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もし2021年に、僕が学生で臨床留学を考え始めたらどうするかの話

もし、先生が留学していなかったら今頃どうしていると思いますか?と、とある学生さんから聞かれた。自分語りだけど、僕は結構こうすると決めたらやり切りたくなるタイプなので意地でも留学していたと思う。もちろん、物理的や社会的な理由で難しい時はあきらめも肝心だけど。

その後から、ふと今自分が医学生で、コロナ禍だけどもう一度留学に向けて対策を取ることができるならどうするかを考え始めた。“ぼくのかんがえたさいきょうの~”をまとめてみようと思う。

まずは具体的なプランを考える前に、以下の点がとても大事だと思う。

1)まず、なぜ留学したい?を理解する。
まず一番大事なのは、なぜ留学したいのかをしっかり理解すること。自分と向き合う時間をしっかり作って本当に留学に行きたいのか、そしてなぜ行きたいのかを問答する時間を作るのが大事だと思う。

医学部に入った理由は?医師として何をしたい?などなど再度考え直すきっかけになるし、将来自分の志望動機とかを書く時にも大事だし、アメリカに来てからもそれが心の支えになるから。以前このサイトでも書いたけど、僕はアメリカに臨床研究のトレーニングに来た時にすごくそれを考えさせられて、苦しい時もあったけどとても貴重な経験だったと今は思う。

2)次に、得るものと失うものを再考する。
これはこの先ずっと自分と問答することになると思うのだけど、本当に留学に行きたいのか、得るものと失うものは何かをライフステージごとに整理したほうがいいと思う。勉強にはなるし、医師としての成長にもなるし、米国でしか学べないものを目指しているなら、得るものは大きいと思う。ただし、日本で築いてきた人間関係や、住みやすい環境や、安心・安全は失わないとしても同レベルでは得られないと思う。給料も米国レジデントは決して高くないから、経済的な負担も増える。下の方にまた書くけど、家族がいるなら問題はさらに複雑だ。

3)そしていつ行くかを考える。
次に、いつ行くかを早めに決めてしまう。自分の中で期限を決め、そこから逆算する必要がある。そうしないと、結局だらだらしてしまうから。

吉田松陰の言葉にあるように、夢も、理想も大事だけど、計画も大事。(名言の僕の勝手な解釈)

夢なき者に理想なし、
理想なき者に計画なし、
計画なき者に実行なし、
実行なき者に成功なし。
故に、夢なき者に成功なし。


では、いつ行く?

卒後すぐ?初期研修2年してから?後期研修ある程度してから?専門医を取ってから?学位取ってから?

遅くすればするほど、自分の医学知識や臨床経験は増えるから実際レジデントとして働くときに実践的な能力で不安は減ると思う。僕の同僚で母国で20年近く医師をしてから来た人がいたけど、正直若い指導医よりも知識も経験も上で、圧倒的だった。ただ問題は、遅くするとその後のキャリア形成に響く。もちろん医師としてどのようなキャリアを描いているかによるけど。例えば、アメリカでClinical Scientistになりたいと思って自分がPrincipal Investigatorとなって色々な研究を勧められるようになりたいとすると、あまりに遅いと大きなグラントを取ってプロジェクトを始めるまでの時間を計算すると実質的なClinical Scientistとして活躍できるのは10年間くらいになるのではないだろうか。周りを見ると、レジデントとフェローシップを終わってから、最初の10年くらいは自分のチームだとかネットワーク構築、名前を売ることに時間取られている印象あるし。まあ、80歳、90歳になっても研究して論文書きまくりの大先生方もいるので単純には言えないけど。


一方で、アメリカでPrivateで働いて患者さんを見ることを中心にしたいと思っているなら、給料は生産性に比例するから、多少体に無理を言わせて頑張れる若いうちから始めたほうが生涯収入も上がると思う。そういう意味では早めに来た方がいいんだと思う。


もし、レジデントをしてから日本に帰るつもりだったら、それはそれで自分のそれまでの日本でのキャリアを中断してしまう欠点もある。

つまり、あまりにも遅い時期の留学は微妙かも。

そしたら、早いほうがいい?それはそれで、医学経験の不足がレジデント中に結構きついかも。今の学生さんたちは優秀だからアメリカの卒業直後の人たちとも知識レベルではそん色ないかもだけど、言語やシステムの慣れへの差があるから、知識に関しては勝っている状態で挑んだ方がいいと個人的には思う。他からの評価がしっかりしていると、自信をもって仕事できるし。また、日本に帰ることも考えていたら保険医の資格をとれる2年はやったほうがいいように思う。

じゃあ、初期研修後?まあ、それでもいいと思う。特に内科に行くなら。でも僕のように神経内科で行くなら、正直後期研修は1-2年は挟んだほうがいいと思う。同じ理由で、臨床経験があった状態で米国レジデンシー開始したほうが良いと思うから。

結論、僕がもう一度医学生として挑むなら留学のタイミングは卒後3-4年目くらいかと。

さて、じゃあこれだけのことをしっかり詰めて本当に準備を開始するとする。日本にいるときに大事になるのは以下の3つの部分を向上させることかなあと。

1)USMLEの点数
2)英語
3)情報収集能力
特に英語とUSMLEについては自分がいつマッチングに応募するかに応じて、どのペースでやっていくかが変わってくると思う。

