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【賞レース賛辞#8】M-1敗者復活戦好きなネタベスト3
今回は、先日放送されたM-1グランプリの敗者復活戦のネタの中で、私に刺さったランキングトップ3を紹介したいと思います。例年に増して大会として気合が入っていた、第20回大会。もう決勝組が決まっている中で、ラストチャンスにかける漫才戦士たちのラストサバイバルを描いた敗者復活戦。もはやどのネタ番組よりも組数とネタの質の高さは引きを取っていないのでは、と思わせるくらいの豪華さですが、その中でも私が個人的に面白いと思ったものを主観で発表していきます。もしネタを全てみたいない方がいたとしたら、ぜひTverよりご覧ください。では第三位から順に紹介していきます。
第三位
オズワルド「地球が滅びる前の日」
めちゃめちゃ好きでした。本気のネタだ、と心から感じてしまうほど完成度が高く、オズワルドらしさを散りばめながら”面白い”漫才を体現していたと思います。自分のうろ覚えではありますが、オズワルドは畠中の視点を伊藤がうまいこと面白いように嚙み砕くことでネタが出来上がっていると聞いたことがあります。今回で言うならば、まさに地球最後の日に「母親のカレーが食べたい」という願望の裏側の暴力性に畠中が気付いて伊藤を非難する構図は如何にもオズワルドらしい切り口だなと思ってみていました。
一つ一つのパンチをもろに食らわせようとするタイプの漫才は結構好きで、今回のネタも例外ではありません。畠中の正義で60歳にとって重すぎない”スープカレー”の提案するという行為が、伊藤からして見れば思い出ゼロかつ若干母親目線でも上手に作れるか不安が残る初挑戦メニューを促すことになったり、お母さんあるあるの二つ目で全然知らないコマンドを持ってきたりと、裏切り、ズレの作り方が一級品だったなと感じていました。展開の持っていき方として、”(伊藤の母親を)カレーの口にする”というのも興味深いし、それに対して”続けて見ろよ”という伊藤の挑発的相槌も面白かったです。最終的には掛け合いの中で感情的になった伊藤が畠中のことを想って争う構図はさながら2021年オズワルドが1位で決勝通過した「友達」のネタを彷彿とさせられました。負けてしまったのは残念ですが、腕は確かであることを見事に証明できた漫才を披露してくれたと思っています。
後は皆さんお気づきの通り”いったんやめさせてもらいます”はもはや言っていなかったですね笑。聞き取れないレベルを続けるのか、何か変化が訪れるのか、今後も注視してみていかないといけないですね。
第二位
ダンビラムーチョ「孵化」
見るたびにダンビラムーチョのことを好きになっている自分がいる、そんな魅力的なコンビですね。去年のM-1と今年のキングオブコントで一気に露出度、注目度が上がった気がするので、お客さんもダンビラに笑いやすくなっている気はしています。
まず大好きなのが、掴みのくだりですね。よくコメント欄で見かけるのが、浜崎あゆみの部分でウケているのを、”シャレになってないじゃん!”でパーにする技術、と揶揄されていますが、本当にその通りになっているので笑ってしまいます。ついでに浜崎あゆみのものまねをした後のフニャオの「え~!」もだいぶ意味不明です。見れば見るほど癖になる部分の一つですね。
ネタの要素もちゃんと面白く、構成としても歌を入れることはぶれずに、でもあるあるとか、表情芸など違う面白さもふんだんに入れ込んで、ダンビラの面白さオールスターみたいな傑作漫才だったんじゃないかな、と思いました。いままであとは歌に集中してあまり気づかなかったのですが、フニャオのツッコみが意外と偏見ツッコみ寄りなんだなと、この敗者復活戦で気づきました。もちろんダンビラの二人としては意図していることですが、気合の入った大原の顔=蛾とはいきなりならないと思ってしまいましたし、曲からして蛾じゃん!とか、カブトムシのメスじゃん!とか正当なツッコみというよりはある程度思想ありきなのが、効いてきて面白かったです。
