目を惹く美しさの決め手って…!?おちらしさんアワード2023~美術版~結果発表
こんにちは。おちらしさんスタッフのしみちゃんです!
チラシ宅配サービス「おちらしさん」では2020年より、1年に1度開催される“チラシの祭典”、「おちらしさんアワード」を行っています! 全国の舞台・美術展ファン、チラシファンの皆さまに、一推しの1枚へ投票していただき、多くの票数を集めたチラシとその作り手の方々を表彰するイベントです。
10~11月の一次投票、12月の決戦投票と、2回に分けてWEBにて投票を受け付けていました。投票してくださった観客の皆さま、盛り上げてくださった主催の皆さま、本当にありがとうございました!!
今年は新たに、おちらしさんスタッフの念願でもあった、チラシビジュアルが見られる投票ページを叶えることができました。各チラシ1枚のみの画像掲載となりましたが、鮮やかなノミネートチラシの並びに「来年はチラシごとに工夫された裏面や折り加工までなるべく味わえるようにしたい!」と次なる目標も抱いています…!
こちらの記事では結果発表として、美術版の上位1~10位に輝いたチラシ10作品をご紹介します。投票とともに観客の皆さまからお寄せいただいたコメントや、展示主催団体・デザイナーの方々からの記念コメントも掲載! 素晴らしい展示チラシの数々をどうぞたっぷりとお楽しみください!
▽「おちらしさんアワード2023~舞台版~」結果発表はこちら▽
第1位 下瀬美術館
「開館記念展 おひなさまと近代美術 — 丸平の人形からガレ、マティスまで」
見事、第1位に選ばれましたのは、下瀬美術館にて開催されました、「開館記念展 おひなさまと近代美術 — 丸平の人形からガレ、マティスまで」です!!
こちらのチラシで特徴的なのは、澄んだ空気と奥行き。木材を基調とする広々とした空間に差し込む太陽の光は、明るく清潔な印象を与えます。その空間の中央に座るのは、展示の主役であるひな人形。愛らしくも堂々とした姿が背景とマッチし、不思議とチラシ全体にスッと一体感のあるどこか神々しい雰囲気を感じませんか?
下瀬美術館は、2023年3月、瀬戸内海に面する広島県大竹市にオープンしたばかり。本展が「開館記念展」とのことですが、展示品だけでなく、美術館の空間自体を強く印象付けるようなデザインです。”アートの中でアートを観る”という下瀬美術館のキャッチコピーが画として映し出され、自分も現地へ足を運び、建物ごと非日常の体験を享受しているような感覚を覚えます。
「つつましさの中にインパクトがあった」「美術品だけでなく美術館そのものの素晴らしさがうかがえる」「現代的な建築と、伝統のあるお雛様のコントラストが美しい」といったコメントもいただきました。ロゴをはじめとする文字デザインや、温かくツヤ感のある厚めの紙質も、洗練された雰囲気にぴったり。筋の通ったコンセプトが、新しい美術館像を確立した1枚です。
下瀬美術館 広報ご担当の方よりコメント
第2位 練馬区立美術館
「練馬区立美術館コレクション+ 植物と歩く」
第2位は、練馬区立美術館で行われました、「練馬区立美術館コレクション+ 植物と歩く」です。
こちらのチラシは、一面に生い茂った植物が印象的。グリーンとブルーで描かれた草たちは、文字通り「青々」。どこかひんやりとした植物ならではの瑞々しい潤いも感じますね。細かく格子状にエンボス加工がされた紙が使われていますが、その触り心地も葉っぱを触ったときに指に伝わる感触を思い出すよう?
そこへアクセントを添えるのは、垣間見えるベージュの地面を歩く可愛らしいうずら。自由に伸びた蔓を彷彿とさせる題字と合わせて、ルンルンと小さくスキップするような楽しい雰囲気が伝わってきます。「植物の森に向かって踏み込んでいく印象」「緑を感じられた。字体も植物デッサンのよう」「濃い緑が鮮やかで、現地で見たときも青空に映えていて素敵だった!」といったコメントもいただきました。
2023年には朝ドラ『らんまん』をきっかけに大ブームとなった植物学。ちょっと植物が気になる人、植物園に行ってみようかなと考えている人も、このチラシに誘われてしまえばきっと美術館へ足を運んでしまうはず。植物の姿を描いてきた作家たちの作品を通して、「植物“と”歩く」。なんだか素敵な時間になりそうではありませんか……!
