のぞいておくなら、この闇を。【PR】
どうか、主人公たちがこれ以上不幸にならないでほしい。
祈るような気持ちで、私は「贅沢と幸福」という演劇作品を見続けていた。
頼む、踏みとどまってくれ!!
父の遺言で知った、祖父の罪。
それを背負った三兄弟は、それぞれに、その罪と向き合い始める。
彼らを取り巻く環境は、思ってもみない形で変わっていき、彼らの家族も巻き込みながら、ひとつ、またひとつと、悪意にからめとられていく……。
そこから先はもう、早い。
どんどん堕ちていく。
このまま進んだら、きっと、崩壊する。
今、ここで踏みとどまれたらなんとかなる。
しかし、登場人物たちは踏みとどまらない。
観客がこうであってほしいと願う展開から、どんどん遠ざかっていく。
絶望的な話を見続けさせる技術力の高さ
この演劇は、見ているのがつらくなるような瞬間がたびたび訪れる。
俳優の技量の高さゆえに、とある登場人物に対しては、本気で憎しみの気持ちがわいてくる。
(そんな話なのに、時折、ふっと笑えるような瞬間があります。すごい!!)
つらい物語を、私たちは見続けてしまう。
それをかなえている要因のひとつに、私は、絶えず流れ続ける効果的すぎる音響と、映画のように時系列や場所を巧みにつないでいく照明をはじめとした、全スタッフワークのレベルの高さが挙げられるのではないかと感じた。物語への焦点の当て方の巧みさ、時折織り交ぜる抽象表現も効果的で、「演劇ならでは」を味わえるし……この、安心して見続けられる状況をまとめ上げている野村さんの頭の中は一体どうなっているのか……。
一言で言えば……「演出力が、高すぎる!!」
「で、本当に、踏みとどまらないの?」
どう思いますか?
いったいいつ、主人公たちは踏みとどまるのでしょうか。
それは、ここでは内緒にしておきます。
ぜひ、劇場で確かめてほしいし、
「踏みとどまってくれ!!!」
と思いながら、見続けてほしいなと、思っております。
観劇後の気づき
観劇後、コーヒーを飲みながら、私は、この物語を反芻していた。
ふと気づき、震えたのは、こんな絶望的なお話ですら、「私たちは、見たい物語を見ていたのか……」という気持ちになっていたこと。
あんなにも不幸な話を見続けていたのに、「あれ? もしかして現実のほうがグロテスク??」だなんて、そんなことを思わせるなんて、どういうことだろう??
これまでいくつもの演劇を見てきたが、こんな感覚にはなったことがない。ものすごい観劇体験だった。ぜひとも、この感覚をあなたと共有できたら……幸福である。
公演概要
第11回せんがわ劇場演劇コンクールオーディエンス賞受賞公演
オパンポン創造社「贅沢と幸福」
2022年5月27日(金) 〜 2022年5月29日(日)
27日(金)19:00
28日(土)15:00、19:00
29日(日)13:00、17:00
会場 調布市せんがわ劇場
詳細は、せんがわ劇場特設WEBサイトよりご確認ください
【補足】大阪公演の反響の声がすごい
せんがわ劇場での公演を前に、私と同じように、大阪公演を見た観客の声が、Togetterにまとめられておりますので、ぜひ参考にしてください。
ひとつ言えるのは、観劇された方、相当に、興奮されています!!
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