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古都鎌倉から、日本画はエモい。というお話し。

こんにちは、昨年より鎌倉在住のよしやまです。引っ越して以来ずっと気になっていた「鏑木清方記念美術館」にいってきました。日本画(美人画)の幽玄の裏には、青春・恋愛・ノスタルジーという、アニメのようなエモさが隠されていたなあ、としみじみ感じ入ったというレポートです。

おちらしさん会員の皆さんは、美術版12月号でお届けした「鏑木清方展」(東京国立近代美術館)のチラシもご覧いただいたかと思います。画伯の終焉の地、旧居跡に建てられたのが、同美術館なんです。

そこは、観光客にぎわう(駅前の)小町通りから1本路地に入っただけの場所にあるのですが、閑静な住宅地の中に、和風建物が端正なたたずまいをみせています。入口前後の竹垣や、杉皮垣も見どころで、凛とした空気に背筋が伸びる気がします。

見事な杉皮の垣根。古都鎌倉でもなかなか見かけない。

さて伺ったのは、現在実施中(~2/27)の企画展「うつくしきひと。~清方のまなざし~」

鏑木清方は、明治、大正、昭和と、生涯をとおし女性の美を描きました。街で見かけた婦人、芝居の観客、歌舞伎の女形、ともに暮す妻や娘たち——清方のまなざしがとらえた姿は、写生帖や記憶に残され、制作の礎となりました(公式HPより)

私が心惹かれたのは、展示されていた『下絵』でした。掛け軸の図柄になったであろう、美人画のスケッチ。朱でラフな線を引き、その上に墨で形を整えていった筆跡がはっきりと分かります。それがなんと、アニメのセル画(の下書き)のように見えてくるのです!

同美術館の過去の企画展チラシより(公式サイトより引用)

「これ、ビフォーアフターで見たいな」と思っていたら、ありましたありました。展示の導線中盤に配置された、幅広の引き出し(!)の中には、下絵と完成した作品が、並べて展示してありました。

なるほど、完成した日本画は、目元・襟元涼やかで、『一瞬の美を、絵の中に閉じ込めました』と言わんばかりの幽玄さ。本能的な恐ろしさすらも感じます。幼いころ、初めて能面を曾祖母の寝室で見たときのような。

はたして下絵の方は。モデルとなった女性の恥じらいや、うきうきとした、庶民の生活の賑やかさに、目が釘付けになります。まったく幽玄じゃないです。ポップです。私の頭の中では、ついさっきまで鹿威しがかっこーんとなっていたのですが、急にドラマの主題歌めいた音楽が鳴りだしました!

のりのりで見つめていると、絵の中の女性たちが動き出し、こちらを見つめ、話しかけてくる気配さえ感じられます。ああ、なまめかしい女性たちへの羨望や懐かしさ。そこはかとないエロス、センチメンタルに襲われるこの感じ・・・。誤解を恐れず言ってしまいましょう。なんとも“エモい”のです。

というわけで、日本画の冷涼さの裏には、市井の人々の青春や恋愛、永遠のノスタルジーが、巧妙に隠されていたのだなあと、感じ入りました。そして美術館の外に出れば、そこは古都鎌倉の閑静な住宅地。なかなか感情が追いつきません。また来よう!と思いました。


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