年間大賞チラシはどの公演!? おちらしさんアワード2022~舞台版~
こんにちは。おちらしさんスタッフのしみちゃんです!
チラシ宅配サービス「おちらしさん」では、2020年より、その年に配られた舞台公演・美術展チラシの年間大賞を決めるイベント「おちらしさんアワード」を行っています。
今年の2022年版は、2022年12月15日~2023年1月8日までWEB投票を受け付けていました。ご投票くださった観客の皆さま、盛り上げてくださった公演・展示団体の皆さま、本当にありがとうございました!!
例年より多くの票数が集まり、ランクインしたチラシの数もグンと増えました……! その数はなんと舞台版で146種類!!
こちらの記事では結果発表として、上位1~9位に輝いたチラシ11作品をご紹介します。どのチラシのどんな部分に多くのお声が集まったのでしょうか!? 投票の際にいただいた観客の方からのコメントや、公演主催団体・デザイナーの方からも受賞記念コメントをいただき、ご紹介しています。それでは、最後までどうぞお楽しみください!
▽「おちらしさんアワード2022~美術版~」結果発表はこちら▽
第1位 ミュージカル『キングアーサー』
見事、第1位に選ばれたのは、ただいま新国立劇場 中劇場で上演中のミュージカル『キングアーサー』です!! こちらのチラシは、一目見たときからカッコイイ! ミュージカルのチラシにありそうでなかった写真から物語が見えてくるデザインが特徴です。
表面には、メインキャスト11人が勢ぞろい。暗雲が立ち込める世界で彼らが躍動する物語が浮かび上がります。「上部にいるキャラクターは魔力で支配しているのかな?」「下部のキャラクターは剣で戦うのかな?」「ヒロインの顔の半分に影が差しているのは?」などなど、構図やコスチュームからストーリーが気になってきませんか……!?
一般的に海外ミュージカルの日本版チラシは、各国のカンパニー共通で使用されているロゴや、キャスト数人での写真が多いもの。版権等の制約があるためとも言われますが、作品自体のイメージだけでなく、キャラクターたちの光と闇、さらには物語の行方まで暗示させるようなデザインの『キングアーサー』チラシは目立ちますよね……!
裏面にもフルコスチュームのお写真が! 全身が観られるチラシも意外とない……! 皆さまからは「衣装、照明共に素晴らしい重厚感!」「ダークな陰影が荘厳でカッコいい」「アーサー王伝説の世界に気持ちが持っていかれます」といったコメントもいただきました。上演真っ最中ですので、チラシに描かれた壮大な神話の世界へ飛び込みたい方は、どうぞお早めに劇場へ足を運んでみてください!
第2位 ぽこぽこクラブvol.8 『光垂れーる』
第2位に選ばれたのは、紀伊國屋ホールで上演されました、ぽこぽこクラブvol.8 『光垂れーる』です。こちらはA4サイズの2つ折りチラシ。つまり開くとA3サイズになるのですが……ご覧ください!! この圧倒的な密度!!!
描かれているのは百鬼夜行でしょうか? 妖怪や動物、骸骨などがひしめき、三途の川沿いを行脚しているかのようです。背景のビビットな色合い、ドドンと置かれたタイトル文字からはポップなイメージが際立ち、彼らの活気ある雰囲気とマッチしていてなんだかワイワイと楽しそう!
ところが一転、裏面は真っ黒なんです!! キャストの顔写真も暗闇に浮かび上がっているようなデザイン。賑やかさと静寂のコントラストから、「生と死」という物語のテーマが伝わってきます。
「ビビットカラー同士なのに喧嘩せず、とにかくかっこいいと思った1枚」「イラストが細かく、いくらでも見ていられそう」というコメントもいたただきました。奇抜でありながら、計算し尽くされたチラシデザインです!
ぽこぽこクラブさん よりコメント
第3位 2022年 劇団☆新感線 42周年興行・秋公演
SHINKANSEN☆RX 薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-
第3位に選ばれたのは、新橋演舞場ほかで上演されました、劇団☆新感線 『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』です。公演期間の終了後にも映画館でディレイビューイングが行われ、ご覧になった方も多いのではないでしょうか?
こちらもA4サイズの二つ折りチラシ。大航海時代の地図を彷彿とさせる表面を開くと、主演の古田新太さん・天海祐希さんのお二人が登場!!!
