ハリウッド式脚本術: 長編映画の構造
今回の記事は前回の続きとなっています。そのため、以下の記事を読んでからの方がわかりやすいと思います。
さて、前回はいかにシークエンスを元に物語が構成されているのかについてお話ししました。
今回は8つあるシークエンスのうち、ひとつひとつがどんな役割を持っているのか、より具体的にご紹介します。
8つのシークエンスの基本構成
まずは、前回もお見せした下の図が長編映画の全体像です。
それでは、各シークエンスの一般的な役割をざっくりと書き出してみます。
<シークエンス1>
誰が登場し、どこの場所、どんな状況下で物語が進むのかを見せる
観客の好奇心をそそるきっかけ(フック)がある。「あれ?これは何だろう?」というような疑問を持たせることで、「見続ければ答えがわかるはずだ」と思わせ、好奇心をそそる。
メイン・キャラクター/主人公の登場。
キャラクターの平和な日常を見せる。物語が動き出すのは通常の生活がかき乱されてからなので、その前の姿をここで見せる。
シークエンス1が終わるまでには、物語が始まるきっかけ(インサイティング・インシデント)が起こる。これは、今まで普通の暮らしをしていた主人公の生活を揺るがす出来事であり、これから主人公は何かしらの対応を迫られる。
<シークエンス2>
シークエンス1で起こった、平和な日常を揺るがすきっかけ(インサイティング・インシデント)に、何とか主人公は対応しようとする。問題解決を主人公は試みるが、結果的に主人公の行動がより大きな問題を引き起こしてしまい、「主人公は問題解決に成功するのだろうか?」という問いが観客の頭に浮かぶ。
メイン・テンション(メインとなる緊張感)の確立。映画を面白くするのは緊張感であり、その緊張感を作るものは主人公の未来に対する問い(ドラマティック・クエスチョン)。映画全体のメインとなる問いはここで提示される。
<シークエンス3>
シークエンス2の終わりで提示された問題を解決しようとする最初の試み
キャラクターはすぐに問題を解決したいので、最も簡単な手段から試す。
目の前にある問題は部分的には解決するかもしれないが、その試みの結果がより大きな問題へと発展してしまう。
<シークエンス4>
問題解決への最初の試みが失敗するのを目の当たりにする。
もとの生活を取り戻すために別の試みをする。
シークエンス4の終わり(映画の中間点)は通常、1つ目の山場(first culmination)である。つまり、ドラマティック・クエスチョン(=主人公は問題解決に成功するのだろうか?)に対する答えが提供されそうになる。つまり、観客は「主人公の問題が解決しそうだ」という希望をここで見る。しかし、結果的に希望とは裏腹に主人公の望みは叶わず、むしろ逆方向へと転落してしまう。
<シークエンス5>
ここで、主人公はシークエンス4のラスト(映画の中間点)で複雑化した問題に取り組む。
問題解決の成功への希望や、失敗の兆しが新しくここで現れる。新しいキャラクターや新しいチャンスなどはここで登場する。
(もしサブプロットが存在すれば、それはここで生じる。)
(映画によっては、シークエンス4のラストの結果が原因で、シークエンス5からは主人公の欲求・目標そのものが変化することもある。)
今までのシークエンスと同様、ここで主人公は目の前の問題を解決しようとするも、メイン・テンションはまだ解かれていない。そして、問題のさらなる複雑化を招くことで次のシークエンスへとつながる。
<シークエンス6>
これまでのシークエンスで、問題解決への簡単な試みが全て失敗に終わったことから、主人公は最も難しい試みにチャレンジする羽目になる。
メイン・テンションが解かれ(主人公が抱えるメインの問題が解決され)、ドラマティック・クエスチョン(=主人公は問題解決に成功するのか?)に対する最終的な答えを得る。
シークエンス6の終わりは、物語における2つ目の山場。観客はこれから起こりうる結果(希望or絶望)をここで垣間見る。
<シークエンス7>
メインの問題を解決したその結果が、また予想外の展開を引き起こす。シークエンス1〜6までの間に取り組んだ問題がシークエンス6でやっと解決したからといって、終わりではない。
ここで物語の展開がガラリと変わる。多くの場合、状況はより大きな混乱に陥り、主人公は一か八かの賭けを強いられ、問題解決に捻りをきかせる。クライマックス。
<シークエンス8>
問題が解決した後の世界。
自分の日常をシークエンス1のラストでかき乱された主人公が、やっと元通りの生活を取り戻す。
この後どうなるの?という緊張感 (テンション) は完全に解かれ、もはやハラハラドキドキ感は存在しない。
エピローグ/コーダ。。。観客がやっとホッとして一息つけるような短いシーン。
まとめ
以上のことをざっくりと図にまとめると、以下のようになります。
「トイ・ストーリー」などのピクサー映画は、特にこのようなセオリーに忠実に作られている場合が多いので、もしよかったら是非この図と照らし合わせて観てみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
それではまた!
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