実は外にゾンビがいるからで、『不登校ってすごいネガティブだけど、どうせ外にはゾンビがいて家からは出られないからよかった』と思っているという、そんなお話でした。
――そこから、今の作風に至るまでの転換点がありましたら、教えていただけますか?
國吉 はっきりした転換点はないかもしれません。お客さんに感想をいただくたびに、「私の作品はこう見えているんだ」という驚きがあって、それは例えば、コメディだと思って作っているものに「怖かった」という感想をいただいたり、誰にも伝わらないだろうなって思ったものに「私のことだと思った」という感想をいただいたりということなのですが。
そこから、「誰か」のために深く刺さるようなものを作ったら、いつかは伝わって欲しい人には伝わるのかもしれないという気持ちが膨らんでいって、書き始めるときに「誰か」を設定するようになりました。「万人受けを考えたら、こう書かない方がいいんだろうな」と思うことはあったのですが、この人に見てほしいなという部分を消さないで作り続けていたら、どんどん歪んでいきました。
――どんどん歪んでいったというのは?
國吉 自分の作品が、人間の綺麗な部分とか物語の綺麗さを書いていないなということを常々思っています。今回の『ケレン・ヘラー』も、主役の女の子が壊れていってしまうお話なのですが、そういう、壊れてしまうことに対して、「それだけ一生懸命生きていて壊れてしまったのなら美しいかもしれない」と私は思っていて、そういう感覚が、歪んでいるかもしれないと思っています。
――「誰か」のためにというお話があったのですが、國吉さんの中で、その「誰か」は、決まっている方を思い浮かべているのですか?
國吉 そうですね。作品ごとに、見てほしいなという人がいます。近しい関係の人、SNS上でしかやり取りしたことない人、新聞の投稿欄で見かけた悩みを書いていた方など、いろんな方を思い浮かべています。
――今回の作品も、誰に向けてというものがあるのでしょうか?
國吉 はい、昔の知り合いを思い浮かべています。初演のときとは別の方なのですが、それは初演時の台本を読み直した時に、今回はこういう書き方をするからあの人に見てほしいなと、変わりました。
『ケレン・ヘラー』について
――初演の執筆時のことを教えてください。
國吉 『ケレン・ヘラー』は悲しいお話ではあるのですが、悲劇にはしたくなかったんです。頑張って楽しく生きようとしているけれど、不器用で下手くそだから壊れてしまうような流れにしたかったので、書くときもポップに明るく可愛く書こうとしていて。ただ、どうしても物語が悲しい方に落ちていくので、どうやったら対抗できるだろうかと考え続けていました。
――再演にあたり、「面白いはどこまで許されるのか」から「盲目なのは誰か」へとテーマを変更した理由を教えてください。
國吉 初演は主役の子が「面白いと不謹慎の境界線」がわからなくなり、どんどん壊れていく、その主役の子が壊れていくということを一生懸命作ろうとしていたのですが、読み直した時に、壊れていくのは、それを求めている人たちがいて、過激になっていくから壊れてしまうのだろうなと思いました。主役の子だけの問題ではなくて、周りを巻き込んだ問題にしたいと思い、テーマを変えて書き直すことにしました。
――書き直しをされている中で、今、考えていることを教えていただけますか?
國吉 お客さんに、物語として楽しいなと思ってもらいながらも、ハッとするようなところをつくるという、そのバランスにはひきつづき気をつけています。説教っぽくならないようにしたいというのはあって、主役の子たちの物語を追っていたらいつの間にかそうなったというようなテーマの描きかたができたらと思っています。また、「何を不謹慎と思うか」の感覚は、2018年とは大きく変わっていると思っていて、初稿時のセリフだと、今、聞いたら傷つく人がいると感じたところは、変えるようにしています。
シアタートラム・ネクストジェネレーションについて
――シアタートラム・ネクストジェネレーションのプロデューサー、大下さんにもお伺いさせてください。以前、ネクストジェネレーションに登場される団体の方には、シアタートラムで上演するためアドバイスをされているとお伺いしたのですが、今回はどのような関わり方をされているのでしょうか?