思わず手を止め、惚れ惚れとしてしまうこと間違いなし。ピンクを基調とした華やかさがありながら、懐かしのハリウッド映画ポスターに通じるハードボイルドな雰囲気も感じられます。まさに“スタア集結”といった様相。裏面も表のタイトルと同じく気品溢れる金のインクが使われ、劇団☆新感線らしい謳い文句が気持ち良く踊ります……!
「部屋に飾っています!」「これぞ薔薇サム!」「大好きな二人がそこにカッコよくいるだけで最高」といったコメントもいただきました。ファン待望の続編への期待をさらに上回る、素晴らしい1枚です!
第4位 演劇企画集団Jr.5「ねじ廻る」
第4位に選ばれたのは、ウエストエンドスタジオで上演されました、演劇企画集団Jr.5「ねじ廻る」です。“とある港町にある小さな町工場”が物語の舞台とのことですが、まずはタイトルロゴをご覧ください。ネジだ!!!!!
「じ」の濁点はスパナに、「る」はメジャーでしょうか? チラシ裏面の公演スケジュールにも船の舵やナットが登場し、細部まで作品のモチーフが散りばめられています。愛らしく親近感があるこだわりですね!
しかし一番コメントが集まったのは表面の写真。ほとんどのキャストが同じ方向を見つめる中、中央の男性だけが別の方向を向いているのです……! どうして!? この謎に気づいてしまったら、もう観に行くしかないでしょう!
「1人だけ反対方向を向いている意味深なチラシ」というお声と、「実際に観劇したらチラシ全体のイメージとピッタリ合致した」というお声まで。私もストーリーへの想像が膨らみ、今ものすごく気になって気になって仕方がありません……。劇場でこの謎を解き明かしたいと思わせる仕掛けにあっぱれです!!
大嶽典子 さん よりコメント(宣伝美術)
第5位 KERA・MAP #010「しびれ雲」
第5位に選ばれたのは、本多劇場ほかで上演されました、KERA・MAP #010「しびれ雲」です。こちらのチラシを手にして真っ先に気になるのは、触りごこちでしょう。表面はパルプの繊維を感じるような柔らかい仕上がり。ほわんとしたやさしい色味と相まって、懐かしくホッとするような雰囲気です。
一方で、二つ折り部分を開いた面は、つるっと光沢のある質感。昔のデパートの包装紙のような雰囲気とでも言いましょうか。オフホワイトの地に、青いインクでの印刷がなんとも古風でイカしています……!
「のんびりとした世界観が伝わるチラシ」「劇場でも表のベージュの版画が配られ、大事にとっています」「観劇できなかったのが悔しい……」といったコメントもいただきました。
キャストの扮装写真や縦書きの文字、そして広い海を臨む写真まで。構成するすべての要素が絶妙にマッチして独特の雰囲気を作り出し、「チラシはひとつの作品」であると納得の1枚です!
榎本太郎 さん よりコメント(デザイナー)
第6位 新国立劇場 開場25周年記念公演
『レオポルトシュタット』
第6位に選ばれたのは、新国立劇場 中劇場にて上演されました、新国立劇場『レオポルトシュタット』です。今年に入ってからナショナル・シアター・ライブでの上映も人気だというこちらの作品。ユダヤ人一家が辿った激動の56年を描いた歴史物らしく、タイトルの箔押しが重厚な雰囲気を醸し出します。イラストで描かれた立派なソファも、ずっとそこにあるかのようで象徴的ですよね。
二つ折り部分を開くと、あらすじやキャスト写真とともに地図と家系図が。 家系図下に書かれたセリフからも脈々と続いてきた家族像が伝わってきます。ユダヤ人居住区であるレオポルトシュタットも見えますでしょうか? 「金×黄色×紫」という色の組み合わせも高貴で、お金持ちのような雰囲気です。
ところがこのチラシに詰め込まれた家族や家、財産といったモチーフはまさしく一家が劇中で失うもの。観劇後に見てみると、築いてきたものを理不尽に奪われた彼らの切なさと哀しみが感じられるようです。「チラシのゴージャスな世界がだんだん崩壊していく様が舞台で語られ、いっそう印象的でした」というコメントも寄せられました。
第7位 トラム、二人芝居
『建築家とアッシリア皇帝』
第8位は同率で2つのチラシをご紹介します! 1つ目は、シアタートラムで上演されました、トラム、二人芝居 『建築家とアッシリア皇帝』です。縦横の目地が見える油絵のカンバスのような紙に、アッと目を惹かれる鮮やかな極彩色。そしてタキシードの黒。その鮮烈さに「きっととんでもない二人芝居に違いない」という第一印象が今、脳に刻み込まれましたね……。
それもそのはず、この作品は一言でいうとまさにカオス!!! 二人きりの島で“皇帝”と“建築家”がひたすらに喋り、ありとあらゆるものを演じるという観た人にしか通じないであろう物語と世界観なのですが、チラシからもカオスが伺えます。まずはタイトル部分。「建築家」「と」「アッシリア」「皇帝」で4種類のフォントがバラバラに使われています。一見スタイリッシュなようでこんなおかしな題字、見たことがありますか!?