練馬区立美術館学芸員・木下紗耶子 さん よりコメント
デザイナー・松尾由佳(Nica)さん よりコメント
第3位 平戸オランダ商館
「殿さまの洋書コレクション2 ―西洋学術と蘭学―」
第3位は、平戸オランダ商館にて開催されました、「殿さまの洋書コレクション2 ―西洋学術と蘭学―」です。
こちらのチラシは、「古い本の1ページ?」と思ってしまうようなデザインが特徴。くすんだ紙の上に文字や絵がコラージュされているように見えます。「殿さまの洋書コレクション」という展示タイトルですから、学問好きなお殿様が、集めた数々の洋書から興味のある内容を切り貼りしたのではないかとも想像が広がりますね。
裏面では、展示作品の写真や解説が1つの書物に書かれたかのようにデザインされ、チラシを手にした人のアカデミックな好奇心を刺激します。「コレクションを大切に守っている姿勢が表れている」「古いテーマなのに斬新」「異国に興味を持った殿さまの事を知りたくなった」というコメントもいただきました。
約200年前に生きていたお殿様が、遠い海の向こうを思って手にしたであろう洋書のコレクション。彼の心高ぶる気持ちが、書物のようなチラシを通して、今の私たちに訴えかけてくる。時空を超えたロマンティックなデザインです。
平戸オランダ商館 よりコメント
第4位 森アーツセンターギャラリー
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」
第4位は、森アーツセンターギャラリーにて行われました、「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」です。
画家・絵本作家である、ヒグチユウコさんの大規模個展が、「ヒグチユウコ展 CIRCUS」として2019年から全国9会場を巡回したのち、さらに500点以上の新しい作品を加えて、東京へ帰ってきました! タイトルの書かれた細い帯のような部分を含め、4つ折りであるこちらのチラシ。広げると作品の全貌がドドーンと姿を現します!!!
本展の集大成として描かれた新作《終幕》の華やかな全体像を捉えられるだけでなく、一筆一筆描かれた細かな線までじっくりと見られる……。 そんな体験がチラシでも叶うとは嬉しいですよね!! パワーを纏うかのように丁寧に塗り重ねられた色彩もどっぷり隅々まで味わえ、まさに贅沢です。
裏面を飾るのは、2018年に描かれた展示タイトルと同じ名前の《circus》。チラシの表と裏で、4年に渡る“サーカス団の歩み”を感じる、巡回展に行かれた方には、よりいっそう嬉しいデザインなのではないでしょうか!? 右端の赤い部分にも各会場での“興行の歴史”が書かれていますよ……!
「ヒグチさんのクリエイティヴィティが溢れ出ている」「チラシとは思えないほどの豪華版」「じーっと見てしまう描き込み。細密過ぎて見入ってしまう」といったコメントもいただきました。サーカスのようにインパクト抜群で、ワクワクと全国を駆け巡った軌跡が感じられるチラシデザイン。展示のコンセプトにぴったりと沿った、楽しさと躍動感のある1枚です。
第5位 もりおか歴史文化館
企画展「罪と罰 -犯罪記録に見る江戸時代の盛岡-」
第5位は、もりおか歴史文化館にて行われました、企画展「罪と罰 -犯罪記録に見る江戸時代の盛岡-」です。
「罪と罰」のタイトルが取り扱うテーマの重さを物語るこちらのチラシ。重石で挟まれ潰れたかのような題字のデザインは、思わず「石抱」と呼ばれる江戸時代の拷問が思い出されませんか? 背景の黒色とのコントラストも、罪を裁き罰を下す、毅然としたイメージで厳しくどっしりと。しかし全体的に暗いトーンでありながら、光が当たるとシルバーのインクが怪しくきらめくところには、悪と分かっていながらもなぜか惹きつけられてしまう危うさを感じます。
裏面は、繊維が目で見えるクラフト紙の色味が生かされ、古い資料が集まる展示らしい雰囲気を盛り上げます。犯罪記録から紐解く人間の歴史は、一体どのような顔を私たちに見せるのか。A4より横幅が狭い縦長のチラシサイズも、まるで罪状の書かれた張り紙のようなイメージで、「罪と罰」という言葉から連想する厳しさや人間の業の深さだけでなく、罪を犯し、罰せられるに至った人々が生きた当時の暮らしへの興味も駆り立てられる1枚です。
「現地でこのチラシを見て足を止め、あまりに関心を引くので開催時期に来館しなおしました」「恐ろしくも厳しく公平であらんとするイメージ」「シンプルながらモノトーンの配色も含めインパクト大」といったコメントも寄せられました。
デザイナー・黒丸健一 さんよりコメント
第6位 TOKAS Project Vol. 6
「凪ぎ、揺らぎ、」
第6位は、トーキョーアーツアンドスペース 本郷にて行われました、TOKAS Project Vol. 6「凪ぎ、揺らぎ、」です。