大下 くによし組は専属の制作スタッフがいらっしゃらなかったので、今回は制作全般をお手伝いしています。キャスティングも一緒にやりました。
國吉さんに、「どんな人とやってみたいですか?」「こういう人もいますよ」と提案するところから、オファーのお手伝いもしました。また、照明や美術、ビジュアルのデザイナーも提案させていただきました。カンパニーにとって、スタッフィングやキャスティングの今後の選択肢が増えるといいと思っています。
――ネクストジェネレーション以降のことを考えていらっしゃるのですね。
大下 団体として次のステージに上がっていくとか、可能性がより広がるようにということを大切にしているので、それまでの団体のキャスティングよりも挑戦があり、視野を広げるような選び方を心掛けています。同時に、いわゆる劇団らしさや小劇場らしさというところも大事だと思っているんです。ちょうど良いチャレンジができるぐらいのところでやっていかないと、ネクストジェネレーションという場をうまく使いこなせなくなってしまって、本末転倒になってしまいますから。
――広報面に関してのこともお伺いできますか?
大下 「くによし組が今回のネクストジェネレーションでボリュームアップ、スケールアップしたな」と、見えるように宣伝しています。
作品をプロデュースするときには「この作品はちょっと見とかないといけないな」と思ってもらえるように宣伝していこうということを考えるのですが、今回のくによし組に関しても、「必見だな」という空気感を作れたらと思い、挑戦としてビジュアルに写真を使ってみませんかという提案をしました。
――大下さんから見て、國吉さんはどのような方ですか?
大下 次にくによし組さんが公演をうつときに、今回よりも力強くなっているといいなと思って関わっているのですが、今、國吉さんは確実に飛躍すると感じます。筆の力が強いですし、演出家として判断をされているときでも客観性がある。今後、羽ばたいていくに違いない、とても面白い存在だなと思っています。
今回、スタッフ・キャストにオファーするときも、國吉さんの本をお読みになられて、ご快諾ばかりでした。國吉さんの本を読めば面白いと感じていただける自信もありました。
――國吉さんにとって、大下さんはどんな存在ですか?
國吉 めちゃくちゃ心強くて、困ったら大下さんに連絡すれば何とかなると思って安心しています。このキャスト、スタッフでやれるんだということも、すごくワクワクしています。
――國吉さんは、今、ドラマなどにも引っ張りだこだと思うのですが、國吉さんが思う、演劇だからこそできる面白いことはなんだと思いますか?
國吉 演劇って、脚本と役者さんと明かりと音と、全部みんなで力を合わせてないとできないっていうもので、それは大変なのですが、すごく楽しい。合体してより楽しくなるというのが私は好きです。
劇場で見たときに生で感じられるのが楽しいなと思うところと、お客さんの想像力をお借りできないと完成しないところがあって。お客さんと作り手と力を合わせてやっと成り立つエンターテイメントというのは舞台だけなのかなと思うので、それが楽しい、面白いです。
――最後に、今回のネクストジェネレーションという機会を経て、何かこうしていきたいというような野望を教えていただけますか?
國吉 ずっと舞台をやっていきたいと思っています。今回の作品を見ていただいて、声をかけてほしいなと思います。舞台のお仕事、作・演出のお仕事がしたいです!!!!!
取材日 2024年11月6日
インタビュー・文 成島秀和
公演情報
シアタートラム・ネクストジェネレーションvol.16 ―演劇―
くによし組『ケレン・ヘラー』
日程:2024年12月19日(木)~2024年12月22日(日)
会場:シアタートラム
【作・演出】國吉咲貴
【出演】
中井千聖 名村辰 大場みなみ
花戸祐介 佐藤有里子 てっぺい右利き 柿原寛子 谷川清夏 永井一信
【美術】平山正太郎
【照明】横原由祐
【音響】深澤大青
【舞台監督】本郷剛史
【宣伝美術】相澤千晶
【宣伝写真】阪野貴也
【宣伝ヘアメイク】YOSHi.T
【世田谷パブリックシアター芸術監督】白井晃
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