過去のランクインから「話したくなるチラシ」の秘訣を探ろう!!【おちらしさんアワード】
こんにちは。おちらしさんスタッフのしみちゃんです。いつもおちらしさんをご覧いただきありがとうございます!
皆さまからのWEB投票で2022年のチラシ年間大賞を決める「おちらしさんアワード」。お気に入りのチラシへ投票はすでにお済みでしょうか!?
おちらしさんアワードが始まった2020年からの2年間で、公演チラシ12枚、美術展チラシ8枚が大賞チラシ(およびランクインチラシ)に選ばれているのですが……共通点って何があると思いますか??
その共通点を見つけたいと、いてもたってもいられなくなった私、しみちゃん。年末に忙しなく動いているおちらしさんスタッフに召集をかけて、アワードランクインチラシに隠されたグッとくる秘訣を探ってみることにしました。
伝わるのは、作品のイメージや「○○らしさ」
しみちゃん:おちらしさんアワードでランクインしたチラシを一度に集めてお話しするのは初めてですね。いかがでしょうか?
伊藤:こうして見ると、再演やもともと原作・戯曲がある作品が多いですね。アガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』だったり、安部公房の『砂の女』だったり……。
しみちゃん:確かに、完全新作って、少ないですね。
岸見:原作や戯曲のある方が具体的にイメージがしやすいじゃないですか??
しみちゃん:新国立劇場のチラシデザインをされているコードデザインスタジオさんも、“デザイナーの最初の作業は台本を読むこと”と仰っていましたね。
しみず:『オリエント急行殺人事件』や『王家の紋章』のように、舞台衣装がそのまま見えるチラシも人気がありますよね。
臼田:衣装が分かるだけでイメージがしやすいですよね。
岸見:たまに宣伝ビジュアルで「この衣装いいなあ」と思って観に行くと、本番では変わっていて全然違うことも中にはありますけどね(笑)
一同:あります! あります!
伊藤:美術展のチラシは作品が載っている分、画が強いですよね。
しみちゃん:いわゆる展示の目玉がチラシを飾っていることが多いんですかね? フェルメールならコレ! みたいな。
岸見:この「ゴッホ展」のチラシは作品自体を知らなくても、イメージ通りに「ゴッホらしい」感じがします。
しみちゃん:舞台のチラシも舞台のチラシも、その団体や作家っぽさと言うか、「○○らしい」が見えると素敵ですよね。例えば2年連続でランクインされているケムリ研究室は、作品ごとの雰囲気はそれぞれに違っても「ケムリ研究室らしさ」「ケムリ研究室っぽさ」がチラシからもすごくよく分かると思うんです。
しみず:世界観や「らしさ」の継続って大事ですよね!!
チラシに隠された「語りたくなる」仕掛け!
しみちゃん:チラシ同士の共通点って見つかりますか?
岸見:パッと見たときに、人物写真に何かしら加工がされているものが多いなと思いました。
しみちゃん:たしかに。人物写真が白黒の写真が多いですね。
岸見:人が写っているチラシは、シックな色合いのチラシが多いですね。
臼田:目立つような赤いチラシは、イラストや絵がメインですね。
伊藤:赤の下地だとイラストが映えるんでしょうね! 人物とだとちょっと違うんだろうなあ。
臼田:二つ折りの部分がちょっとめくれるチラシも人気がありますよね。
しみちゃん:同じめくるという仕掛けでも、「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」と「クリスチャンマークレー」では、それぞれ違う意図でめくらせていますね。「フェルメール」は修復後の作品が観られることを伝えるためで、「クリスチャンマークレー」は作品のインパクトが映える仕様じゃないですか。面白いなあー!!
伊藤:「フェルメール」は、最新の「発見」がチラシでも発見できるようになっていますね。
岸見:裏面は共通点があるんですかね?
しみず:去年の舞台版第1位だった、パルコ・プロデュース2021『Birdland』は裏面までロックスターのポスターさながらでスゴいですよ! カッコイイ!
チラシのお写真は、公演HPにてご覧いただけます↓↓
しみちゃん:私は『パ・ラパパンパン』が好きで、表面の赤い地とイラストに対して、裏面が緑一色なんです。クリスマスやりんごを連想する色合いがメルヘンで可愛いんですよ! しかもバイカラーって珍しいなと思って。
しみず:新国立劇場のチラシは表面の加工はもちろん、裏面まで透かしが入っていて面白いですよね!
