【映画留学】 映画撮影の勉強をしていて結局、一番大切だと感じること。
こんにちは!アメリカの大学で映画制作の勉強をしている者です。今週をもちまして、2022年秋学期が正式に終了いたしました👏
今学期も、非常に学びの多く充実した日々を過ごすことができました。教授やクラスメート、私を支えてくれた友人や家族には感謝してもしきれません。
今学期は映画の授業を4つ履修していたのですが、そのうち最も学びが多かったのがDirecting (監督)の授業でした。この授業の期末課題は、一人もしくは二人当たり一本ずつ監督として4〜5分の短編映画を作るというものでした。私たち生徒はみんな一ヶ月ほどかけてそれぞれの作品に取り掛かり、作業を着々と進めました。
今回の投稿では、その作業や撮影を振り返りながら、改めて学んだことについてお話ししていきます。
私の共同監督が短気で最悪な人だった
私は今回、クラスメートと2人で共同で監督として短編作品に携わりました。撮影当日には、同じ大学の映画学部の生徒3人に頼んでそれぞれマイク担当、カメラ担当、プロダクションアシスタントとして協力してもらうことになりました。
撮影当日、作業が一日中続く大変さを考慮し、私は監督としてクルーメンバーが心地良く過ごせる環境を作ることに全力を注ぎました。一つの場所に5、6人が滞在して、たった1分ほどの映像を作るために何時間も同じシーンを繰り返し撮影するのは、誰にとっても疲れる作業だからです。
みんなに出来る限り良いムードで過ごしてもらうために、お菓子やクッキー、果物、ジュース、コーヒーなどを用意しましたし、お昼休憩にはジャンキーなピザなどではなく健康的で美味しい中華料理をテイクアウトすることにしました。カメラなどの機材の調子がおかしくて時間が押してしまった時は、なるべくみんながイライラしないよう監督として明るく振る舞うよう心がけましたし、暇そうにしている俳優には定期的に話しかけにいき、私は雰囲気の良い空間を作るために努力をしていました。
しかしそんな中、野外での撮影が終わった時に雨が降ってしまい、カメラ担当の男子が高いカメラ機材を片付けるのに手間取って機材が雨にさらされたので、私の共同監督が「違う!そうじゃないってば!」と少し強めの声で怒鳴ってしまいました。撮影クルーみんなの前で、彼のイライラが表に出てしまったのです。
その瞬間、私は「これはまずい」と判断しました。怒鳴るという行為は、このカメラ担当の男子を萎縮させてしまいますし、クルー全体の空気も悪くしてしまいかねません。「みんなに居心地良く過ごしてもらいたい」という私の努力も全て水の泡になります。
そのため、私は休憩の際に「ちょっと話がある」と共同監督の彼を呼び出し、こう言いました。「頼むから、みんなに優しくしてくれ。問題が起こっても絶対に怒鳴るな。撮影現場で想定外のことが起こるのは当然なんだし、イライラするのはやめて欲しい。私は撮影クルーのみんなにハッピーでいて欲しいから、怒鳴るのだけはやめてくれ。」
そうすると彼はものすごく反省したようで、その後は私と2人になるたびに「本当にごめん」と何度も謝ってきました。(私は現在21歳の女なのですが、相手は32歳の男性です。年上男性にこれだけ説教じみた口調で話せるのって、英語だからだよなって思います笑)
その後は特に問題もなく撮影を終わらせることができたのですが、解散して私1人になった途端、私は母にビデオ通話しながらメソメソ泣き出してしまいました。
私は一日中、みんなに心地良く過ごしてもらいたくて努力し、さらに共同監督の短気さを注意して彼を宥めながら撮影進行の指揮を取っていたため、みんなに笑顔でお別れを言って緊張から解放された途端、感情がドッと溢れ出してしまったのです。
しかし、その日はそれだけでは終わりませんでした。
ちょうど私が泣き止んだ頃に、共同監督からボイスメッセージが来ました。私たちは次の日にも同じ作品の撮影を控えていたのですが、出演を頼もうと思っていた子供が「やりたくない」と連絡してきたというのです。
そのボイスメッセージの中で、共同監督が腹を立てた様子で「これがどれだけ大切なプロジェクトかわかっていながら断るなんて、あのクソガキが(this fucking kid)」と言い放ちました。