USMLE Step1はPass OR Failになったからあまり時間をかけずにStep2にしっかり集中することになると思う。僕だったらいつ受けるか?それは、絶対学生のとき。これはあくまで臨床留学を目標にしてるから、部活とか旅行だとか青春を満喫する活動への投資は必要であればゼロでも仕方ないつもりでやる。そもそも、ライバルはアメリカ医学生だけでなくて、国から出るためにアメリカに来ようとしてたり、サイボーグみたいな勉強家だったりすることもあるわけで。気合で学生中にStep1と2を終わらせると思う。

その中で、英語をどうやって勉強するかだけど、僕は自分の中でTOEFLの勉強をしたのが英語の基礎力がついたものだったから、まずは点数の目標を立ててやると思う。最低100点は卒業までに取りたいところ。そのあとは、ひたすらオンラインの英語教室を毎日取り続ける。そう、毎日。
まあ、実際一番英語が伸びたのは働き始めてからだと感じているけど、最低限の働くために必要な英語はこれくらいでいけるようになった印象。

情報収集能力はいくら高めても損はないと思う。ネットで定期的に情報収集するのは基本だけど、英語で検索して調べたほうがいいことが多い。当然だけど、アメリカレジデンシーを目指す人は英語圏の方が日本語圏より多いから。Forumみたいなのに入って投稿をフォローしたり、グループでの集会に参加したりしたほうが情報は増える。これは、USMLEの点数や英語能力のためだけじゃなくて、単純に世界観を広げて、国際感覚に慣れておいた方がいいから。


国際感覚という意味で、アメリカにオブザーバーシップとか、交換留学とかで行きにくくなったコロナ禍で、どうやってアメリカで臨床経験を積んでおくかは課題だと思う。正直、英語で診療の経験があったり、英語圏で生活していた人のほうが雇う方も安心だから。でも、無理なものは無理で別ルートを探すべきだと思う。僕だったら、Research Fellowとかで行くのを目指すと思う。本当は臨床系がいいけど、現状でかなり厳しいので。僕の働いている施設では、海外からの留学生受け入れはストップしたままだし(2021年9月時点)、以前患者さんの診察についてきていたResearch Fellowですら外来に来れなくなっている。


だから、純粋にResearch Fellowの枠のあるラボをひたすら探すと思う。どうやって見つけるか?大学や知り合いのツテがあればそれでもいいし、興味のある分野の先生に自分の実力を認めてもらえるようなメールを送る。Linked InなりIndeedなり就職系のサイトに出ていることもあるし、僕だったら何でも手当たり次第コンタクトすると思う。本当はその研究室のボスが面倒見が良くて、しっかり引き立ててくれる人かを調べたほうがいいけど、最悪運に任せる。面倒見の良さは、論文の共著にどういう人を入れてるかを最近の論文を検索してチェックするのが簡単でおすすめ。


一方で、海軍病院は?ともよく聞かれる。いいと思う。どんな研修が行われているか全然知らないけど、結果だけ見ると海外経験なくてもマッチできている人もいるから。(Nプロ以外でも)


その他の検討事項
1)ビザが必要の場合
ビザが必要の場合は、J1かH1でどっちで行くかだけど、H1で受け入れてもらえるならそれがいいと思う。確かに、レジデンシーの後のフェローシップの中にはH1が発行できないプログラムはあるのだけど、長期的にみるとJ1Waiverの縛りがある点を考えるとH1で行けるなら行ったほうがいい

それよりも、学生のうちからGreen Cardの抽選に応募し続けたほうがいいと思う。フェイクのサイトがあるから気を付けて欲しいけど、Green Cardがあるとマッチングにはかなり有利に働く。


2)結婚を予定、子供がいる予定の場合
配偶者の理解は大前提。これがないと何もできないし、お互いに不幸な結果になるから。そもそも、留学を決める前にこれは話し合いをしないといけない。僕には家族を不幸にするほどの価値が留学にあるとは思えないから。

子供がいる場合はさらに複雑で、教育費も年齢によってかなり大きくなるしレジデントの給与で現実的にどういう教育環境を子供に用意してあげられるかなどの制限は現実問題として見たほうがいいと思う。毎年の出費(生活費、住居費、教育費)の合計と自分のレジデント中の給料を見て、日本にいる間にいくら貯金をした方がいいかとかは真剣に計算するべき。

3)医局に入るかを迷う場合
医局のタイプによるけど、僕は医局に入ってよかったと思う。特に大学で働いたことはないけれど、名前だけは入れてもらって、時折医局長や教授とも連絡を取らせてもらっている。正直、アメリカでどうなるかなんてわからない部分もあるから、日本とのつながりは持った状態で留学したほうがいいと思う。ただ、医局が留学するなら入局認めないというタイプだったら(あまり周りでは聞かないけど)ちょっと厳しいかも。。

ということで、僕が医学生で神経内科で臨床留学を目指すならこうすると思う。

学生
①USMLEを終わらせる
②TOEFLで100点以上を取る

初期研修
①日本で2年一生懸命行う。
②英語のオンラインを毎日とる。
③情報収集をひたすら行う。

後期研修(1-2年)
①神経内科を頑張る。(勉強になるから学会発表とかは必ずしておきたい)
②英語のオンライン毎日とる。
③医局に入る。
④Research Fellowのポジションを探す。

Research Fellow(1-2年)
①英語をさらに高めるつもりで頑張る。
②マッチングに応募する。

常に継続すること
①Green Cardの抽選に応募
②ひたすら節制、貯金

なんと、書いてみると極めて普通だった。笑 しかも、かなり自分視点のバイアスが入っている。

まあ、参考になれば。


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