思い出の“ジャケ買い”チラシはこれだ!|おちらしさんアワード2024関連企画
こんにちは、おちらしさんスタッフです。
日々、たくさんの魅力的な舞台公演が開催されている中で、「この公演を観に行こう!」と決める理由は何でしょうか?
好きな劇団だから、出ているキャストのファンだから、この劇場の演目なら信頼できるから、友人に誘われて、etc…。
さまざまな理由がある中で、チラシのデザインに惹かれて観に行ったり、チラシで初めて劇団を知ってファンになった、いわゆる“ジャケ買い”をした経験がある方も多いと思います。
現在開催中の”チラシの祭典”「おちらしさんアワード2024」の関連企画として、年間3500万枚超のチラシに出会い、チラシ愛に溢れているおちらしさんスタッフ5名が、「思い出の”ジャケ買い”チラシ」をご紹介します!
新国立劇場 演劇 2019/2020シーズン「ことぜん」
『タージマハルの衛兵』(2019年12月上演)
ミュージカルファンだった私が、初めて会話劇に出会った想い出の作品です。
公演の邦題、原題、日時、劇場名、作・翻訳・演出、シリーズ名、劇中の台詞、「ことぜん」オリジナルキャラクターまで、表面だけでもあらゆる要素が詰め込まれているのに、一枚絵として圧倒的な存在感を放つデザイン。本の装丁をメインに活動されているコードデザインスタジオさんが戯曲を読み込み、手掛けられたというこのチラシは、実際に劇場で観劇した体験とともに鮮烈にこびりついています。映画のCMでギョッとするようなワンシーンを見せられて、「これは本編を観ないとなんだかゾクゾクしていたたまれないぞ……」と思う感覚に似ているとでも言いますでしょうか。同じ海外発の作品であっても、作品の大枠を捉え、本国での上演と同じものが味わえる価値を打ち出そうとすることの多いミュージカルの宣伝美術とは異なり、今回のカンパニーで上演する意義やカラーが細部にまでほとばしっていることも当時の私にとっては大きな衝撃でした。描かれた沢山の手に引き込まれるように劇場へ向かい、想像の遥か彼方に立ちはだかった物語のスケールに客席で呆然とし、そして再びこのチラシに向き合ったときに初めて理解した真っ赤なイラストの恐ろしい意味合いといったら……。音楽のないお芝居がどんなものかすら分からないままに飛び込んだ先が、この作品で本当に良かったと今でも強く思います。(清水美里(しみちゃん))
Q『虫』(2012年12月上演)
そのチラシと出会ったのはこまばアゴラ劇場だった気がします。何を観たときのチラシ束だったのか覚えていないのですが、そのチラシのことだけは覚えています。劇場の薄暗い中で見ていた分厚い束の中にそのチラシはありました。
普段の触るチラシとは違うツルツルとした感触。厚めのトレーシングペーパーに印刷され、後ろに折り込まれているチラシがうっすらと透けていて、こんなチラシ見たことないと発見した気分でした。ほかのチラシを落とさないよう、手に取ってみると指が透けて見え、自分がチラシのデザインの一部になっていると、興奮した記憶があります。チラシ自体は、どこか不気味な雰囲気なのにポップで、それでいて未知の可能性を感じさせてくれるようで、これはすごいものを見つけてしまった! と自分だけがこの良さを発見してしまったかもしれないと、当時は思っていました。劇団の名前は「Q」、タイトルは「虫」
劇団名とタイトルの、どこかつかみどころのない未知な感じも僕にはとても魅力的に思え、劇団の名前もタイトルも聞いたことがなかったのですが、自分の面白いと思う感覚を信じて観に行きました。上演が始まった瞬間、吉田聡子さんの発した声を未だに覚えています。衝撃だったのでしょう。十年以上経った今でも覚えています。自分が発見した良いチラシから良い観劇をできたので、「虫」を観終わった後は劇の内容に心はざわざわしながらも、チラシを見てものすごい演劇を観れたという達成感に自分の感覚が肯定されたような気持ちになりました。(伊藤佑弥)
イキウメ『眠りのともだち』(2008年2~3月上演)