モノトーンの配色と、文字デザインがシックなこちらのチラシ。中央の写真にはフクロウが捉えられており、いつ動いたり、飛んだりするか分からない姿からは「今この瞬間を見逃してはいけない」というメッセージを感じます。動きのある展示タイトルの配置から、止まらずに変化し続ける時間の流れを感じるからでしょうか? 動き続けているはずの生きものからは一瞬の静けさが、その場に留まっているはずの文字からは動きを感じるとは、なんだかあべこべで面白い対比です。
実はこちらのチラシは、黒バージョン2種、白バージョン2種、全4種類のデザインがありました! 出展する4組の作品がひとつずつ掲載されています。それぞれ作品に同じ展示タイトルや開催概要が添えられていますが、作品が横向きか、縦向きかによって、微妙に文字の配置が異なっているのも動きを感じるポイントです。
「メリハリのある色調がいい」「情報にあふれた世の中でも目を引く」「文字の組み方がかっこよかった」というコメントもいただきました。
静かな「凪ぎ」と、変化する「揺らぎ」。タイトルの「、」は両方が緩やかに繋がり、まだその先へも続いていくことを暗示させます。メッセージはチラシデザインにも落とし込まれ、作品に寄り添うことで投げかけをより浮き彫りにする。極めてシンプルながら、細部に工夫が凝らされた印象的なデザインです。
デザイナー・川越健太 さんよりコメント
第7位 東京都現代美術館
「デイヴィッド・ホックニー展」
第7位は、東京都現代美術館にて行われました、「デイヴィッド・ホックニー展」です。
こちらのチラシは何といっても、パッと目を奪われてしまう鮮やかな色彩が特徴的! 明るい草原の蛍光グリーンに、木の幹は紫。奥の森には、群青色が重ねられています。自然界では見当たらない奇抜な色合いにも関わらず、のどかな田舎の原風景が違和感なく伝わってくるから不思議です。チラシの下半分では、白と黒の2色で情報がすっきりとまとめられ、ホックニーの作品らしいポップな色使いを引き立てます。
裏面は打って変わって、茶色が基調。とは言っても、どんな茶色かひと言では言い表せないカラーですが、ココアブラウンが一番近いでしょうか……? 特色インクがふんだんに使われた贅沢なデザインですが、何よりも作品の魅力である、ホックニーの持ち味を表現することをとことん追求したいという想いが伝わってきますよね。「普通の色ではなく、輝いていた」「最初に見たときの衝撃が忘れられない」「ホックニーのファンになりました」といったコメントもいただきました。
展示タイトルの文字デザインについても多くのコメントが寄せらせましたが、東京都現代美術館さんより、その秘密についてもお言葉をいただいています。 実はとある日本の作品をモデルにしたタイポグラフィーだったとは、驚きです……!!
東京都現代美術館 広報ご担当の方よりコメント
第8位 福田美術館
「橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU ー入神の技・非凡の画ー」
第8位は、福田美術館・嵯峨嵐山文華館・白沙村荘 関雪記念館の3会場にて行われました、「橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU ー入神の技・非凡の画ー」です。
こちらのチラシの特徴は、作品の一部である人物がトリミングされ、メインビジュアルとなっているところ。まるでポーズを決めたモデルのようにも見える、ありそうでなかった意外性のあるデザインだと思いませんか!? 現代的な雰囲気も漂いながら、橋本関雪の描く、すっと優美な線が際立ちます。
緑と青の寒色によるバイカラーや、斜体が多く使われ、はらいの繊細さが印象的な文字デザイン、区切り線など、細かなデザインはいずれもスタイリッシュ。裏面では動物も抜き出されており、見開きのチラシの左右にまたがる様子はスピード感も感じますよね。
「切り抜きが斬新でオシャレ。飾りたい」「洗練された雰囲気のある日本画が、チラシでさらに現代的に昇華されているよう」「色や文字がよく調和している」といったコメントもいただきました。展示作品が持つ特徴をさらに美しく引き立てるような、新しい視点がスパイスとなった1枚です。
デザイナー・笠松晋 さん(大阪宣伝研究所)よりコメント
第9位 国立科学博物館
特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」
第9位は、2月25日(日)まで国立科学博物館にて開催されています、特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」です。
明るい黄色がパッと目に飛び込んでくる、ポップでユニークなこちらのチラシ。小さく並べられたアイコンのような写真は、和食に使われる食材と、料理の数々です。お味噌汁に、てんぷら、オムライス、ラーメン、たこ焼き、カレーライス……。これらをひとつひとつ見るだけでも「和食とは、こんなにもバラエティー豊かだったのか!!」と改めて驚きがあります。メインビジュアルから、日々の生活で身近な存在への新たな発見が得られるんですね…!
