眼瞼下垂をきたす動眼神経麻痺の年代ごとの原因
急激な片側の眼瞼下垂で来院される方がいます。
一般に想定される病態として、1日で突然発症する急激な眼瞼下垂で瞳孔所見は乏しい場合は脳微小血管による虚血性神経障害で、糖尿病などが背景にあるような動脈硬化が原因であることが多いと思います。
また、その逆に眼瞼下垂が乏しく瞳孔不動が強い場合は、動脈瘤によって動眼神経を外から圧迫した際に起こる神経症候としてしられていると思います。
重症筋無力症やfisher 症候群などの神経免疫疾患でも眼瞼下垂がでることもありますが、今回の論文では、重症筋無力症、Fisher 症候群、甲状腺疾患を除く動眼神経麻痺単独の原因について報告されている点がユニークであり、また1978年から2014年にかけて145人と非常に多くデータを集めている点が特徴的と思いました。
発症頻度は60歳以内で、1.7人/10万人, 60歳以上で12.5人/10万人と報告されていました。
結果は一目瞭然で、以下の図が非常にわかりやすいです。
30歳頃までは外傷性が多く、50歳以上で脳微小血管性(microvascular)による動眼神経麻痺が多くなっており、脳微小血管性(microvascular)が原因の平均年齢は 68歳でした。
この論文では、眼瞼下垂と瞳孔不同についても検討されています。
145人中、62人が瞳孔不同も認めています。
脳微小血管性(microvascular) の16%, 外傷の71%, 手術後の71%, 動脈瘤やその他の圧迫性病変で64%の報告がありました。やはり、脳微小血管性(microvascular) では眼瞼下垂が強く出現し、瞳孔不同はないとはいえないがそこまで伴うことはないようです。ただし、瞳孔不同がでると思われる圧迫性病変でも60-70%程度であり、瞳孔不同がでない場合があることに注意が必要と思いました。
経過ですが、
145人中91人(63%)は完全回復しています。
特に、61人の脳微小血管性 (microvascular) は58人 (95%) と高い頻度で完全回復をしています。
実際に脳微小血管性(microvascular)による虚血性動眼神経麻痺の方は眼瞼下垂が強いのですが、一か月ほど経過をみていると次第に回復してくる方がほとんどです。
経験的にはわかっていることでも、ここまで多数例を集めてデータとして報告されていることで、理解が深まりました。