私はこの"this fucking kid"という言葉に対して怒りました。正直に言って、これは全て私たちの責任です。脚本を直前に変更して子役が必要だと私たちが判断したのは撮影の二日前であり、ドタバタで決まったことでした。この子には断る権利がありますし、直前にオファーした私たち側の責任でしかありません。
それなのにも関わらず、共同監督が腹を立てている様子だったので私は再び怒って、「今日もあんたに良い人でいてくれって言ったばかりじゃないか。頼むからあの子をクソガキだなんて呼ぶな。何か問題が起こるたびにキレてそういう言動をとるくらいなら、もう将来あんたと一緒に作品を作ってくれる人はいなくなるぞ」と伝えました。(本当は「そんな態度を取るくらいなら私はもう二度とあんたとは作品を作らない」と言いたかったのですが、撮影の2日目が控えていることもあってそこまでは言いませんでした。)
そしたらまたボイスメッセージとテキストで謝罪の嵐です。
挙げ句の果てには電話までしてきました。電話では「今日の昼に僕が怒ったのは、雨で機材が濡れてしまうと思ったからで、学校から借りてる高いものだから〜」と、なぜキレたのかという理由を述べ始めました。
そこで私は言いました。
「なんであなたがキレたかはどうでも良い。映画撮影にトラブルは付き物だ。どんなセットでも、どんなシチュエーションでも問題は頻繁に起こる。大事なのは、その問題にどう対応するかだ。どんなトラブルも、”怒鳴る”という行動を正当化はしない。監督だからって偉そうにして良いわけじゃないし、むしろ撮影クルーに心地よく過ごしてもらうためには、"偉そう"とは真逆の態度を取る人でないといけない。特に監督という立場にいるのなら尚更だ。」
その言葉を聞いて、彼は数秒間沈黙していました。
そこで私は、「撮影2日目の目標は"良い画"を撮ることよりも、撮影現場でみんなにハッピーでいてもらうことを優先しよう」と提案しました。彼は納得して、この提案を受け入れてくれました。私たちは撮影2日目こそ撮影クルーにとって心地の良い環境を作る努力をすると約束して、その日は電話を終えました。
結局、一番大事なこと。
映画制作の勉強をしていると、常に機材の使い方、映像作品の歴史、物語の演出方法などを中心に学びますが、どのクラスでも必ず言われること/最も大切なのは結局、「良い人であれ (Be nice.)」 ということです。
映画は複数の人のコラボレーションによってできあがります。いいコラボレーションを実現するためには、立場に関係なく誰もが意見を言いやすい環境を作ることが必須です。
そのためには、撮影現場でたとえ問題が起きたとしても、その問題にいちいちイライラするのではなく、広い心で問題解決に取り組むことが不可欠です。映画制作において予想外のことが何度も起こるのは当たり前なのですから、乱暴な言動をとるなんて論外です。何が起こっても誰にも八つ当たりしてはいけません。たとえトラブルが起きたとしても、感情をコントロールして自分の機嫌は自分で取るべきです。
映画セットでは、優しい人であること、時間内に撮影現場に現れること、コミュニケーションをしっかり取ること、メンバーのメンタルヘルスを優先すること、そういう素質がある人たちでないと、映画制作を続けることは困難です。どれだけ素晴らしいスキルや知識を持っている人でも、もし一緒に働くのが難しい性格をしていたら、将来的に誰も一緒に働いてくれなくなります。
私はこの期末課題を通してとても多くのことを学びました。でも、これを「良い経験だった」で片付ける気は一切ありません。私は彼とコラボすると決めたことをずっと後悔しています。私は今後、なるべく彼と作品を作るのは避けるでしょうし、仲間が必要になっても彼には頼みません。
彼は取るべきではない行動を何度も取り、私の信用を失いました。彼は映画制作において最も大切な掟を破ったのですから、当然のことです。
多くの教授が口を揃えて言うとおり、「良い人であること」は最も大切なことであり、基本なのです。それができない人とは、誰も一緒に働きたがりません。彼には大学生活があと2年ほど残っていますが、あの短気な性格が変わらない限り、「彼と一緒に映画を作りたくない」という人は1人ずつ増えていくでしょう。
いつもに増して長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。
それではまた!