【配信公演観劇しました!】アマヤドリ『生きてる風』
こんにちは。「おちらしさん」スタッフの水口です。
今回は、先日まで上演されていたアマヤドリ『生きてる風』の感想を書いていこうかと思います。
アマヤドリってどんな劇団?という方は、公式サイトをご覧ください。↓
私のアマヤドリ観劇歴はかなり浅く、2017年に上演された『銀髪』と『非常の階段』を観劇したのみでした。
ただ、歴が浅いながらにも好きで、上演しているなら観ておきたい劇団のひとつです。
特に『非常の階段』がかなり印象的でした。振り込め詐欺グループにいる若者たちの話で、現代日本の問題に正面から向き合うため、観劇中は描かれる内容に苦しくなってくるのですが、それだけの内容のものを魅せてくれる素敵な劇団という印象があります。
観劇から数年たった今でも、作品に取り上げられていた内容を思い出しては、作中の登場人物や現実で彼らに近しい状況に陥った人はどうしたら良いのだろうか……と、ぐるぐると考えてしまうこともあるほどです。
『生きてる風』でも、現代日本の抱える問題をかなり丁寧に描かれているように思いました。
今回は「ひきこもりと家族」の話です。
舞台となっているのは、感染症が蔓延した都市。感染リスクから逃れるために地方に移住する人などもいる中、とある場所で夜中に「ひきこもりを治すことができる」と言われる人物に会うために集まった人々が、朝を迎えるまでの物語です。
劇団員の小角まやさんによる人物相関図もあるので、こちらもご参考までに。↓
この中でも、特に、松下仁さん演じる竹前総次郎、ばばゆりなさん演じる竹前瀬奈、宮川飛鳥さん演じる竹前明宏の、竹前家の3人が特に印象に残りました。
総次郎は、30代で無職の男性。大学進学以降からひきこもりがちで中退してしまったり、父との間にも確執があったりと、その他色々な要因から「ひきこもる」という選択を取らざるを得なかったという役です。
瀬奈は、死期の迫る父と、総次郎の間を取り持ち、なんとか亡くなる前に仲直りを果たさせたいと思って行動します。
そして明宏は、大学受験のために浪人をしているのですが、兄が無職・父が病気という状況で、大学進学を諦め、就職するか悩んでいます。
この竹前家の会話が、20~30代のきょうだいの微妙な距離の取り方をした喧嘩が非常に面白いのです。
瀬奈と明宏が総次郎に向けて話す内容が、総次郎を心配している/気持ちを理解している、と言葉では言うものの、自分の思い描く理想形を押し付け合っていて、かなり自分本位な話をしているのです。瀬奈は「お父さんと仲直りしなかったら、絶対後悔するよ」と心配を押し付けたり、総次郎も「勝手に心配していればいいじゃないか!」と投げ捨てたり、明宏は「兄ちゃんは大学中退したくせに、どうして俺は大学に入る事すらできないんだよ」と言ったり…。
竹前家がどうにも印象に残ったのかというと、自分の家族、とりわけ、わたしの兄との関係を思い出してしまうんです。
兄とは3つ歳が離れていて、兄が大学進学のタイミングで実家を離れて生活していました。
数年前、諸々の事情があって、数か月間、一緒に生活することになったのです。「ひきこもり」とまではないものの、兄は家で過ごす時間が多かったため、数年ぶり同じ屋根の下でに生活すると、どうしても衝突してしまうことがありました。生活リズムの違いだったり、共有していると思っていた家族間の日々のことが一緒に暮らしていなかったために抜け落ちていたり。
ある年齢まで一緒に生活しているからこそ、互いのことは全部わかっているとどこかで傲慢に錯覚してしまうんですよ。その錯覚を避けようとすると、どこか他人行儀でありながら、でも、家族間であるからこその融通の利かず、結果的に一方的な形で怒ってしまって…。
竹前家のやり取りが、まさにその怒ったときの私の話し方にそっくりでした。観ていると数年前の自分を思い出して、「あの時のわたしを参考につくったのか……?」と(絶対にそうではないのに)思ってしまいました。
また、配信で観たからこそ、共鳴してしまったところもあります。
布団の上でタブレットの画面越しに「ひきこもり」の話を観ていると、劇場で観る以上に共感・共鳴するように思いました。
ひきこもり気質がある、と個人的には認識しているので、ひきこもり側の人から出てくるセリフのどれもに共感しておりました。
公演・配信とも、既に終了してしまいましたが、また上演/配信が行われる際には、みなさんも是非ご覧くださいね。
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