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紀伊勝浦②

4/30

11:30に仕事を中断し、昨日おでん屋さんで教えてもらったまぐろのお店、竹原さんへいく。会社の昼休憩あるあるとして、そんなに急ぎの仕事がなくても、デフォルトの休憩時間が1時間だからそれに引っ張られて焦ってしまうことがある。でもこういうときは特に、心に余裕を持って昼休憩をたっぷり取りたい。時間に追われないマインドが必要だ。

まぐろ定食をいただいた。まぐろ定食を頼もうと思っていたが、そこに追い討ちをかけるように「まぐろ定食、イチオシですよ!」と言われてはもう頼むしかない。最初にかつおの炙りがきて、その後に分厚いまぐろ3種盛りがきた。赤身もトロも脂が乗っていておいしかった。食べるのがもったいなくてゆっくり食べていたがそれでもすぐになくなってしまった。

メニューには、ちいかわの絵が書いてあった。とくにうさぎがうなぎを捕獲してちいかわとハチワレが喜んでいる絵は、アニメなりマンガなりをちゃんと見ている人にしか描けない絵だった。話してみると、お店のおばちゃんはアニメを最新話まで追っていた。あ、今日火曜か、最新のはまだみてないわ。

並ぶつもりで来たもののすんなり入れたので、食べ終わっても思いの外時間が余っている。明日以降のための偵察もかねて、ふらふら寄り道しながら帰ることにした。シャッター街をふらついていると、良さそうなみかん屋さんを見つけた。夫婦らしき2人の店員さんは奥の方でなにやら会話していて、ゆっくりみかんを見ることができた。いくつかある中から、訳ありの清見オレンジ(2個で200円!)とみかんジュースを買って飲みながら帰った。曇り空だけど明るい、そんな昼の散歩。スピッツの『美しい鰭』がよく合う、幸せな時間だった。
(夜これを書きながら思い出して冷え冷えのオレンジを食べた、めちゃくちゃ美味しい)

退勤、18:50。4月にしては上出来すぎる。今年は4月の残業時間が60時間を超えないことを目標にしていたが、気づけば難なくクリアしていた。仕事ができるようになったと思いたいが、単に仕事量が減ったことが大きいだろう。

ご飯を食べに、また紀伊勝浦の方へ向かう。エアビーの家は隣の駅の紀伊天満から徒歩2分だが、このあたりはびっくりするほど飲食店がない。駅のすぐ目の前の神社と、謎の会館らしき建物と、あとは家くらいだ。だからお店で何か食べるには隣駅まで行かなくてはならない。普通電車は1時間半に1本ほどなのだが、バスがまあまあ出ていて、電車とバスを合わせれば30分に1本くらい、紀伊勝浦に向かえる交通手段がある。歩いて行ってもいいのだが、お腹も空いたし今回はバスに乗って行った。

建物は多いが、そもそもシャッターが空いている店が少ない。数少ないシャッターが開いている店も、夜やっているとは限らない。そのため、なんとなく惹かれた店をあちこち見回るのにも、教えてもらった店を探してみるのにも、まあまあ時間がかかった。

高級寿司屋に入ろうかと迷ったが、価格が未知数であることからその出費を想像するとびびって入れず、結局は教えてもらった義兵衛さんへ行った。鯨と鮪の刺身定食が4000円するが、高級寿司屋を覚悟したあとだと安く感じてしまう。アンカリング効果、恐るべし。

鯨の刺身は馬肉のようで美味しかった。鮪は赤身だが言うまでもなく美味しかった。だがしかし、隣席の3人組が中トロらしき寿司を大量に皿に乗せて、幸せそうに酒を煽っている。なに、そんなものがあったのか、しかしメニューを探っても"寿司"の文字はない。注文時に聞かないといけないのか、どうすればあれを食べられたのか、十分美味しい鯨と鮪の刺身を食べながらも、少し後悔しながら頬張る自分がいた。会計時にそれとなく「お寿司もあるんですね」と聞いてみると、普段は出さない、予約があった時だけだと伝えられた。自分に頼むチャンスがなかったのだとわかると、後悔の余地がなく、ホッとした。

お店を出ると、夜の散歩タイムだ。時間もあるので、なんとなく家の方向に向かいつつも、あてもなく歩くことにした。街灯が少なく人も少ない、どこかわからない土地を適当に夜散歩するのがなによりも楽しかったりする

ひとり旅では暇だから、夜あてもなく何回も散歩しまわる。でもその街も広くない、数回の散歩で少しずつ既知の世界が広がっていく、時には同じ場所をふたたびなぞることで、よりその土地の輪郭がはっきりしてくる。そんな散歩がひとり旅のかけがえのない思い出となり、再訪することがあれば、大きな感動の源泉となる。

暑くも涼しくもない気候、雨と濡れた植物と花の蜜のにおいが混ざってただよう、湿った春の夜の空気。

聴いた曲
♪midnight talk --幾田りら
♪funny bunny --Uru
♪ジャングルジム --BUMP OF CHICKEN
♪大宮サンセット --スピッツ

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