「タイトルロゴの日の丸とお米がまさに日本」「食欲と興味が湧いてくる」「和食の展示というのがひと目でわかり、見ているだけで楽しい!」といったコメントも寄せられました。
二つ折り部分を開くと、今度は中面が子どものころに楽しんだ図鑑のよう!! 章ごとに展示の内容を紹介しながら、ポイントとなる展示品の写真も大きく分かりやすいサイズで掲載されています。チラシを手にした段階では、「和食」の奥深さをちょこっと摘まんだ程度かもしれませんが、すでにその魅力に心を奪われ始めているところ……。展示の入り口となるチラシデザインで、私たちの「知りたい!」という知的好奇心を大いに盛り上げてくれる1枚です。
特別展「和食」は、国立科学博物館での期間が終了したのち、2025年まで全国各地の巡回展が予定されています。このチラシから「今こそ和食を深堀りしたい」という気持ちになった方は、ぜひお楽しみに……!!
デザイナー・中出美穂 さん(ガッシュ)よりコメント
第10位 国立新美術館
「ルーヴル美術館展 愛を描く」
最後にご紹介する第10位は、国立新美術館ほかで行われました、「ルーヴル美術館展 愛を描く」です。
このチラシをひと言で表すならば、ずばり「ラブリー」!! 絵画の柔らかく豊かな風合いがピンクの文字によって引き立っていますが、その色合いもなんとも絶妙。絵画のトーンに合わせて、肉眼で見るとむしろオレンジ寄り、ペールオレンジとも言えそうなのですが、写真でもその加減が分かりますでしょうか? 天使のほっぺをモデルにしたような、まろみを帯びたカラーです。
タイトルロゴの透けたような「U」と「R」は、小さなハートマークの総柄になっており、名画の展示とはある種かけ離れた「キュート」な要素が加えられています。絵画の中では神聖な存在である天使も、デフォルメされたモチーフとしては可愛らしい姿で描かれることも多いはず。そう考えてみると、西洋美術と「可愛さ」は意外にも近いところにあるのかもしれません。
“ルーヴル美術館”、”西洋美術”というと、普段の生活からは距離のある、格調高いイメージを抱きますが、“日本の文化”と形容されることもある「可愛さ」のフィルターを一枚纏うことによって、私たちの心が自然とときめく仕上がりになっているのではないでしょうか? 意外性がありながらも、作品と繋がる新しい解釈のエッセンス。「作品と表題の色合いが可愛らしい」「とにかくハートフル」「ピンク色のアクセントで優しさが溢れている」といったコメントもいただきました。
福井雄介 さん(展覧会主催者)よりコメント
以上、10位までにラインクインしたチラシをご紹介いたしました。2023年を彩った素晴らしいチラシの数々から、一推しの1枚を選び抜き、投票・コメントをくださった観客の皆さま。画像・記念コメントの掲載をはじめ、ご協力くださった展示主催団体の皆さま。本当にありがとうございました!!
今回3年目となった美術版のおちらしさんアワード、いかがでしたでしょうか!? ご紹介した10作品だけでも、10通りのアプローチで展示内容に寄り添い、新しい補助線を引いた形で、私たちのもとへ届けてくれているのだなあと改めて感じました。記事を書きながら、それぞれに込められた豊かなアイデアを皆さまとともに味わう時間はとても楽しかったです。
次にチラシを手にした際にも、いつもよりちょっと意識してじっくりとご覧いただき、ワクワクと心が躍ったものにはぜひ足を運んでみてほしいなと思います!
最後に、一次投票を経てノミネートされた、美術版のチラシ49点をご紹介します!
「おちらしさんアワード2023」美術版
全ノミネートチラシご紹介
以上をもちまして、「おちらしさんアワード2023~美術版~」の結果発表といたします。最後までお読みいただきありがとうございました! 舞台版の「おちらしさんアワード2023」結果発表も、ご一緒にお楽しみください!!
▽これまでのおちらしさんアワード結果記事はこちら▽
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