チラシ裏面上部にある解説にも注目すると、漢数字は太さがすべて均一なゴシック体、ひらがなやカタカナにはアンチック体のような丸い雰囲気の文字に。この使い分けはマンガのセリフ部分で見かけるものです!
ネジ巻きのついた脳みそ、一つ目の太陽、ビル群とガレキ、バラの花。そして岡本健一さんの影には、被っていないはずの王冠。あらゆるものが詰め込まれた様はゴチャゴチャなおもちゃ箱のよう。常識を超えた混沌の世界をいかに楽しめるか。そんなメッセージも感じます。「表面と裏面の服装から、写真の二人は同一人物なのではないかと思った」というコメントもいただきましたが、果たして……?
秋澤一彰 さん よりコメント(デザイナー)
第7位 ミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』
第7位の2つ目は同率で4つのチラシをご紹介します! 2つ目は帝国劇場ほかで上演されました、ミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』です。こちらの作品は韓国で初演され、日本では昨年が再演となったミュージカル。韓国ミュージカルはゴシック的なビジュアルのイメージが強く、退廃的な美しさを目指したものが多い印象。日本での初演の際にもそれに準じたようなチラシでしたが、再演版で際立つのはむしろキラキラとした透明感!!
チラシの表面では吹雪を思い起こさせるさせる白い布と雪に反射したきらめきが見え、冬の澄んだ空気まで感じるようです。2月という上演時期にもぴったりで素敵ですが、そのあたりもガラッとデザインを一新させる一因となったのでしょうか……?
チラシ裏面の主役・グウィンプレンを演じる、浦井健治さんのお写真にも「横顔が儚くて好きです」「雪が降るとあのポーズを思い出します」とのコメントが。「初演とまた違う感じのチラシで、おおっと思いました」とのお声もあり、一度観た人もまた観たいと感じる新鮮さが多くの方の心を惹き付けたようです!
第9位 パルコ・プロデュース2022『幽霊はここにいる』
チラシのお写真は、公演HPにてご覧いただけます↓↓
第9位は同率で3つのチラシをご紹介します! 1つ目は、PARCO劇場ほかで上演されました、パルコ・プロデュース2022『幽霊はここにいる』です。このチラシは白・黒・銀で構成された、モノトーンなデザインが珍しい1枚。引っ掻いて書かれたようなタイトル文字、チラシ中央にあるキャストの顔写真を集めた人形(ひとがた)が、白昼夢かのような不気味な雰囲気を醸し出しています。
キャスト写真部分は動きがブレているかのように銀のインクが重ねられ、チラシをチラチラ動かすと残像が見えるんです。これがなんとも怖ろしい!!!! 作品は喜劇的戯曲とのことですが、夜中にこのチラシを見たら背中がゾワッとしてしまう人が大半でしょう。白い余白部分もぽっかりと空いた不安感を誘うようです。「ゾワゾワする感じ」「顔がはっきりと映っていないのが怖い」とのコメントも寄せられました。
実はこの怖さ、もっと前から積み重ねられていました。本チラシより先に配布されていた仮チラシがこちら。
まず真っ先に読んでしまうのは、“死者の写真 高価買います”の文字。劇場でチラシ束をめくっていてこれが目に入ったなら、途端にゾッと体感温度が冷えること間違いなし。怖いものほど一度目にしたら気にかかってしまうものですから、公演のことも頭から離れなくなるかもしれません……。
榎本太郎 さん よりコメント(デザイナー)
第9位 虚構の劇団 解散公演『日本人のへそ』
第9位の2つ目は、座・高円寺 1ほかで上演されました、虚構の劇団 解散公演『日本人のへそ』です。こちらのチラシは第7位の『建築家とアッシリア皇帝』ともまた違った、しっちゃかめっちゃかさがパワフルな1枚。
タイトルの通り、真ん中に見えるのは「へそ」。そして日本らしさを連想させる刀、盆栽、東京タワー、カラフルな卒塔婆、丸めがね、毛筆で力強い題字!! なんだかよくは分からないけれど、それでもアイデンティティと言いますか、自分ごとのひとつとして捉えてしまう身近さを感じるのが不思議です。
ドーンとめいっぱいに大きく迫るようなデザインは、見ているだけでどこかワクワクした気持ちになり、元気までも湧いてきませんか!? 「雑多な感じが混沌とした世の中のようで、衣を着ていない女性までもがその中で生き抜いている様が良いと思った」というコメントもいただきました。
劇団の解散公演でもあった今作。16年間で積み上げられてきたパッションとインスピレーションが爆発し、ドカーンと大きな花を咲かせる。そんな力強さも伝わってきます!
