ものが二重にみえるとき 重症筋無力症かもと思ったら
はじめに
先日、脳神経内科外来に「物が二重にみえるようになった」と眼科より紹介いただいた患者さんがおられました。そういった症状を「複視」といいますが、よく紹介いただくことが多い症状です。
ただ、目の問題かな、もしくは老眼かなと思われ、そのまま経過をみる方も多く、症状がでてから1年程度してから受診する方もいます。重症筋無力症では、症状がでたり改善したりと病気なのかどうかわかりづらいことも多いのではないかと思います。注意すべき症状がわかり、脳神経内科に適切なタイミングで外来受診ができるようになればよいなと思いました。
複視の訴えのある患者さんに対して、特に重症筋無力症の問診や検査について紹介します。参考になれば幸いです
片眼でみた場合と両眼でみた場合の確認
両眼でみて複視があるときに、まずは片眼でみてください。片眼でみて二重にみえるときは、脳が原因というより眼に問題があることが多いと思います。
眼科での検査が必要です。
検査
採血で糖尿病や、甲状腺機能や重症筋無力症などの抗体測定など採血が必要です。糖尿病や甲状腺といった血糖やホルモンで症状がでることがありますので、もし直近の健康診断での採血があれば外来にもってきていただくのがよいと思います。
また動脈瘤や脳梗塞などが原因となることもあるため、頭部MRIを予定します。
以下は特に重症筋無力症を疑った際に問診することや検査について補足します
疲れたら複視が悪化してくるが、休むと改善する
「疲労現象」といいます。具体的には、朝おきたときは問題ないのに、午前中にパソコンの仕事をしていると二重に見えてくる、また休むとその症状が少しマシになると言われる方がいます。この疲労現象とともに、まぶたがさがってくることがないかもチェックされるとよいと思います。こちらは「眼瞼下垂」といいます。その他、嚥下機能、呼吸機能、全身の筋力に疲労現象がでる方もいます。
アイスパック試験
下垂しているまぶたにアイスパックをあてて冷やします。そうすると眼瞼下垂が改善する場合があります。外来で眼瞼下垂があるとアイスパックを当てて反応をみます。重症筋無力症のガイドラインにもある検査方法です。簡単にできるので自宅で確認してもらってもよいと思います。
電気生理検査
反復刺激試験といいますが、電気刺激をあてて筋肉を反復刺激して反応をみる検査です。検査自体は15分程度で終了します。多くの方は問題なくできますが、びりっとした痛みに敏感な方はできないこともあります。
アンチレクステスト
複視や眼瞼下垂がはっきりとある時に、注射をして症状が改善すれば重症筋無力症と診断することができます。患者さんも改善したと実感ができる検査です。治療薬と勘違いされる方がいますが、改善効果は数分ですので、重症筋無力症かどうかを診断するためのものです。症状があまりはっきりしない方だと、検査前に目を使って疲れた状態ではっきりと症状がでた時点で行い、症状の改善を確認します。
胸部CT検査
目の症状なのに胸部のCTをとるということに違和感を感じられるかもしれません。重症筋無力症の一部の方では、一般には子供のときに消失してしまう胸腺という心臓の上のあたりにある臓器が腫大するなど異常がみつかることがあるため胸部CTでチェックします。胸腺自体が腫大していても、ほとんどの方は胸には症状はありませんのでCTでチェックするしかありません。
最後に
重症筋無力症が疑われるときに外来で行う検査について紹介しました。
お読みいただきありがとうございました。
少しずついろいろな症状、論文紹介などしていけたらと思います。
暑い日が続きますがどうぞご自愛ください。