臼田:ちょっとイラストが添えてあるのも可愛いですよね。顔がちょろっと出ていたり……。
伊藤:どれも裏面や細部まで見たくなる仕掛けですね! そういうところまでこだわられていると良いチラシだと思うのかもしれません。少なくとも情報だけのチラシではないですよね。公演情報+αというか。
しみちゃん:「仕掛け」でいうと、『砂の女』のチラシは一般的にこの種類の紙が使われるときの裏面を表面にして作られているそうなんです。無意識に「おや?」と触り心地の違いが気になってしまう仕掛けなんじゃないかなと……!
普遍的な魅力が光るチラシは、手元に残したい
伊藤:公演や展示のタイトルは「何だろう?」と思わせたもん勝ちですよね。そこから調べたくなったり、想像させたりするのが良いタイトルだと思います。『あーぶくたった、にいたった』とか『ベイジルタウンの女神』とか。この2つはなんとなく雰囲気も伝わってきますよね。
岸見:『イモンドの勝負』の「イモンド」ってなんだろうと思ったんですけど、検索したら公演のことしか出てこなかったです。造語みたい。ちなみに「ベイジルタウン」はGoogle Mapでも見つからなかったです(笑)
しみちゃん:すごい!! いつかケラリーノ・サンドロヴィッチさんにお会いできたらタイトルの付け方についてもお聞きしたいですね!
伊藤:『パ・ラパパンパン』も口に出したいおまじないのようなリズムで良いですよね。「北斎づくし」もいっぱい観られるんだろうなと期待が生まれるような響きがあります。
しみちゃん:タイトルに使われているフォントにも、傾向があるような気がしています。どうでしょうか?
伊藤:「リチャード二世だよ」「上野リチだよ」と、有名なタイトルや人名をパッと見せたいときは明朝体っぽい方がいいのかもしれませんね。
しみちゃん:本当だ! 固有名詞を押し出したいタイプですね。
伊藤:逆に「ゴッホ展」や「北斎で日本史」のように、ゴシック体寄りのときはビジュアルの方を効果的に見せたいのかもしれません。
岸見:力強くても、シンプルで絵を邪魔しないですよね。
伊藤:映画だと、去年ぐらいから手書きの細字で右肩上がりの題字が流行ってたじゃないですか。舞台や展示タイトルにもきっとあることはあると思うんですけど、このラインナップにはないですね。
しみちゃん:もしかすると「流行り」というものがないんじゃないですかね? 題字はオリジナリティーのあるものか、王道かの2パターンとか?
伊藤:流行り廃りが関係ないからこそ、手元に残しておきたくなるチラシなのかもしれませんね。「あのとき流行ってたよね」とか、「わあ、懐かしい」とはならないデザインが良いのかも……。そう言われてみると、ここにあるチラシには時代性がほとんどないですね。
一同:ほんとだー!!
しみちゃん:『Birdland』はロックバンド全盛期っぽい時代性があるかもしれませんけど、それでもバンドってカルチャーの中ではイメージがブレない感じがしませんか? ロックってずっとこういう印象かも。去年の舞台版第8位のパルコ・プロデュース『モダンボーイズ』も、レトロさそのものにはブレがない気がします。
チラシのお写真は、公演HPにてご覧いただけます↓↓
伊藤:例え開催が5年後、10年後だったとしても古くはならないようなデザインしかないような気がしますよね。かといってすごく新しいとか、前衛的な感じもしないし。
しみちゃん:凛としていて普遍的な魅力がありますよね。オールタイムベストの印象です!
伊藤:ここまで1時間以上話してますけど、おちらしさんアワードにランクインしたチラシって1枚1枚について話せちゃいますね。「ここがすごいよね」とか「実は○○なんだよ」とか、何か語りたくなる、話したくなる要素がある。
岸見:確かに、必ず何かしらエピソードが出てきますね……!
伊藤:チラシ自体にも物語があるんだと思います。それを語りたくさせるために仕掛けを用意するだとか……。
しみず:他の20~30枚と一緒にチラシ束になることを前提に作るとしたら、いかに見てもらえるか、いかに部屋に貼ってもらえるか、見返したくなるかが更に重要になりますもんね。チラシにらしさが出ている団体はそれをすごく熟知されているんだと思います。
一同:(深くうなずく)
2020・2021年のおちらしさんアワードでランクインチラシを振り返りましたが、今回の座談会はいかがでしたか? 作品のイメージやその団体・作者「らしさ」が伝わってくるチラシ、語りたくなる仕掛けがあるチラシ、普遍的な魅力があるチラシは特に人気があるようですね……!
今年のおちらしさんアワードは、2023年1月8日(日)まで投票を受付中!! 2022年版では、どんなチラシがランクインするのでしょうか? 皆さまからの熱いチラシ愛をまだまだお待ちしております! そして、結果発表もぜひお楽しみに……!
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