この頃は、東京中の小劇場を観てやろうと息巻いていた時期だったので、チラシのビジュアルはかなり公演を選ぶポイントになっていました。
イキウメさんは、2007年の『散歩する侵略者』を観て(この世界観、だいぶ好きかも…)とは思ってはいたのですが、次回作の『眠りのともだち』のチラシビジュアルを見て「うわー絶対好きなやつだ!これは好きな劇団だ!」と確信に変わったことを覚えています。
紙屑入りの皿が乗った四角形の上下に、対になる人間と羊人間、その体からまっすぐ伸びる影が印象的。この絶妙な暗さよ!そして、表面のお葬式の如き雰囲気に対して裏面は真っ赤で二度興奮。
あらすじも最高だったので、ワクワクしながら観に行きました。すごい夢を観させていただきました。(吉澤和泉)
阿佐ヶ谷スパイダース『ポルノ』(2002年8月上演)
2002年、福島県会津若松市の大学生だった私は、月に数回、片道6時間のバスに揺られて東京に出かけては、可能な限りの観劇を詰め込んでいる演劇青年でした。観劇のたびに大量のチラシ束を持ち帰り、学食のテーブルに広げて次の東京での予定を立ててはまた東京へ、を繰り返している中で、このチラシに出会いました。
記念写真に猥雑さが加わることで立ち上がる不穏さ。その頃の演劇の一つのキーワードでもあった「舞台上での不謹慎さ」が凝縮して体現されていたように思います。チラシは若干厚めな上質紙だったような気がしていて、、というのも、コート紙が多かったチラシの中で、このチラシを持った時のざわつきみたいなものを、記憶の中の私の手が覚えているのです。私の手が嘘をついていなければ、ですけど。
この公演自体は見ることが叶わず、不謹慎さがどのように舞台上に体現されていたのかは知らないままではあるのですが、チラシの世界観は深く心に残っていて、私が上京して演劇を続けることにつながったのは間違いありません。もちろん上京後は阿佐ヶ谷スパイダースの公演を観続けましたし、旗揚げ公演の劇場も阿佐ヶ谷を選んだのでした。(成島秀和)
惑星ピスタチオ『大切なバカンス』(1998年5月上演)
もともと好きな劇団だったので、純粋なジャケ買いとは違うかも知れませんが、真っ先に浮かんだのは1998年5月の惑星ピスタチオ公演『大切なバカンス』。惑星ピスタチオは1990年代に演劇界を風靡した関西の劇団。ふだんは座付作家・西田シャトナーさんの作・演出ですが、この公演は同劇団の看板女優でもあった平和堂ミラノさんの脚本。「劇団なのにここまで作風の振れ幅があって大丈夫なのか~!?」って心配になるくらい、いつものSF調から思いっきり離れた、トラディショナルなイギリス文学を彷彿とさせる、異国のそよ風を感じるようなチラシデザイン。それでいて見開きの紙面のそこかしこに上品に散りばめられたキャストの居ずまいはしっかりと惑星ピスタチオ。もうね、このデザインを目にした瞬間、細かな情報を観る前に「行くわっっ!!」ってなりましたね。実際の公演も、チラシデザインと同じく、作風はふだんとまるっきり違うのに、しっかりと劇団のブランドはキープされていて、俳優陣と演出家の存在の大きさを感じざるを得ませんでした。タイトルもじわじわと沁み入るんだなあ、『大切なバカンス』。あの時と同じ、紀伊國屋ホールでもう一度出会いたい!(緑川憲仁)
以上です!
昔の公演でも、チラシを見ると観劇の記憶がぶわっと蘇ってきたりしますよね。たくさんのチラシを捲りながら、しみじみと思い出に浸りました…。
さて。時が戻って現在、「おちらしさんアワード2024」の一次投票を受付中です。今年「いい!」と思ったチラシがありましたら、ぜひ投票お願いします!
【一次投票期間は、11月20日(水)12:00まで】
▽チラシ年間大賞を決める「おちらしさんアワード2024」投票受付中!▽
【24.11.13追記】おちらしさん公式Xでは、観客・主催者・デザイナーなど様々な皆さんに思い出のチラシを語っていただく、寄稿企画がスタートしました! ご自身のチラシ体験も「 #私の思い出チラシ 」で教えてください!
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