世田谷区の若手職員による政策提案の場に参加して
世田谷区では、若手職員の問題意識を行政に届けるための活動があります。その名も「せたアカFPS」。本業とは別に集まった様々な部署の若手職員で構成されています。2023年3月24日、「せたアカFPS」の区長・副区長へ向けた政策提案の場に参加しました。
区役所内での若手職員によるリアルなムーブメントや区長・副区長の声を目の当たりにするという、とても貴重な経験をさせていただきました。区役所に興味がある方、政策ってどうやって立案されるのか気になる方、ぜひ読み続けてみてください!!
団体について
せたアカFPS(せたがや版データアカデミー Future Policy Seminar:フューチャーポリシーセミナー)
世田谷区の若手職員が「未来のせたがや」を考える場で、令和4年6月に発足しました。せたがや自治政策研究所が運営しています。
きっかけは基本計画策定
世田谷区の基本計画策定は、向こう10年間の区政運営の基本的な指針で、区の最上位の行政計画です。
係長級以上の職員が携わることの多い計画策定ですが、区長から「若い職員の意見が聞きたい」という話がありました。それに応える形でせたがや自治政策研究所が、若い職員も持っている問題意識をぜひ届けたい、という考えに至りました。
そこで、せたがや自治政策研究所による世田谷区の「今」を知り、「未来」を考え、問題発見→政策提案を行う政策形成演習Future Policy Seminarの実施に至りました。
次期基本計画(2024年~2032年)策定に向け、U35の職員12人が5つの領域を超えて集まりました。
参加者は二つの班に分かれ、せたがや自治政策研究所のEBPMのノウハウとデザイン思考を活用し、政策提案のための演習を行いました。
この記事では、せたアカFPSの活動のアウトプットとして、区長・副区長へのプレゼンテーションを通じた政策提案の場に参加した内容をお伝えします。
政策提案
1班、2班が発表された政策を簡単に紹介します!
1班の政策:「職員マッチングプロジェクト」
どんな政策か?
能力や意欲のある職員が、部署の垣根を超えて異分野の業務に取り組むことを後押しするという政策です。
挙げられた課題
着目点は区役所のDX化と区民との距離について。このままオンライン手続きが進むと区民の負担が減る一方で、区民が区役所に行く機会が減り、結果地域と行政のつながりが薄くなる副作用が生じるのではないか、という課題が挙げられました。
庁内外で実施したアンケートから、区民との距離を縮めるために、区の組織(職員)の意識を変える取り組みが必要である、という仮説が立てられました。
2050年に到達したい世田谷区
DX化により職員は人だからこそできる仕事に集中できるようになります。区役所は区民がいつでも相談できる場所として、職員は区民の理解者として、区民と区役所のお互いの顔が見えることで、お互いの距離をゼロにする、という未来です。
政策内容
多種多様な専門性のあるカテゴリの「ギルド」によって、職員が部署を超えて、仕事を依頼したり引き受けたりできる仕組みです。業務終了後にお互いが評価し合うことも特徴です。
効果
依頼側・請負側の職員双方に、仕事効率化、様々な職員との関わり、スキルアップ等のメリットが期待できます。さらに、職員が持つ能力が適切に評価されることで、職員個人の意欲向上にも貢献できます。
「職員マッチングプロジェクト」の目標は、職員が他部署の業務を含めた区の事業を自分事として考えるようになることです。領域に囚われない業務に取り組むことで職員の視野を広げ、最終的には区民の生活を自分事として捉えられるマインドを持つ職員を育成します。職員の他部署への理解が進むことで、区民への適切な案内、延いては行政への信頼向上にもつながります。
2班の政策:「ガクチカ発見@setagaya」
どんな政策か?
就活生をターゲットとし、学生時代力を入れたこと、通称「ガクチカ」を探す場を区が提供するという政策です。就活生はガクチカ経験を手に入れ、区と地域は地域課題を解決するチャンスを得ることができます。
挙げられた課題
過去4年間の世田谷区民意識調査によると、今後も世田谷区に住み続けたい区民は80%以上である一方、地域活動に参加したい区民は30%未満という結果でした。従って、区に住み続けたい人は多いが地域との関わりは薄いのが現状ではないかと考えられます。
このままだと、区民から地域に関心が向けられない状態が続き、イベント等地域でやりたいことが実現できず、生活の困りごとも解消されないという課題が挙げられました。
2050年に到達したい世田谷区
アイデアを実現したい、役に立ちたい、困りごとがある、といった人々を中心に、一緒にやりたい、応援したいといった共感者たちが集まる世田谷区を目指します。個々の強みや経験を活かし、「やりたい」「困った」に地域ぐるみで協力し合うことができる、という未来です。
政策内容
2班では、政策のターゲットとして、世田谷区の転入者の中で最も多い世代である20代に着目。その中でも、自分にとって価値ある経験を強く求めている就活生をメインターゲットとしました。地域活動に参加することで、就活生にとって共通の価値あるものである「ガクチカ」を得られるという政策です。
若者が地域活動に参加するきっかけのヒントを得るため、ねつせた!メンバーがインタビューを受けさせていただきました!
「楽しそう」や「スキルアップできそう」といった自分にとって価値ある経験を得られることが、若者が地域活動に参加するきっかけになる、という意見を反映させていただきました。
政策は、「就活生」「大学」「地域」「政策担当課(区)」「関係所管課(区)」から成り立ちます。区の政策の担当課が関係所管課から地域課題を募集し、課題内容や関係団体を丁寧にヒアリング、その後、就活生のニーズと地域課題をすり合わせ就活生と地域のマッチングを実施し、実際に就活生が地域で活動を行う、という流れです。
効果
就活生はガクチカを得る、地域は課題が解決される、とお互いWin-Winの関係を築くことができます。地域活動への参加が少なかった学生も参加するようになり、卒業後もこの活動経験から地域への愛着が湧き、継続して地域活動に参加し、最終的に地域活性化につながると考えられるのです。
参加しての感想
区民と区のつながりを深める
若手職員の方々が思い描く、「創り出したい未来のせたがや」は、私たち若者にとって心強いものでした。またどの世代の方でも、生き生きとした暮らしにつながると感じました。
若者目線で情報発信をするねつせた!としても、より多くの人々に世田谷区に関心を持ち身近に感じてもらう、好きになってもらう、という使命感を再認識することができました!
政策を構想するにあたって使われたデザイン思考とペルソナ
私自身も大学で、デザイン思考とペルソナを使ったアイデア出しを経験しました。今回の政策内容には、職員に向けた内容が結果的に区民のためになったり、区と区民双方にメリットがもたらされたり、区役所と区民の両者に目線が向けられた内容でした。区役所と区民が良い関係を築くための政策立案には、デザイン思考による職員や区民への共感がとても効果的であることを、発表をお聞きして感じました。
最後に…
政策提案の場では、区長や副区長をはじめとした区のトップの方々にお会いし、気さくにも一緒に写真を撮らせていただいたり、ねつせた!の今後の活動に励ましの言葉をいただいたりしました。これからも世田谷区を身近に感じてもらう存在として、身が引き締まる思いです!
教育総合センターについて
ちなみに、ねつせた!がインタビューを受けたり、今回の政策提案の会場となったりしたのは、「教育総合センター」でした。子どもたちが様々な体験・交流ができる施設となっています。
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