見出し画像

抗IL-6受容体抗体使用中のプロカルシトニン測定

抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ、サトラリズマブ)は、視神経脊髄炎や血管炎の治療として現在使用されています。
IL-6の効果を阻害するため、薬剤使用中は感染症を発症しても発熱しない、採血で白血球、CRPや赤沈などの炎症反応が上昇ないことで知られています。そのため、検査をしても異常が検知できず、気がついたら重篤な感染症になっているというリスクがあります。特にこういった薬剤を使用しているときはステロイド等免疫抑制剤も併用していることが多いため、十分注意が必要です。
これまで、プロカルシトニン(PCT)は細菌感染症で上昇するマーカーとして知られていますが、PCTは抗IL-6受容体抗体使用中でも細菌感染症の際には上昇をしめすという報告がありました。通常、PCTは定期的には測定しない項目ですが、抗IL-6受容体抗体使用中は測定価値が高い可能性があると思いました。


報告されている症例は、21歳の女性で若年性特発性関節炎でトシリズマブを使用中の方でした。消化器症状で救急を受診し、CT検査や白血球、CRPや赤沈といった採血では異常がなく帰宅となっています。その後症状がつよく再入院となり、最終的には急性中耳炎に伴うブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群と診断され、抗菌薬治療により改善しました。
トシリズマブ使用中でしたので、採血では炎症反応の上昇は乏しくなっており、原因不明で帰宅となっていますが、救急外来時と入院後の採血の残りでPCTを測定しなおしたところ、以下のような結果でした。


最初に受診した時からPCTは15.96 としっかりと上昇をしていました。
PCTは、脂肪細胞を含め様々な実質臓器から分泌され、生体内では主にTNF-αやIL-1βによって誘導されるようです。

もちろんすべての感染症の検知ができるわけではないこと、PCTの上昇がはっきりしないことも多いと思いますが、抗IL-6受容体抗体使用中に感染かもと思った際には細菌感染症の発見が遅れることがないようにPCTの測定を活用していこうと思いました。


いいなと思ったら応援しよう!

脳神経内科医 カテ
論文購入費用などにつかわせていただきます。よろしければサポートをお願いします。