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片頭痛のMRI画像
片頭痛の際に脳血管が収縮し、その後拡張する現象がおきます。前回の記事に記載していますが、片頭痛のこういった血流変化は通常のMRI撮影ではなかなかはっきりしないことでしられています。
しかし、脳灌流画像(ASL)では片頭痛前兆時や発作時に変化がでる場合があることが報告されていました。
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この論文では、片頭痛のタイプ毎にMRI ASL画像について、これまでの文献報告をまとめています。
前回の記事の図を再掲載しますが、前兆時は皮質拡延性抑制(CSD)によって脳血管は収縮し、三叉神経の刺激にともなって発作時は脳血管は拡張することでしられています。この変化をASLで評価したということになります。
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前兆のない片頭痛発作
一般にCSDは後頭葉から始まることが多く、そのため視覚野が障害され、きらきらしたものがみえるといった閃輝暗点が出現する前兆が多いと考えられています。
前兆のない片頭痛発作は、実際CSDによる前兆が脳内では起こっている可能性はありますが自覚症状としてでていない可能性はあります。
発作時の脳血流を評価した結果の以下のTable をみると、ASLでの脳血流が上昇(increased)と記載がありました。
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前兆のある片頭痛発作
次に前兆がある場合のASL画像のTable とFigure になります。前兆時と頭痛発作時のASL変化の報告があり、予想通り、前兆時にはASLは減少(decreased) し、発作時は先程と同様上昇(increased)が報告されていました。
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片麻痺性片頭痛
あまり経験することはないのですが、 視覚、感覚や言語症状に加えて、完全に回復する片側性の麻痺が特徴の片麻痺性片頭痛では、さらに前兆時のASLの血流低下が下図のように広範に認められています。
下図の上段が前兆出現後約9時間後の画像で、ASLで左大脳半球の後半な血流低下が明らかです。
一方で、下段は、1日後の画像ですが、血流低下部位が回復しています。
この症例では、MRAでの血管の画像変化まででていました。
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脳梗塞、てんかん発作との鑑別
片麻痺性片頭痛は脳梗塞やてんかん発作と鑑別が難しい場合があります。
その際のポイントとしては、
片麻痺性片頭痛の典型例では、DWI, FLAIRで変化がなく、前兆期には先程の図のように非血管性の分布でのASL低下があり、頭痛時には非血管性の分布でのASL上昇といった変化を認める。
それに対して、脳梗塞では、超急性期では変化がでないこともありえますが、通常はDWI、FLAIRに変化がでることがあり、またその変化が血管性の分布であることが鑑別になると思われます。
てんかん発作では、非血管性の変化を示すことは片頭痛と同様であり、またASLが上昇するため、頭痛発作時のASL上昇との鑑別が難しいと考えられます。てんかん発作では症例の中にはDWIとFLAIRでの信号変化が出現することが鑑別に役立つ可能性はあります。
頭痛の際に撮像する脳MRI画像で通常ASLは撮像しないことが多いですが、まれではありますが撮影時に前兆と思われる症候がある時や頭痛発作時であれば、ASLを追加で撮影することで診断に役立つ可能性があると思いました。
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