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ミュージカルオタク、戯曲を読む
こんにちは。おちらしさんスタッフのしみちゃんです!いつもおちらしさん、そしておちらしさんWEBをご覧いただきありがとうございます。
いつもはお知らせの更新や「つながる!アンケート」の結果記事を主に担当していますが、今日はスタッフブログのように皆さまとおしゃべりしたい事を書きたいと思います。これまでに書いた記事も、ご興味がありましたらぜひ読んでみてください!
さて、上のラインナップからも分かる通り、私は大のミュージカルファンです。劇団四季や宝塚、東宝ミュージカルをはじめ、とにかく歌と踊り!パッと華やぐショーアップされた場面や、音楽が生むドラマティックな展開が好きでしたし、自分でもそれが舞台を好んで観ている理由だと思っていました。
そんな私でも、観劇をし始めて4年後でしょうか。とうとう戯曲を読みはじめます。ミュージカル以外のいわゆる台詞劇というものに出会ったのです。ちょうどほぼ同時期に3作の台詞劇に触れたのですが、それがもう揃いも揃ってとても面白かった。派手なパフォーマンスがなくても、曲に台詞を乗せなくてもお芝居って面白い。人間と人間が話しているだけで十二分に面白い。そのことに気づいて、文字としてもその会話を読んでみることにしました。
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『組曲虐殺』
最初に観たのは、銀河劇場で上演された『組曲虐殺』でした。井上ひさしさんが遺した最後の戯曲と言われています。「蟹工船」などで知られるプロレタリア文学の作家・小林多喜二と彼を助ける家族、そして彼を捕まえる警官の話です。一見、敵味方に分かれているように見えても、会話をすれば人と人。
「ミカンの皮、どっちから剥きます?」「ぼくはヘタからです。」「自分は尻からです。」
なんて、ありふれたどうでもいい話だって普通にできてしまう。「赤」と「特高」のような大きい枠組みで捉えるよりも、人に触れて人を見る。その方がずっと大事なんだと教えられるような作品でした。
『片づけたい女たち』
2作目は、永井愛さんの戯曲『片づけたい女たち』。これは過去に上演された時の記録映像を大学の授業で観せてもらいました。高校時代を共にした旧友、ツンコ・バツミ・おチョビの3人が、ゴミ屋敷と化したツンコの部屋をただただひたすらに片づけていくお話です。上演中の役者さんの動きは物を分別し、ゴミ袋に入れ……というように「片づけ」そのものなのですが、それをしながらの会話で山積した彼女たち自身が抱える問題も少しずつ紐解かれ、片付いていくのが面白いところ。文字だけの戯曲になるとおびただしいゴミよりも、その問題の方により焦点が当たるように感じたのが印象的でした。
戦いなさい、戦える自分になりなさい!
という台詞が好きで、いつだってやわらかい日常の延長線上にこそ私たちの生き方を問うような命題があるんだよなあと思えます。
『タージマハルの衛兵』
最後は、新国立劇場で上演された『タージマハルの衛兵』。これもいつも通りの日常を描く序盤から、底なしの怖ろしい穴にストンと落ちていくような戯曲です。霊廟タージマハルの完成前夜、見張りの任務についていた下っ端の衛兵・フマユーンとバーブル。唯一無二の友人である2人の関係が軽口を叩くところから、事態は真っ逆さまに展開していきます。観ていてもゾッとするような思いでしたが、文字になるとよりひんやりと温度が下がったように感じる部分もありました。
そしてこの作品で初めて体験したのが、原語(英語)と翻訳版(日本語)の戯曲を読み比べるということです。言葉を変えて、文化を超えても、家族や思想、社会といった人間の根本的なイデオロギーは共有できるし、そういったものを描いているからこそ様々な言葉を通して上演でき、かつ個人個人でも違った感想が持てるのだなと思いました。『タージマハルの衛兵』はひとつひとつの台詞が象徴的なのですが、その中でも一言目が特別重い意味をはらんでいます。
Wrong hand.
「手が逆」
大きな意味がないようでいて、観た方からすれば震え上がるような台詞です。『タージマハルの衛兵』は来月、新たに東京演劇アンサンブルさんでの上演があります。ぜひ「手」の行方が気になる方はご覧になってみてください。
というわけで私が初めて触れた大好きな台詞劇と戯曲3本についてさっくり紹介させてもらいました。興味の延長で読み始めただけなので、戯曲とはこういうものだ!こういう読み方をするのだ!といった知識的なことは全く分かりません(笑)板があって、身体があって、心があって、声があってのお芝居が大好きですが、言葉だけを読んで観た記憶を引っ張り出したり、文字上で言葉自体が持つ面白さを味わったり、そういうのも楽しいかなあと思っています。皆さまもおすすめのお芝居、戯曲などがありましたらぜひぜひ教えていただけましたら嬉しいです。ちなみに、私が今一番読みたいのは『リーマン・トリロジー』です。ではまた!
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