ボケの良さも忘れてはなりません。特に、五木ひろしさんのメスじゃん!をぶち込んだあたりは最高でした。ずっと賑やかで楽しかったので2位にランクインしました。
番外編
ドンデコルテ「恋煩い」
今までであったら、ちょっと曲者であったり、話題性のあるネタをここに選定するのが通例であったのですが、今回はイレギュラーで、見たことがあるにも関わらず、ひどく笑ってしまったコンビの紹介になります。それがドンデコルテのネタになります。この3分verがYouTubeに3回戦の動画として挙がっていて、その動画を見たはずなのでこのネタの記憶に新しかったです。ですがほぼ初見くらい笑ってしまった自分がいました。多少改編しているところもあったと思いますが(それこそ、”負のスパイラル”のところなど)ほぼほぼ見たことある台本でやったネタなのに、前回よりも一層味が出ているような感じがして、面白かったです。知的な雰囲気を醸して、あたかも論理的な落とし穴、合理的ジレンマがあるのかと思いきや感情に支配された、ピュアな恋愛心を持っているギャップは何度見ても笑ってしまいます。応援していたのは金魚番長であったので、金魚番長がAブロックで勝ち上がったのは嬉しかったですが同じ”見たことある”ネタ同士の比較をしたら、私の中のシンプルな笑いの量はドンデコルテの方が多かったのが事実なので、賛辞の対象とさせていただきました。
第一位
スタミナパン「キャバクラ」
流石に面白すぎましたね。本戦でも戦えるレベルだったのでは、と思ってみてました。すべてのボケ外してなかったし、キャラクターがうまいこと乗っていて、大笑いさせるつもりでネタ書いてます!みたいな潔さが大好きでした。掴みの部分で少し見せてくれあ去年のネタの、あのインパクトは強くそれはそれでめちゃめちゃ面白かったですが、今回は少しテイストが変わっていて、スタミナパンの進化を目の当たりにした感じが、よかったです。
ずっと話を聞いてなくて、都合のいい方にもっていく、というのは面白いもんですね。都合のいい方にもっていく、という部分は重なっていないですが、M1 2019年、かまいたちの「UFJ・USJ」のネタにも、山内が濱家を認識していないというボケが立て続けにありました。お笑いの教科書的なもので強い主張をしているひとをないものとして扱うというのは、単純ながら絶対面白いすれ違いがあるのだろうなと、今回のネタでも実感しました。また、おじさんらしさといいますか、自分達の中にある笑いも大事にしているのが伝わって、それこそホッピータワーとか、チャッカマンでタバコ吸うとか、カレー馬鹿食いして”助かる”っていうところとか、すべて含めてめちゃめちゃ面白い漫才でした。個人的にはあの見た目でのドS発言は相当怖いと思ったので、ツッコミに共感して大笑いしました。そういう意味ではあの愛情のないトシダの「おまえつまんねぇ」「チェンジで」「こえーよ」もうまいこと麻婆と距離を置くことに成功していたのかなと思います。(村上くんは別世界で見ていることが多いのと比較して)お互いが同じコントの世界にいるマヂラブみたいな感じで、ただの嫌がっているおっさんなのがすごいいい味出していたなと、改めても感じました。インディアンスが結果的に勝ちましたが、個人的には一位のネタでした。
以上が、敗者復活戦で私が気に入ったランキングでした。毎度類似の方針になっていますが、見たことあるネタよりもないネタを優先しているみたいなポリシーでやっているので、それこそ金魚番長とか家族チャーハンはランキング漏れしてしまいましたが、めちゃくちゃ面白かったですし、男性ブランコとか、インディアンスも迷いました。もうみなさん面白さがインフレしてきているので、どんどん賞レースも熾烈化していくと思いますが、さらなるお笑い会の盛り上がりをそこから期待しています。ではまた次回。