末吉亮 さん(図工ファイブ)よりコメント(デザイナー)
虚構の劇団 制作スタッフさんよりコメント
第9位 新国立劇場 演劇 2021/2022シーズン シリーズ
「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話...の物語」Vol.2『ロビー・ヒーロー』
第9位の3つ目、最後にご紹介するのは、新国立劇場 小劇場で上演されました、新国立劇場「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話...の物語」Vol.2『ロビー・ヒーロー』です。高層マンションのロビーを舞台に、4人の人物が登場する会話劇なのですが、すごいのはチラシを見るだけでそれが瞬時に分かってしまうこと。なんとアメリカのコミックのようなイラストで、物語の設定がそのまま描かれています。
コマが進むと向かいの建物の電気が消えていたり、ロビーにいる人が変わっていたり……。セリフも普段の会話のようで親しみやすさがありますよね。チラシ裏面では「正義」がテーマとの説明も入っていますが、初めて劇場に行ってみたいと思っている人や、翻訳劇にチャレンジしてみたい人でも楽しく観られそう!!
ちなみに今まさに描き途中のコマを描いている手は、戯曲の作者であるケネス・ロナーガンさんの写真を元に描かれているそう! 細部までこだわりがたっぷりです。
実はこのチラシ、シリーズ「声」として3つの作品のチラシがセットでデザインされていたうちの2作目。3作すべてを並べてみると、さらに細かい設定に気づくことができるんですよ……! 「1枚でもかっこ良くて、シリーズで3枚揃えて並べても素晴らしい」というコメントもいただきました。気になる方は、おちらしさんWEBで特集した記事も読んでみてくださいね!!
以上、9位までチラシ11点をご紹介いたしました! おちらしさんアワードは今回3度目の開催となりましたが、年々右肩上がりで多くの投票をいただいています。皆さまと公演チラシを話題に盛り上がれましたこと、本当に嬉しい想いです! お気に入りのチラシへ票やコメントを寄せてくださった観客の皆さま、盛り上がりを作り、ご協力くださった公演団体の皆さま、本当にありがとうございました!!
2022年は残念ながら公演中止・延期となってしまう作品も多くありましたが、それでもチラシは作られ、観客の皆さまのお手元へ渡っています。おちらしさんでは、チラシに込められた作品への想いやメッセージを大切にお預かりし、これからも公演団体の皆さまと観客の皆さまとをお繋ぎしていきたいです。
さて、惜しくも9位までにランクインしなかったチラシも、たくさんの投票をいただきました。 お名前の挙がったすべてのチラシをご紹介します!
おちらしさんアワード2022~舞台版~
全チラシご紹介
以上をもちまして、「おちらしさんアワード2022~舞台版~」の結果発表といたします。最後までお読みいただきありがとうございました! 美術版の「おちらしさんアワード2022」結果発表も、あわせてお楽しみください!!
▽これまでのおちらしさんアワード結果記事はこちら▽
知れば知るほど面白い。チラシが手元に届くまで!
▽おちらしさんアワード関連記事はこちら!▽
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