【賞レース賛辞#8】THE W 2024好きなネタベスト3
今回は、女芸人No.1決定戦 THE W 2024にて、好きだったネタベスト3を発表したいとおもいます。まだそこまで歴史が深いわけでもないですが、今活躍している女性芸人もここでの優勝を皮切りに跳ねて行ったイメージがあるので、非常に影響力の大きい大会であることは間違いないと、確信しています。視聴者投票と審査員の票の食い違いが要所要所で散見されて興味深かったですが、それとは全く関係ない、私個人のランキングをお楽しみください。(今回もネタバレにはご注意ください。)
第三位 エルフ「鳩の恩返し」
Cブロックに出てたエルフが披露したネタになります。やはり台本がしっかりしていて、展開作りが上手だなと思いました。若干細かい部分で笑いどころが不透明のままになってしまった箇所もあるかと感じましたが、最終的にはエルフワールドに引き込むことに成功していて、さすがと思ってみていました。
このネタで一番ウケていた核となる笑いどころは①鳩を救ったときの荒川の発言のヤバさ、シチュエーションの面白さ(酔った人がする行動というロジックでの大喜利)の部分と、そのあとの②一連の流れで見た場合に理解できた、鳩を救った時の発言の意味(ただ酔っぱらっていた以上に、振られた反動で激情したという背景があり、荒川が鳩にも共感を求めていた状況に変化したことを理解させる面白さ)+伏線回収(どこでまつ毛を入れ替えたのかを判明させる)にあったと思いますが、それに行くまでの道中もなかなか鋭い大喜利が展開されていた気がしています。それこそ鳩は一度通ればまた覚えるのに対し、ギャルはお酒が入ればすぐ忘れれるみたいな対比構造とか、鳩の首の動き、歌舞伎町に鳩が多いみたいな細かいあるあるも入れ込まれていて、よかったです。個人的にはこの時にツッコミの立ち回りをしてた荒川がボケにちょっと回ってじまった部分で緩急がちょっと足りないように感じられた部分はあるのかなと思いましたが、もとからギャルだし、そういうもんかと思い、EDMみたいなのが流れた時は、素晴らしい演出だと感心しながら見ていました。
第二位 忠犬立ハチ高「議員答弁」
Cブロックの忠犬立ハチ高が優勝候補とされたエルフを下したネタです。展開の持っていき方が強引過ぎず、むしろノムラフッソのキャラに惹きつける感じで前半を作り上げたのが、見事だなと思いました。この答弁という形だと確かに自然にターン性の会話になるので、ネタをやるのにふさわしい設定なんだなと、着眼点がよかった気がしています。
ネタの冒頭ですが、最初はツッコみ側がボケだと思った方も少なくはないと思います。入りが”アグレッシブ女性の党”ですから、こういうおふざけで来ると思ったし、意味も分からず”2位じゃダメなんですか?”とか言い出すから、そういうのを繰り出すタイプなんだと思わされた矢先、ぶりっ子キャラに注目がシフトしていき、整理がついたころには、相当なぶりっ子であったことが分かるというシステムになっていました。非常に新しいタイプの笑いの生み方だと感じてましたが、後半戦は、突っ込み側が、ボケ側に取り込まれていくという、相互作用が見えるネタに様変わりし、相当ウケやすいネタになり上がったな、と驚きました。女の子オタクの仲良くなり立てあるあるから、共感の笑いを生み、ストロングなコントになっていたと感じました。以前M1の舞台で、立川志らく師匠が、ヨネダ2000に対して、女の武器を使ったいないのがよい、との発言をしていましたが、このネタに関しては全力で女の子したのが、私的にはいいと思ったし、議員であるという前提を覆すという意味で、いい裏切りを果たしているなと思ってみていました、実は最初の方はボケが不透明で分かりにくいと思っていたのですが、気づいたら自分も松潤の話を聞いては楽しそう、と笑顔になっていたので、優秀な作品であったと思います。今後に期待したい芸人さんであること間違いなしですね。
番外編 もじゃ「廃品回収」
世界観にやられましたね。結構センスあるなと思いました。明確なボケという意味では、”型”にこだわりすぎ、というところくらいで、それ以外は世界観構築とリアルを追求していたいいコントであったと思います。いいコントというのは人を感動させるもの、とキングオブコントでも飯塚さんがおっしゃっていたくらいですし、今回も笑いの中に哀愁というか、ささやかな幸せが芽生える瞬間があって、上手だなと思いました。だからこそ、なぜ最後、大声で「ありがとうございました~!」といったのかとは思う笑。ある意味雰囲気ぶち壊しで面白かったですが。二本目が気になったという意味で、番外編に入れさせていただきました。
第一位 紺野ぶるま「田口くん」
決勝ステージにて、紺野ぶるまが披露したネタになります。1番笑わせていただいたフレーズが入っていたこともあり、堂々の第一位です。大会で二回ネタができることの利点でもありますが、1本目と構造が類似していた点も多かったので、笑いどころがわかりやすく、天丼にもなっているから面白さが増幅されているな、と感じました。
ネタについて具体的に話しますと、まず1番笑った部分としては、「”ボイン”ならなんでもありという価値観ある?ない?」という質問ですね。巻き戻して、聞き直して、お腹抱えました。表現技法が意味不明過ぎて好きです。誘惑することを第一の目的としつつも、簡単な選択肢を用意してあげるというのも、本能に語りかける女性がやりうる手段かなと思ったので(どうするの?やるの?やらないの?的な…?)策士策に溺れるじゃないですが、誘惑と質問方法の取捨選択をできなかったが故の質問だからそういう表現になったのだと、私は解釈して、その乱暴さに笑わせてもらいましたね。
他にも、例えで登場するワードセンスがシンプル的を得ているというだけでなく、若干古めなのがまた芸術店高め。おそらく紺野ぶるま自身が描出したいキャラと見事に当てはまっているので、ただの大喜利よりもリアルさが付随されていて、余計に面白かったです。また下ネタの演出の仕方も、ど直球というよりはちょっとした工夫がされていたように見えたから、上品さを残しつつ、いやらしいことを容認しているアピールをサブリミナル的に伝えようとする、そのキャラクター像にあったアプローチを取っていたのがよかったです。全体的にややマジカルなネタが大会を通じて多かった中で、刺さるあるあるの延長線上としてのネタを置いてきたのが、ハマった要因だと認識しています。
なんだかんだ毎回顔ぶれは変わっていますし、どんどん女性芸人の実力者も育っていっていると思うので、ますますパワフルな大会になると思います。M1の時期をかぶせるのは、芸人さん側からしても、視聴者からしてもどうなのかな、とは思いつつ、年末の時期にいろんな笑いのためを供給してくれてありがとうございます、と思いながら、見させていただきました。にぼしいわしさん、おめでとうございました!それではまた次回の記事でお会いしましょう。