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片頭痛の病態を考える

片頭痛の病態については主に3つの説がありますが、どれも片頭痛の病態をすべて説明できるものではありませんでした。
最近、神経説と三叉神経血管説をつなぐ論文がでましたので、もう一度病態を考えることにしました。


片頭痛の病態

片頭痛病態の時間経過


上図のように片頭痛の病態を時間軸にそってまとめました。
これまで、主に以下の3つの説がいわれていました。

①血管説
脳血管の収縮による脳虚血状態で前兆が起こり、それに続き脳血管の過剰な拡張により、血管に分布する痛覚感受性神経が刺激されて激しい頭痛がおこる。片頭痛に伴って脳血管の収縮と拡張がおこることは以前よりいわれていましたが、ではなぜ脳血管の収縮と拡張がおこるかは説明できていませんでした。

②神経説
大脳皮質の神経細胞の過剰興奮後、神経細胞の電気活動が抑制された状態となり、2-3mm/分の速さで周囲に伝播する皮質拡延性抑制(cortical spreading depression: CSD)という現象がおこる。主に後頭葉を起源としており、CSDに伴い、脳血流も数時間は血流低下を示すことがわかっています。これは片頭痛の前兆の閃輝暗点を説明しうる病態としてよくわかりますが、なぜCSDがおこるのかは不明です。

③三叉神経血管説
頭蓋内・硬膜血管に分布している三叉神経終末が、なんらかの刺激によって興奮し片頭痛発作を起こす。CGRPなど神経伝達物質が放出され、血管拡張がおこる。最近発売されたCGRPをターゲットにした製剤はここに対しての治療薬です。

どれも片頭痛をすべて説明できるものではなく、片頭痛の一連の流れを説明するのは足りないところがありました。

今回、以下の論文では、②と③をつなぐ話がでていました。


頭痛学会HPより引用

もちろんマウスの実験ではありますが、
CSDの変化が脳脊髄液(CSF)を介して、直接三叉神経説ニューロンを刺激し活性化させる可能性がわかりました。
これにより病態の②から③へとつながる可能性がでてきました。

片頭痛の病態のはじまりとして、なぜCSDがおこるのかなどまだ不明な点が多い病態だなと思いました。新たな治療ターゲットとしてCSDを抑えることができることに期待したいです。




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